魔女の記憶を巡る旅

あろまりん

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第四章【白】

スライム退治

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 雛に魔力銀ミスリル原石を持たされ、さあさあと追い立てられる俺。目の前でぴょこぴょこ跳ねるスライム。いつもなら剣でスパッとやるところだが…何かを期待するような雛の顔に、俺は仕方なく従うことに。

 スライムに向かって魔力銀ミスリル原石を投げつける。それがスライムに着弾した瞬間、『ジュッ』と音を立ててスライムが消え失せた。


「・・・マジか」

「いえーい」


 キレイさっぱりなくなった。小さな魔石の欠片と、魔力銀ミスリル原石が道に転がっている。雛は駆け寄り、両方拾い上げて見せてきた。
 本当に魔力銀ミスリル原石でスライム退治できるもんなんだな。しかしこんな事した事があるやつはいるまい。スライムは子供でも木の棒で叩きまくれば倒せる。わざわざ高価な魔力銀ミスリル原石を持ち出して退治する奇特な人間がいるとは思えない。


「すごいでしょ、なんかいでもできる」

「・・・こんな高価な素材でわざわざスライム退治するのはお前くらいだろ」

「でもたのしかったでしょ?」

「・・・」


 確かに楽しかったかと言われれば、ちょっと楽しかった。『ジュッ』と消える前に『ミュッ』とスライムの鳴き声もしたからな。ていうかスライムって『ミュッ』って鳴くんだなと改めて思った。

 街へとたどり着くと、雛はすかさず屋台の食事処へすっ飛んで行った。確かに夕方で腹も減っていたからちょうどよかったが。

 教会都市への乗合馬車は、明日の朝に出る。雛を連れて宿を取り、一眠りする事にした。一部屋でいいよ、と雛が言うのでツインに。


「あっ、シグきれいなおねえさんつれこみたかった?」

「何を気にしてるんだお前は」

「ひなはおこさまたいけいですし」

「変な心配してんじゃない、欲しけりゃ外で見繕う」

「ですよね!」


 ではおやすみなさ~い、とベッドに潜り込んだ雛。お前のベッドは向こうだ、と言う前にすやすやと寝息を立てだした。…くそ、俺が移動しなきゃいけないのか?しかし雛はがっしりと俺のシャツを掴んで寝ているのでどうにもならない。起きてるんじゃないのかコイツ!

 結局朝まで寝落ちた。子供は体温が高いから、俺もすぐに寝入ってしまっていた。起きるのは俺が早かったがな。たたき起こして朝食。宿屋の主人に乗合馬車の時間を聞いて、移動した。
 雛は馬車が珍しかったようで、乗り出すようにして景色を見ていた。落ちたら拾わないとな…


「ぽくぽくぽくぽくおうまさん~」

「お前馬車に乗ることないのか?」

「ないよね~いつもにゃもさんだよね~」

「・・・確かにアイツがいれば用はないか」

「だれかといっしょならたのしいけど、ひとりでばしゃはさみしい」


 そう言われればそうかもしれない。俺は移動に馬車を使うから大して気にしていないが、子供姿の雛だと乗合馬車とはいえ目立つかもしれないしな。



     □ ■ □



 もう一つ村を経由して教会都市へ。徐々に高い尖塔が並ぶ教会都市の街並みが見えてくる。乗合馬車にいる他の乗客も、やはりあの特徴ある尖塔を目の当たりにすると、感動するのかため息を付く。

 と、横の雛もため息を付いた。こいつも感動するもんなんだな。俺は雛に教会都市の感想でも聞こうかと口を開きかける。


「・・・いつ見ても醜悪だな」

「っ、」

「人の欲望と嫉妬に渦巻く澱んだ魔力の塊よ。まさしく教会都市の名に相応しい」


 雛を見れば、いつもより大人びた表情で冷たく笑う。その瞳は凍れるような光を讃えた深淵の黒。


「来たことが、あるのか」

「この都市で過去起こったのか、其方ならば知らぬはずはあるまい?此度もまた奇っ怪な依頼を受けているだろう」

「お見通しかよ」

「妾に事柄モノはないのでな。知りたくもなくても、精霊共は盛んに喚き立てる」


 そう言うと目を細める雛。今もには精霊達の声が聞こえているのだろうか。

 過去、この都市では幾度も残虐非道な『魔女狩り』の処刑が行われてきた。教会都市は『魔女討伐隊ウィッチハンター』の本拠地。ならば数多くの魔女や魔法使い、ただの人間が命を散らした場所でもある。
 そして、数多くの魔女達の襲撃に会ってきた都市だ。過去に俺は何度もこの都市で『緋』の魔女達と戦っている。巻き込まれた時もあれば、今回のように特殊依頼スペシャルオーダーとして仕事を受けた事も。

 そう、今回の特殊依頼スペシャルオーダーも、魔女絡みだ。

『魔女を捕らえ、異端審問にかける。その護衛と露払いを頼む』

 今までならば、何も思わずに力を貸し、奮っただろう。だが今の俺は、『黒』の系譜の魔女達を知っている。『魔女』とはただ人間に害を成すだけの存在でないことを知っている。

 この街で、今回俺がどういう体験をするのか…どういう選択をするのか。そこに雛…『黒』の魔女がいることはもはや『運命』なのかもしれない、とさえ思った。

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