墓場の主と魔王様

てぃきん南蛮

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一馬が絶望している間に、景色は森から遺跡、海、沼、そしてまた森へとコロコロと切り替わる。
そして気がつけば、歪な木材と歪んだ石材で組み上げられた、摩訶不思議な街が広がっていた。
「これは……」
「魔族都市"マクヤ"。でもキミの目的地はもっと先の都市だよ」
女が指差すマクヤという都市はそのまま上空を通り過ぎる。
途中、一馬達が跨るのと同じ鷲頭の生物が何頭か横切ったが、一馬達の方が一回り大きな体躯をしていた。もしかしたら、今跨っているモノは同じ生物の中でも優秀な個体なのかもしれない。
異形が跋扈する街を見下ろしていると、街を区切るような大きな水路に差し掛かった。緑色の水が流れる水路の反対は、派手目な布の屋根(オーニングと呼ぶ事を後程知る)がズラリと並んでいる。商業地区のようだ。
「魔族の国は水路で街を区切っているんだー。あれは商業が盛んな魔族都市"パクパラ"」
「水害ヤバそう」
「今の魔王様が50年前に解決したよ」
サラリとした返答に一馬は瞬いた。
何故かしたり顔をした女が、自慢げに振り返る。
「何故か魔族は粗暴というイメージが蔓延っているが、彼らは目の前の問題を放置するような愚かな種族じゃないんだなぁ~」
「…………そんな種族が俺に何の用だよ」
「それは魔族のボスが直々に答えてくれるよ」
下ばかり注目していて、目の前に城が迫っていることに気が付かなかった。
細長い山を割ったような滝を囲う、コの字型の青い城が鎮座している。一馬達が跨る生物は、コの字の先端から大きくせり出たバルコニーに着陸した。
「そら、降りろ降りろ~」
「うぁ、ちょ、あああ!!」
女に引き剥がされた反動で滑落した一馬だったが、モフリとやわい感触が衝撃を吸収した。
干したての布団のような柔らかさのそれから降りて正体を確認すると、それは全長が成人サイズの羊だった。
「…………どうも」
「メ゛ェ────ッ…………いえいえ、仕事ですから」
「!!?」
スクっと前触れもなく立ち上がった羊が流暢に言葉を喋り出し、思わず一馬は飛び退いた。目を白黒させる一馬をよそに、ペコリとお辞儀をした二足歩行の羊は一馬達を運んだ鷲頭の生物を連れて行ってしまう。
呆然とその光景を見守っていると、バッシと背中を叩かれた。犯人は一馬を誘拐した女だ。
「いって!!何すんだ!!」
「腑抜けたツラ晒してると、人間好きの魔族に食べられちゃうよ?いろんな 意・味・で ♡」
「お戯れはそこまでにお願い致します、テラ様」
女の下世話な冗談に怖気が立ちそうになっていたところ、第三者の声が遮った。
コンシェルジュを連想させる服装をした、下半身が蛇でできた藍髪の女性が身を正して一馬達に頭を下げる。
テラと呼ばれた誘拐女は、肩をすくめてピョンと跳ねるように一馬から距離を取った。
「魔王様より案内役を仰せつかりました、ネネと申します。転生者様、どうぞこちらへ」
ネネと名乗った蛇女が城内へ続く扉を掌で指す。現状着いていくしかない一馬は固い身体を無理やり動かすように、テラはスキップでもするかの様に悠々とネネの指す方へ歩を進める。
2人が着いていく気配を確認してから、ネネが先導を務めた。

城内は淡い紫をベースとした、少し落ち着かない色合いをしている。それだけでなく、当然の様に通り過ぎる異形の数々に心がざわつく。
通り過ぎる獅子頭の兵士がジロリと一馬を見下ろした時は、思わず目を逸らしてしまった。サバンナであれば死んでいるかもしれない。
「こちらが玉座の間です」
緊張しながらたどり着いた一等大きく豪勢な扉を前に、一馬は唾を飲む。
──その横をタッタカと通り過ぎたテラが、流れるように扉を蹴り開いた。
「えっ、は、あ!?」
テラの度を超えた粗暴さに、一馬も目を丸くする。一部始終を静観していたネネが、呆れた様にため息を吐いた。
「ク、ター!例の召喚者連れてきてあげたよー!!」

「相変わらず、騒々しい」

地を震わすような低音が、部屋の奥から響いた。底知れぬ不気味さを感じる声を、つい探ってしまう様に部屋の奥へと視線を巡らせる。
最初に目に写る広間のさらに奥。銀と宝石で彩られた玉座に、青い肌の巨漢が腰掛けていた。


 
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