妹が聖女に選ばれたが、私は巻き込まれただけ

世川 結輝

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27, 魔犬

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「勘違いすんなよ、お前を助けたわけじゃない」
 呆然とする私にトアセスはそう吐き捨てる。
「その魔犬、ここでペネ兄が保護した希少種なんだ。簡単に殺されたら俺が怒られる」
「でもっ、襲われたのは私のせいじゃ」
 トアセスは鼻で笑うと、私の抱き抱える子犬に優しく触れた。
「グランドウルフがたとえ子供であろうとほかの生き物に襲われただなんて聞いたこともない。あれはお前を助けようとレッドグリズリーに反撃したからあっちも反撃してきただけだろ。原因はお前だ」
 子犬に触れる手つきとは対照的に、トアセスは私のおでこをペチンと叩いた。
「なんでこんなとこに入ってきてんだよ。アルバートたちから聞かなかったのか、ここにはペネ兄が捕まえた魔獣たちがいる。しつけできているやつもいればさっきのレッドグリズリーみたいに人を簡単に襲う奴もいる。どっちにしろ、殺すとペネ兄に怒られるんだ。お前のせいだぞ」
 先日とは打って変わって柔和なその態度に、私は思わず本当にこの人はトアセスなのかと目を疑ってしまった。
「なんだよ、ジロジロ見てんなよ」
 と思いきや、舌打ちとともにこちらを睨みつける顔は、昨日と同じ攻撃的で荒々しい。しかし、よく見れば佇まいは凛々しい騎士のそれであった。
「おら、早く帰れ。俺はもう少しここで鍛錬して帰るから。グランドウルフも離してやれ」
「いや、さっきからそうしてるんだけど、膝の上から退かなくて」
 私の膝の上では子犬は堂々と座って、トアセスを睨みつけていた。
「めずらしいな。グランドウルフは人に懐かない、生涯孤独の一匹狼なんだ。連れ帰って世話してやれば?」
 トアセスはそう言うが、私の膝の上の子犬はそんな大層なものには見えない。
 それに私が立てない理由は子犬のせいだけではなかった。
「あの......、足くじいちゃって」
 私が言うとトアセスは大きなため息をつき、踵を返し歩き出した。
「知らん、自分で何とかしろよ」
「え、うそうそ。薄情者! 私はあなたと話に来たのに!」
 トアセスの足が止まる。
「お前の妹奪還に手をかせっていう相談なら聞かないからな」
 そう言ってまた歩き出す。
「ちがうちがう! 妹奪還も悪魔との戦いも自分でなんとかするつもり。ここを出てもひとりで生きていけるように、3ヶ月くらいここで準備して。そしたら、すぐに出ていくつもりだよ。その過程でこの家にかけた迷惑はどうにかして取り返すつもりだし。ほんとすぐ出ていくよ!」
 私の言葉にトアセスは目を丸くする。
「それ、ペネ兄たちは知ってるの?」
「うん。言ったけど、最後まで協力しますの一点張りで。まあ、ちゃんと出ていくよ、あなた達にこれ以上迷惑はかけられない」
 トアセスはまた大きなため息をつく。
「なら何?なんの用?」
 私は痛む足を踏みしめ立ち上がり、クロッセスと同じ茶色の瞳を見据えた。
「あなたたちを仲直りさせたくって」
「はあ?」
 今までで1番トアセスは顔を歪めた。
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