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23, トアセス
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声が気になった私とペネは中央階段まで駆け寄り玄関を見下ろす。
そこには若い、というか幼さの残る顔立ちの男の子が立っていた。その男の子が顔を上げると私と目が合った。
「お前か!」
大きな声を上げ玄関から押し入った男は、制止する使用人たちを無視し屋敷の奥までずんずんと歩いてきた。
階段をのぼり私の目の前まで来ると、男は腰に提げた剣を抜いて私に振りかぶった。
あまりの急な出来事に目を閉じる暇もなく、剣が額のそばまで振り下ろされた時その剣はピタリと止まった。私はただ愕然とその剣先を見つめる。
「くそ、ペネ兄。魔法を解けよ!」
目の前の男の子はそう苦しそうに言う。
「トア、お前は剣術学校で何を習ってきたんだ。初対面の女性に剣を振りおろせと習ったのか?」
ペネはそう言うと指で刃をつまみ、そっと下ろしてくれた。それを見届け私はようやく体の力を抜いた。
「トアってことは、あなたが末っ子のトアセスね」
この一週間何度もシュミレーションした。3人から聞く限り、というか誰から聞いても扱いにくそうな思春期真っ只中の男の子だというトアセスに私が会えば、きっと聖女の件でこうなるだろうことは覚悟していた。だからこそ1番初めの挨拶を間違えないように何度も何度も考えシュミレーションしてきた。私はとうとうそれを実践する。
「本当にごめんなさい」
私はトアセスの前でジャパニーズ土下座を披露した。その様子にペネや集まっていた使用人は目を丸くしているのがわかった。しかし構わず私は言葉を続けた。
「この国のこと、その情勢、あなた達の家の状況、全てとは言わないけれど理解しているつもり。そのうえで私は図々しくもここでお世話になっている。迷惑をかけていることも自覚しているし、会う前からあなたが私を嫌っているだろうことも予想していた。けれど、少しだけ。少しだけ私がここの家にいることを許して欲しい。優しくしろだなんて言わないから、少しだけ」
そう言って地面に額をつける。
土下座が得意なんてことは無いけれど、謝ることに関しては経験が多い。
この国ではきっと膝も額もつけて謝るなんてことはありえないだろうし、それこそ恥でしかないだろう。だからこそ、この様子を見て少し同情してくれたらと、下心を蓄えた土下座を維持する。
しかしそんな私の淡い期待も打ち消され、トアセスは荒々しく声を上げた。
「お前の事情なんか知らない。お前がどれだけ真面目にこの国のことを勉強したって関係ない。これ以上邪魔をするな!」
「なんの騒ぎだ」
トアセスの大声に誘われたのか、土下座のまま振り向けばクロッセスがいた。その視線が私に向く。
「なぜ、セイナはトアセスに跪いているんだ?」
そこには若い、というか幼さの残る顔立ちの男の子が立っていた。その男の子が顔を上げると私と目が合った。
「お前か!」
大きな声を上げ玄関から押し入った男は、制止する使用人たちを無視し屋敷の奥までずんずんと歩いてきた。
階段をのぼり私の目の前まで来ると、男は腰に提げた剣を抜いて私に振りかぶった。
あまりの急な出来事に目を閉じる暇もなく、剣が額のそばまで振り下ろされた時その剣はピタリと止まった。私はただ愕然とその剣先を見つめる。
「くそ、ペネ兄。魔法を解けよ!」
目の前の男の子はそう苦しそうに言う。
「トア、お前は剣術学校で何を習ってきたんだ。初対面の女性に剣を振りおろせと習ったのか?」
ペネはそう言うと指で刃をつまみ、そっと下ろしてくれた。それを見届け私はようやく体の力を抜いた。
「トアってことは、あなたが末っ子のトアセスね」
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「本当にごめんなさい」
私はトアセスの前でジャパニーズ土下座を披露した。その様子にペネや集まっていた使用人は目を丸くしているのがわかった。しかし構わず私は言葉を続けた。
「この国のこと、その情勢、あなた達の家の状況、全てとは言わないけれど理解しているつもり。そのうえで私は図々しくもここでお世話になっている。迷惑をかけていることも自覚しているし、会う前からあなたが私を嫌っているだろうことも予想していた。けれど、少しだけ。少しだけ私がここの家にいることを許して欲しい。優しくしろだなんて言わないから、少しだけ」
そう言って地面に額をつける。
土下座が得意なんてことは無いけれど、謝ることに関しては経験が多い。
この国ではきっと膝も額もつけて謝るなんてことはありえないだろうし、それこそ恥でしかないだろう。だからこそ、この様子を見て少し同情してくれたらと、下心を蓄えた土下座を維持する。
しかしそんな私の淡い期待も打ち消され、トアセスは荒々しく声を上げた。
「お前の事情なんか知らない。お前がどれだけ真面目にこの国のことを勉強したって関係ない。これ以上邪魔をするな!」
「なんの騒ぎだ」
トアセスの大声に誘われたのか、土下座のまま振り向けばクロッセスがいた。その視線が私に向く。
「なぜ、セイナはトアセスに跪いているんだ?」
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