転生聖女の後始末

世川 結輝

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外伝 前世の話

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前世でいわゆる陰キャと呼ばれた私は、ただひたすらに真面目さだけを貫いた。
勉強も運動もこなせるものはきちんとこなし、掃除も家事も手を抜くことは無かった。
1つ問題があるとすれば、私の中に溜まり続ける誰かへの優しさは陰キャの私には分け与える相手がいなかった。
動物や虫などの命を大切にし、花壇の花を枯らさないことに優しさを使った。

それでもありあまった思いは、異世界転移という機会を与えられ発揮することが出来た。

放課後、サッカー部のやかましいクラスメイトと2人きりでプール掃除をしていた時、排水溝に飲み込まれた。
情緒の欠けらも無い転移に唖然としながらも、その世界は私がやりこんでいたゲームの世界だった。
主人公は聖女か勇者かを選択でき、その役職で人と魔族の争いを収める。
初めは魔族を滅ぼしてくれと人々に頼まれるのだが、諸悪の根源たる魔王を倒すことで魔族殲滅という血塗られた結末は回避出来る。そして転生した魔王をまた1から育てることで今後の未来も作り上げていくことができる。
手順はきちんとあるし、激しいバトルももちろんある。ゲームの通りに進めていくと、順調に人と魔族の希望に満ちた未来が見え始めた。
予想外だったのは、魔王という生き物があまりにも慈愛に溢れていたことだった。ゲームの中ではひたすらに悪の限りを尽くす、文字通り魔王であったのに、この目で見た魔王は優しく暖かい目をしていた。
この男を問答無用で殺すことなど出来ないと思った私は、事情を全て話し魔王に1度死んでくれと頼んだ。なんと無粋なお願いだろうか。
しかし魔王は私の真剣さを汲み取り二つ返事で頷いた。

このまま国は良くなるはずだった。

しかし魔王が死んだ直後、魔国にある響嵐の谷からドクドクと瘴気が溢れ出した。私は急いで魔族も人も避難させた。しかし瘴気は魔国をどんどん飲み込んでいき、人間の国までおしよせてきた。いくら人はバリアを張れるからとはいえ、この濃度の瘴気の中で生きていくことなどできない。その上瘴気の中から、ありえないはずの魔物が続々と現れ始めた。
『死霊龍(デスドラゴン)』『双頭番犬(オルトロス)』『多頭毒蛇(ヒュドラー)』
彼らは冥界に閉じ込められていた魔物のはずだった。このままでは魔族も人も滅んでしまう。
私は神聖力を全て使い魔国全体に瘴気を閉じこめる結界を貼った。そして現れた三体の魔物を冥界に戻すべく戦った。

もうあまり詳しく思い出せないが、冥界王にあった気がする。それが生きていた時であったか死んだ後であったかは定かでは無い。

今現代で魔物が居ないのはきっと私が上手くやったからだろう。結界も私の溢れ出る神聖力と、数十年に1度聖女を見つけ出し神聖力を流しているおかげで当分壊れそうにない。

それでもあの時、瘴気が突然発生したことと魔物が現れたこと。ゲームにない展開はきっと誰かが策を凝らしたためだろう。

私の今世の目的は魔族の救出と、その犯人の特定である。

まあ、あらかた検討はつけているのだが……
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