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第2章
第7話 みくちゃんの行方
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ラジオ体操第一
「よう!けんた、おはよう。」
俺は元気の無さそうなけんたに声をかけた。
「俺さぁ…今日寝坊しちまって、ご飯食べずに来たんだよな…腹が減って体操どころじゃないよ…」
けんたはお腹に手を当てて食べ物を恋しそうにしていた。
「それでは皆さん!ラジオ体操始めましょうか~」
町内会の大人たちがラジオ体操を始めようとしていた。
「ほらけんた。もう始まるからしっかりしろよ」
俺は呆れながら、けんたを起こした。
「なぁ、ラジオ体操が終わったら飯食って秘密基地に行こうな。絶対!」
こんな時でもけんたは秘密基地のことを話してきた。
「あ、あぁ。」
俺は少し考え事をしながら返事を返した。
「やっと終わったなー。」
俺は手を広げながら、夏の空気を感じていた。
「じゃあっ!俺、家帰るから!じゃーな!またあとでな!」
そう言ってけんたは全速力で家に帰っていった。
「おいおい。お腹減ってるやつがすごいパワーだな。」
何だかんだあいつは楽しそうなやつだって改めて感じた。
そういえば、りっくんも同じ町内だけどラジオ体操には来なかったなー。
どこに住んでるんだろ…。
夏休み初日 9:00
一足先に来た俺は、駄菓子屋で買ったアイスを食べながら神社の境内に座っていた。
「ここだけはどんなに暑い夏でも変に涼しい場所だよな…」
けんたとの約束の時間は9:30で、それまでの時間を俺はのんびり待っていた。
「しゅうくん!」
のんびりアイスを食べていた俺の後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「しゅうくん、今日から楽しい夏休みだね。」
俺は振り返った。
「りっくん?どうしてここに?」
俺は少し驚いた。
りっくんとは、特に約束もしてないし連絡先も交換していない。
ましてや、お互いの家の場所すら知らない。
「しゅうくん。僕たち約束したよね。」
(約束…?そんなのいつしたっけ…)
唐突に約束をしたと言われ、俺は困惑した。
「しゅうくん、僕ね。またしゅうくんと会えて本当に嬉しいんだ!」
りっくんはそう言いながら俺の隣に座った。
「またって…俺たちどこかで会ったことあるっけ…?」
俺は身に覚えのないことを言われ首を傾げた。
「しゅうくんはあの日のこと覚えてないんだよね。」
ずっと笑顔だったりっくんの顔が急に悲しげな表情に変わった。
その時、急に激しい頭痛に襲われた。
「あ、頭が…(痛い…)」
俺は頭に手を当てて、うずくまってしまった。
「しゅうくん。早く思い出してね。」
段々意識が遠のく中で、りっくんが何かを言っていた気がした…。
「もう、あの秘密基地には行っちゃダメだよ。」
「しゅうくん、目を覚まして。」
「けんたくんが待っているよ。」
俺は、けんたの家で目を覚ました。
「あれ、どうしてここに…。」
まだ、はっきりとしない意識の中辺りを見渡した。
「やっと起きたんだな。お前熱中症になるなんてひ弱だな。」
けんたは俺の横でマンガを読みながら、軽くバカにするような言い方をしてきた。
「あら、しゅうくん起きたのね。良かったわ、心配したのよ?」
心配をして俺に声をかけてきたのは、けんたのママだった。
「あの…俺さっきは神社でけんたのこと待ってて、それでりっくんが来たんだけど。」
俺は、支離滅裂な言葉で喋って動揺していた。
「りっくん?りっくんは神社にはいなかったよ。お前、境内で倒れていたんだよ。だから俺が運んだんだ。」
(おかしい…そんなはずは無い。)
俺はアイスを食べながらけんたを待っていた。
それに、りっくんが急におかしな事を言い出して、俺は激しい頭痛に襲われたんだ。
それに、夢の中で秘密基地に行くなって言われた気がした。
「しゅうくんのお母さんにはもう連絡してあるから、直ぐに迎えに来ると思うわ。」
けんたのママが母親に連絡してくれていた。
(帰ったら説教されるな…。)
「とりあえずお前はもう少し寝てていいぞ。お前のお母さんが来たら起こしてやるから。」
俺はまだ、目眩がしていたからお言葉に甘えて少し寝かせてもらうことにした。
「ピーンポーン」
ドアを開ける音がした。
「遅くなってごめんなさいね。」
「いえいえ、うちは全然いいのよ。」
どうやら、俺の母さんが迎えに来たようだ。
「けんたー?しゅうくん起こしてきてもらえる?」
「わかったー」
けんたの声が聞こえて、俺の寝ている部屋にドスドスと歩いてきた。
「おーい、しゅう?迎えが来たぞ。」
けんたは俺の事を軽く揺らした。
「あ、あぁ。もう起きてるよ。」
