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第四章【白】
教会都市、到着
しおりを挟む教会都市ケセディア。
街の中央にはひときわ古く、荘厳な尖塔がそびえる。それこそが教会都市の中枢でもある『大教会』だ。『教会』内部でも強い力を持つ最高司祭に聖女が揃っているのだという。
女神が降臨した、とも言われる場所に教会を建てた事から始まるこの都市の逸話。本当の事なのかは誰も知らない。…もしかしたら雛ならば知っているのかもしれないがな。
その大教会の建つ目の前には、大きく開けた広場がある。中央に噴水があり、その水は大教会の祭壇から溢れる聖水が流れているのだという。街中を張り巡らされている水路に沿って、聖水が満ち溢れ、各小教会へと注ぐのだとか。
確かにこの街は中央に大教会、そして均等に五等分された先には小教会がある。五芒星を模して街並みも整備されていて、この街並み自体が一つの結界となり、魔女の力を削ぐのだとか。
「るるる、るるるる~」
…今俺の隣で鼻歌を歌っている『魔女』には何の変化も見られないのだが。結界どうこうは嘘だな、これは。
乗合馬車はなんなくケセディアの門を通る。門番に機嫌よく手を振っている雛。何故か門番の教会騎士から飴をもらっていた。おい、そいつはお前達の敵の魔女なんだが?
「やさしいですなぁ」
「そーだな・・・」
「節穴とも言うがの」
クク、と笑う黒い雛。なんだか今日は『魔女』としての顔をよく見せるな。いつもは全くと言っていいほどないのだが。俺としても浅くなくなってきた付き合いだが、雛が『魔女』としての顔をこうもよく出すのは初めてだ。
「なに?」
「いや。お前が『そういう』顔を出すのは珍しいと思ってな」
「ひなもあんまりここにはいいおもいでないからね」
「そうなのか」
「シグにはきこえないとおもうけど、いまでもきこえるこえがあるからね、ここは」
何の声だ、と聞こうとして思い当たる。ここは、数多くの魔女達が殺されてきた土地だ。『古の魔女』たる雛にその同族の声が聞こえたとしてもなんら不思議ではないだろう。
広場で馬車を降りる。何故か御者にも菓子を貰っている雛。皆子供が好きすぎないか?確か乗り合わせた客からも何やら果物をもらっていなかったか。
「よく貰うな」
「ひなのまりょくのせいですね」
「・・・は?」
「そういうものなのです」
あむ、と飴を頬張る。棒付きの飴を口の中でコロコロ転がしながら雛は周りをキョロキョロしている。教会都市は街並みを美しく整えられ、各エリアを繋ぐ道路も整備されている。王都もかなり整備されていると思うが、ここはまた統一美がある。
薬草市は、馬車の乗り降りをする中央広場よりも奥、教会広場と呼ばれる場所で行われている。中央広場と名がついているが、実際にこの街の中央は大教会とその目の前にある教会広場だったりする。
「すぐに薬草市か?」
「そのまえにおやどをとらないと!ひなはちゃんとしたベッドとごはんのあるところがいいです」
「確かにな。なら宿を探すか」
教会都市には数回来たことがある。馴染みの宿なら取れるだろう。お世辞にも高級店ではないが、飯は一階で取れるし美味い方だ。冒険者ギルドでも紹介する所だし、顔も効く。
□ ■ □
思った通り、馴染みの宿は部屋があった。ここなら『魔女討伐隊』の奴等も出入りはしないし、雛にも安全だろう。
「よお、久しぶりだな?スカルディオ。また依頼か?」
「ああ、そうだ。部屋は空いてるか」
「お連れさんは随分ちびっこいな?別部屋か?それとも一緒か?今ならどっちも用意できるぞ」
俺は雛に意見を聞くことに。まあこちらとしてはどちらでも構わないのだが。今回は斑もいない事だしな。
「どうすんだ?」
「ひなはべつべつでいいよ!」
「俺は一緒でも構わないが?今の時期は混む時期だし、一部屋で済むならそれに越したことはないしな」
「だっていっしょだとおねえさんをごしょうたいできないよ?いいの?シグはこまるでしょ」
そう雛が言った瞬間、宿屋の親父が爆笑した。だから何で俺は雛に女関係を心配されなければならないんだ。
「余計な気を回すな、仕事で来ているんだからそこまでガッツいてねえよ」
「じー」
「・・・前回は別だろ」
前回はどうなんだ、とばかりにジト目で見られる。アレは不可抗力みたいなもんだ、そうなんだ。
結局、ツインの大きめの部屋を取ることに。ついでとはいえ、護衛も頼まれているからな。他の街ならまだしも、ここは教会都市。反『魔女』勢力の大きな所だ。今回の特殊依頼の内容もあるし、出来れば雛から目を離したくはない。
呑気にベッドでスプリングを確かめる雛を見ていると、そんな事も忘れそうになるが。さて、この街の冒険者ギルドに顔を出しておかないとな。
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