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第三章【情】
魔女の占い
しおりを挟む「なにおちこんでるの」
「落ちこんでは、いない」
「おなかすいたの?そしたらあそこのあげぱんとか、あっちのやきそばとか、むこうがわのからあげもおいしかった」
「んな食ってんのかよ!」
てへぺろ、とおどける雛に力が抜けていく。もう嫌だ、なんで俺がこんなになって動かないといけないんだ、と思えてきた。
「きんきゅうくえすと、ってなんだった?」
「あ?捜し物だよ」
「ならかんたんじゃん、アイーラにきけば?」
「は?」
「アイーラがきのうなにしてたかおぼえてないの?うらないやさんだったでしょ?」
ほらほらこっち、と手をグイグイ引っ張って歩き出す。いや、彼女に聞いたところでと思うが、後ろからデフ猫の斑も尻にアタックして来るので歩かない訳にもいかない。
『しけた顔をしているから黒の女神も心配したのだろう、いいから行け』
『だが、内容が内容だけにあいつらに聞く訳には』
『お前は単純なことがわかっておらんな。何故今、この時に、『情熱の魔女』と『黒の魔女』がここにいると思っているのだ』
『っ!?』
『彼女達は意味の無い事はしない。さあ行け』
斑はそう言うと尻にアタックして来るのをやめる。前ではまだ雛が俺の手を引いているが、斑はその場で「にゃお」と鳴いてどこかへ行ってしまった。
□ ■ □
広場のテント。昨日と同じくらい人が並んでいるが、雛はずいずいと進み、声を掛ける。するとアイーラは並んでいる人達を帰してしまい、俺と雛を招き入れた。
「いいのか?帰してしまって」
「構いませんわよ、そのうちまた来ますわ。それより雛様とシグが来るなんて、何ですの?」
「うらなってほしいことがあるんだってー」
「おい、雛!」
「ひなはおそとにいるから、おふたりでごゆっくり」
きしし、と笑って外に出てしまう。テントの中には俺とアイーラの二人だけ。何だってあいつは…
「今朝ぶりですわね、シグ?私、今もまだ下着を履いていませんのよ」
「なっ、あのな、何してんだ」
「だって、疼いてしまうんですもの。履いていても濡れてしまって意味がありませんのよ」
ほら、と誘ってくるアイーラ。ただの痴女だろ!足に触れてくる手の感触に熱が集まりかかるが、ここはそんなことをしている場合じゃない!
「アイーラ、頼みがある」
「なんですの?対価は今ここで・・・でいいですわよ?」
「今晩また好きなだけしてやるから今は勘弁してくれ」
「約束ですわよ?下着は何色が好きですの?揃えてお待ちしますわ」
「・・・それは後にしてくれ」
「あん、つれない人。お捜し物は『目』ですの?」
「っ、何で、それを」
「・・・私が何であるのか知っているでしょう?私が知るくらいですから、勿論雛様もご存知でいらしてよ。で、アレをどうしたいんですの?」
ヴェール越しに光る、金色の瞳。妖艶な美女ではあるが、こうして見ると『魔女』なのだと思い知る。
ごくり、と無意識に生唾を飲み込んで、俺は何を聞くかを悩む。場所?侵入方法?対処の仕方?
アイーラはゆっくりと手札を切り、その場へ置いていく。そうしてゆっくりと話し出した。
「『魔女の眼球』と言われていますけれど、アレは本当に『魔女』の目なんかではありませんのよ。あれは別の生き物を使って作られた呪物ですわ」
「っ、そうなのか?」
「ええ、ですから仲間の魔女が復讐に来る、という事はありませんからご安心なさいませ。例えそうであったとしても、襲撃前に私になくとも雛様にはご挨拶に来るでしょうね」
「挨拶だって?」
「当たり前ではありませんの。襲撃場所に『格上の魔女』がいるならば、その場で暴れていいかどうかの許可を得に来ますわ。そうでなければ後々その身を滅ぼされかねませんものね」
「雛が、か?」
あの幼女がそんなことをするとは全く思えないのだが。しかしアイーラはくすり、と妖艶な笑みを浮かべる。
「あんな風に見えても、あの方は私達の『師匠』であり、比類なき偉大な力を持つ『古の魔女』ですわよ?
『黒』の魔女が何を司るか貴方知っていますわよね?」
「・・・生と死、って本当なのか」
「魂ごと消滅させられるのは、魔女の中でも雛様だけですわ。それは直弟子の私達にもできないこと」
もう驚くを通り越して何も言えない。そんな俺を楽しそうに見る『情熱の魔女』。
「雛様はお優しいですから、余程の事がないとそんなことはしませんわよ?」
「あ、ああ」
「それより、シグ?貴方が聞きたいのは『魔女の眼球』についてなのではなくて?」
確かにそうだ。しかしアイーラによればそれは『魔女』の目ではない、という。俺としては本物の『魔女』の目だと思っていたし、魔術の触媒なのだと思っていたんだが、何が違うんだ?
俺はアイーラから話を聞き逃す事のないように、耳を傾けるのだった。
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