俺は、倦怠感のある体をゆっくり起こした。
「そうか、あんまり無理はするなよ」
けんたは俺を支えながら玄関まで付き添ってくれた。
そうして、そのまま車に乗って七宮司病院へ向かった。
診察を終えた俺は、点滴をして帰ることになった。
幸いにも軽い熱中症だったから、すぐに帰れるそうだ。
点滴を終えて、待合室で待っていた俺に後ろから誰かが声をかけてきた。
「しゅうくん。どうしてここにいるの?」
振り返ったら、そこにはみくがいた。
「みく…?どうしてここに?!」
みくは、秘密基地から落ちて以来不登校になっていた。
「私今、この病院に入院してるんだ。」
みくは俺に微笑みながら言った。
「それって、この前の事でけがしたってことか?」
俺は聞いた。
「この前?なんのことか分からないけど実は私病気になっちゃったんだよね…もう治らないかもしれないの。」
みくは、悲しそうな顔をした。
「この前のこと覚えてないのか?みんなで秘密基地に」
秘密基地について言いかけた途端また激しい頭痛に襲われた。
「ちょっと、しゅうくん大丈夫?」
心配そうにみくが顔を覗き込んできた。
「いま、お医者さん呼んでくるからまっててね」
そう言ってみくは受付の方へ歩いていった。
「また、意識が…」
バタリ…
俺はまた意識を失ってしまった。
それからみくが亡くなったのは3日後だった。
もちろんお葬式には、けんたと2人でお花を渡しに行った。
「君がしゅうくん?」
声をかけてきたのはミクのママだった。
いつもはもっとケバい見た目に香水の匂いがキツかったが今日は礼服を着ていて化粧も薄かった。
目も赤くなっていたから、相当泣いていたんだろう。
「これ、みくから。」
ミクのママから、手紙を渡された。
「なんで俺に…?」
俺は聞いた。
「ミクがどうしても渡して欲しいって」
ミクが俺宛に手紙を書いていた。
(とりあえず葬式が終わったら読んでみようかな。)
お葬式には、クラスの女子も来ていた。
でも、りっくんの姿だけはなかった。
「みく…」
隣に居たけんたが小さな声で名前を呼んでいた。
「けんた…みくが急に病気でなくなるなんて変じゃないか」
俺は疑問に思っていたことをけんたにぶつけた。
「あぁ、俺もそう思うよ。とりあえず手紙を夜見に行こうぜ。」
葬式が終わり、けんたのいえでみくの手紙を開けた。
---------------------------------------------
しゅうくんへ
この手紙を見てる頃には、みくはもう死んじゃってるのかな。
最後に病院で会えて嬉しかった。
でも、お別れの挨拶はできなくてごめんね。
最後にみくからお願いがあるの。
もう秘密基地には行ったらダメだよ。
あと、りっくんとはもう関わっちゃダメだだよ。
しゅうくんがけんたくんとずっと仲良しでいたいなら、もう関わったらダメだからね。
みくより
---------------------------------------------
「なんだこれ…。」
俺とけんたは声に出した。
「なあ、みくはりっくんのこと好きだったよな?なのになんで関わるなって…。」
けんたが言った。
(みくは病院で秘密基地の事を覚えていなかったのになんでこんな手紙を…。)
「なあ、りっくんの本名って…」
俺はりっくんの名前を聞こうとしたその時。
ズズ…
また耳鳴りが…
「今日はもう帰ろうぜ。」
けんたが唐突に言った。
「なんでだよ」
「葬式の後だし、こんな気分で遊べるわけないだろ?」
けんたは真剣な顔で言った。
「それもそうだな。じゃあまた明日な。」
モヤモヤした気もきちがまだ残っていたけど、
今日はもう帰ることにした。
「よう!けんた、おはよう。」
俺は元気の無さそうなけんたに声をかけた。
「俺さぁ…今日寝坊しちまって、ご飯食べずに来たんだよな…腹が減って体操どころじゃないよ…」
けんたはお腹に手を当てて食べ物を恋しそうにしていた。
「それでは皆さん!ラジオ体操始めましょうか~」
町内会の大人たちがラジオ体操を始めようとしていた。
「ほらけんた。もう始まるからしっかりしろよ」
俺は呆れながら、けんたを起こした。
「なぁ、ラジオ体操が終わったら飯食って秘密基地に行こうな。絶対!」
こんな時でもけんたは秘密基地のことを話してきた。
「あ、あぁ。」
俺は少し考え事をしながら返事を返した。
「やっと終わったなー。」
俺は手を広げながら、夏の空気を感じていた。
「じゃあっ!俺、家帰るから!じゃーな!またあとでな!」
そう言ってけんたは全速力で家に帰っていった。
「おいおい。お腹減ってるやつがすごいパワーだな。」
何だかんだあいつは楽しそうなやつだって改めて感じた。
そういえば、りっくんも同じ町内だけどラジオ体操には来なかったなー。
どこに住んでるんだろ…。
夏休み初日 9:00
