妹が聖女に選ばれたが、私は巻き込まれただけ

世川 結輝

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ペネセスの話 後

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 初めの僕は彼女を利用してやろうと考えていた。
 話を聞けばセイナというその女性は僕たちと同じく反聖女派であった。
 それならばその事実を利用し、この女性を聖女派と対立させる。そうしてその混乱に乗じて厄災の対処をし、聖女の出番を無くす。
 そのためにも、禁術について調べるためにもこの女性に魔法やこの世界のことをを学ばせなければ。

 本当にそう思っていた。

 しかし、その考えはたった1週間で覆る。

 彼女はこの国の言葉を1週間でマスターした。その上毎日夜遅くまで本を読み漁り、僕が教える以上のことを学ぼうとする。
 さらに、午後からはアルーセスの仕事を嫌な顔ひとつせず手伝う。
 そうして会話をし交流すれば、彼女がどんな人間かはだいたいわかった。

 これは勉強を教え始めて3日目の事だった。
 朝10時にセイナの部屋に僕が迎えに行く約束をしていた。がその日はセイナをこっそり観察しようと、朝7時に部屋に向かった。魔力探知で部屋の中を探るとその中は空っぽであった。
 逃げたのかと焦り扉を開けるが、窓は閉まったままで焦って開けた扉も鍵は閉まってなかった。
 状況の掴めないままとりあえず屋敷全体に魔力探知を巡らせセイナの場所を探る。セイナの魔力は分かりやすく、ものの数秒で場所が割れた。

 厨房にいた。

 厨房に向かうとセイナはメイドや料理人と共に、椅子に座って並んで芋を剥いていた。
 穏やかに微笑みながら談笑をしているようだ。
「セイナ様にこんなことをさせていると知られてはクロッセス様にもアルバート様にも叱られてしまいます」
 メイドはそう言って苦笑する。
「その時は私が弁明します。タダでここに置いて貰うのはすごく気が引けるというか、貧乏性でしょうかね。タダより怖いものはないと教わったので」
「その通りですな」
 セイナの言葉に料理人が笑う。
「それにしても、セイナ様は料理もお得意とは」
 料理人のひとりがそう言うとセイナは照れくさそうに笑う。
「今でこそ妹の涼奈が家事をしてくれていますが、涼奈が小さい頃は私が料理を作っていたんですよ。なので、料理は得意なつもりですよ。お掃除も。けど、私が作れるのは向こうの世界の料理だけなので、皆さんのお口に合うか分かりませんが」
「そんなことありませんよ! 昨日作っていただいた、てる、やき? はとても美味しかったです。あのような調味料の使い方があるとは。あのつやつやな見た目、口に入れた瞬間解ける肉、甘辛い味、全てが素晴らしかったです」
 メイドが熱弁する。
「それじゃ、今日は唐揚げを作りましょうか」
 セイナの言葉にその場の全員の目が光る。料理人はメモを取りだした。
「ぜひご教授ください」

 あとから聞いた話では、セイナはこの家に来てから毎朝6時にメイドと共に屋敷の掃除と料理の下ごしらえを手伝っているらしい。その後僕と勉強をし、午後からはアルの仕事を手伝い、夕食を挟んだ後夜遅くまで自主勉強に励む。
 頑張り屋さんだなんて安直な表現では足りない真面目さだと思った。

 その出来事の後の夜、セイナが読んでいる本が魔獣討伐に関する本だと気づいた。セイナが読み勉強するべきことは元の世界への帰り方。転送魔法や転移魔法などである。にもかかわらず、魔獣討伐を見据えている。

 ここまで知れば彼女がどういう人間か予想はつく。妹を戦わせない代わりにほかの戦い方を調べているのだ。そしてそれも叶わない時は自分が戦う覚悟まで決めているのだ。

 目の前の女性はどこかの無表情な兄と同じく優しく暖かく、それを他人に見せない人なのだと気づいた。
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