妹が聖女に選ばれたが、私は巻き込まれただけ

世川 結輝

文字の大きさ
25 / 39

22, 覚悟

しおりを挟む
 ペネはこちらを静かに見つめる。
 小柄だが、私よりも少し高い身長の男がまるで子犬のようにこちらを見つめるのはなかなかに可愛らしい。

「私が魔法を学んで魔獣を討伐しようって言うのは、最終的には私たちのためになるのよ。万が一にも向こうの世界に帰れない場合、この国が滅びかけているなら安心して暮らすこともできない。万が一そうなった時のために妹は王宮で保護していて欲しい。それに、誰かが討伐しなければいけない魔獣なら私がその戦いに参加したって問題ないでしょう」
 そう笑って見せたが、自分にその力がないことは理解してる。私がその戦いに参加したって足でまといにすらなれないだろう。今のペネの反応を見るに、それはきっと魔法を習ったとしても同じだろう。

 でも、私は見つけてしまった。
 この屋敷の書斎の本の中に、冥界の女神ヘラに関する本があった。その本によれば冥界の女神ヘラの力があれば厄災を止められる。そしてペネが言っていた。私の魔力が泥水のようだと。これはヘラの魔力の記述と同じである。
 つまりは、私の魔力でもしかすれば厄災をとめられるのかもしれないということだ。そしてクロッセスたちが私をこの家に置くのはそのためなのだろう。
 分かっていた。私に利用価値があるからここに置いてくれているのだと。私を王宮に取られる訳には行かないから守ってくれているのだと。

「私はみんなのためにも、魔法を習って魔獣討伐に参加したい。1番最初の魔獣討伐は半年後だよね。それまでに私に魔力の使い方を教えて欲しいの」
 そう言えばさらにペネの瞳に悲しさが増したような気がした。
 彼らが私に優しいのは知っている。が、それは聖女を助けたいという彼らの本質に沿ったものであって、私を助けるのはその過程に過ぎない。
 これはさすがに被害妄想がすぎるだろうか。だとしても、私は彼らに心を許しすぎる訳には行かない。
 3ヶ月以内にこの家を出て、魔獣討伐に備えなければ。
 彼らと別れるための心の準備をしなければいけない。


「セイナがそう言うなら魔法を教えるけど」
 ペネのその言葉に私は飛び上がり喜ぶ。しかしその言葉には続きがあった。
「その代わり剣術も覚えてね。魔法攻撃じゃなくって剣に魔力を込めて戦えば魔力消費がかなり少なくなる。それに魔法は思ったより体力を使うから、体力をつけてもらわないと」
 運動嫌いの私にはその言葉はかなり心に響いた。
 魔法をそんなに簡単に使えるとは思っていなかったが、体力がいるのなれば私はあまりその点に自信が無い。
「でも、僕は剣術教えられないからなあ」
 ペネの言葉に私は声を上げる。
「え、ペネは剣術出来ないのに魔法が使えるの?」
「まあ、天才だからね。その代わり物理攻撃が得意な使い魔とか召喚獣とかがいるから。それに僕は体力が無いわけじゃないよ」
「そうなのか」
 私は肩を落とす。
「そうだな、アルは運動全般ダメだし。クロッセス兄様は忙しいだろうし」
 ウンウン唸るペネと共に私も腕を組み頭を悩ませていた時、玄関から大きな音と声が聞こえた。

「聖女の姉とやらはどこだ!」

 その声にペネはニヤリと笑う。

「セイナ、良い先生を見つけたよ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

召喚失敗!?いや、私聖女みたいなんですけど・・・まぁいっか。

SaToo
ファンタジー
聖女を召喚しておいてお前は聖女じゃないって、それはなくない? その魔道具、私の力量りきれてないよ?まぁ聖女じゃないっていうならそれでもいいけど。 ってなんで地下牢に閉じ込められてるんだろ…。 せっかく異世界に来たんだから、世界中を旅したいよ。 こんなところさっさと抜け出して、旅に出ますか。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

【完結】聖女召喚の聖女じゃない方~無魔力な私が溺愛されるってどういう事?!

未知香
恋愛
※エールや応援ありがとうございます! 会社帰りに聖女召喚に巻き込まれてしまった、アラサーの会社員ツムギ。 一緒に召喚された女子高生のミズキは聖女として歓迎されるが、 ツムギは魔力がゼロだった為、偽物だと認定された。 このまま何も説明されずに捨てられてしまうのでは…? 人が去った召喚場でひとり絶望していたツムギだったが、 魔法師団長は無魔力に興味があるといい、彼に雇われることとなった。 聖女として王太子にも愛されるようになったミズキからは蔑視されるが、 魔法師団長は無魔力のツムギをモルモットだと離そうとしない。 魔法師団長は少し猟奇的な言動もあるものの、 冷たく整った顔とわかりにくい態度の中にある優しさに、徐々にツムギは惹かれていく… 聖女召喚から始まるハッピーエンドの話です! 完結まで書き終わってます。 ※他のサイトにも連載してます

【完結】聖女召喚に巻き込まれたバリキャリですが、追い出されそうになったのでお金と魔獣をもらって出て行きます!

チャらら森山
恋愛
二十七歳バリバリキャリアウーマンの鎌本博美(かまもとひろみ)が、交差点で後ろから背中を押された。死んだと思った博美だが、突如、異世界へ召喚される。召喚された博美が発した言葉を誤解したハロルド王子の前に、もうひとりの女性が現れた。博美の方が、聖女召喚に巻き込まれた一般人だと決めつけ、追い出されそうになる。しかし、バリキャリの博美は、そのまま追い出されることを拒否し、彼らに慰謝料を要求する。 お金を受け取るまで、博美は屋敷で暮らすことになり、数々の騒動に巻き込まれながら地下で暮らす魔獣と交流を深めていく。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...