一足先に来た俺は、駄菓子屋で買ったアイスを食べながら神社の境内に座っていた。
「ここだけはどんなに暑い夏でも変に涼しい場所だよな…」
けんたとの約束の時間は9:30で、それまでの時間を俺はのんびり待っていた。
「しゅうくん!」
のんびりアイスを食べていた俺の後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。
「しゅうくん、今日から楽しい夏休みだね。」
俺は振り返った。
「りっくん?どうしてここに?」
俺は少し驚いた。
りっくんとは、特に約束もしてないし連絡先も交換していない。
ましてや、お互いの家の場所すら知らない。
「しゅうくん。僕たち約束したよね。」
(約束…?そんなのいつしたっけ…)
唐突に約束をしたと言われ、俺は困惑した。
「しゅうくん、僕ね。またしゅうくんと会えて本当に嬉しいんだ!」
りっくんはそう言いながら俺の隣に座った。
「またって…俺たちどこかで会ったことあるっけ…?」
俺は身に覚えのないことを言われ首を傾げた。
「しゅうくんはあの日のこと覚えてないんだよね。」
ずっと笑顔だったりっくんの顔が急に悲しげな表情に変わった。
その時、急に激しい頭痛に襲われた。
「あ、頭が…(痛い…)」
俺は頭に手を当てて、うずくまってしまった。
「しゅうくん。早く思い出してね。」
段々意識が遠のく中で、りっくんが何かを言っていた気がした…。
「もう、あの秘密基地には行っちゃダメだよ。」
「しゅうくん、目を覚まして。」
「けんたくんが待っているよ。」
俺は、けんたの家で目を覚ました。
「あれ、どうしてここに…。」
まだ、はっきりとしない意識の中辺りを見渡した。
「やっと起きたんだな。お前熱中症になるなんてひ弱だな。」
けんたは俺の横でマンガを読みながら、軽くバカにするような言い方をしてきた。
「あら、しゅうくん起きたのね。良かったわ、心配したのよ?」
心配をして俺に声をかけてきたのは、けんたのママだった。
「あの…俺さっきは神社でけんたのこと待ってて、それでりっくんが来たんだけど。」
俺は、支離滅裂な言葉で喋って動揺していた。
「りっくん?りっくんは神社にはいなかったよ。お前、境内で倒れていたんだよ。だから俺が運んだんだ。」
(おかしい…そんなはずは無い。)
俺はアイスを食べながらけんたを待っていた。
それに、りっくんが急におかしな事を言い出して、俺は激しい頭痛に襲われたんだ。
それに、夢の中で秘密基地に行くなって言われた気がした。
「しゅうくんのお母さんにはもう連絡してあるから、直ぐに迎えに来ると思うわ。」
けんたのママが母親に連絡してくれていた。
(帰ったら説教されるな…。)
「とりあえずお前はもう少し寝てていいぞ。お前のお母さんが来たら起こしてやるから。」
俺はまだ、目眩がしていたからお言葉に甘えて少し寝かせてもらうことにした。
「ピーンポーン」
ドアを開ける音がした。
「遅くなってごめんなさいね。」
「いえいえ、うちは全然いいのよ。」
どうやら、俺の母さんが迎えに来たようだ。
「けんたー?しゅうくん起こしてきてもらえる?」
「わかったー」
けんたの声が聞こえて、俺の寝ている部屋にドスドスと歩いてきた。
「おーい、しゅう?迎えが来たぞ。」
けんたは俺の事を軽く揺らした。
「あ、あぁ。もう起きてるよ。」
俺は、倦怠感のある体をゆっくり起こした。
「そうか、あんまり無理はするなよ」
けんたは俺を支えながら玄関まで付き添ってくれた。
そうして、そのまま車に乗って七宮司病院へ向かった。
診察を終えた俺は、点滴をして帰ることになった。
幸いにも軽い熱中症だったから、すぐに帰れるそうだ。
点滴を終えて、待合室で待っていた俺に後ろから誰かが声をかけてきた。
「しゅうくん。どうしてここにいるの?」
振り返ったら、そこにはみくがいた。
「みく…?どうしてここに?!」
みくは、秘密基地から落ちて以来不登校になっていた。
「私今、この病院に入院してるんだ。」
みくは俺に微笑みながら言った。
「それって、この前の事でけがしたってことか?」
俺は聞いた。
「この前?なんのことか分からないけど実は私病気になっちゃったんだよね…もう治らないかもしれないの。」
みくは、悲しそうな顔をした。
「この前のこと覚えてないのか?みんなで秘密基地に」
秘密基地について言いかけた途端また激しい頭痛に襲われた。
「ちょっと、しゅうくん大丈夫?」
心配そうにみくが顔を覗き込んできた。
「いま、お医者さん呼んでくるからまっててね」
そう言ってみくは受付の方へ歩いていった。
「また、意識が…」
バタリ…
俺はまた意識を失ってしまった。
それからみくが亡くなったのは3日後だった。
もちろんお葬式には、けんたと2人でお花を渡しに行った。
「君がしゅうくん?」
声をかけてきたのはミクのママだった。
いつもはもっとケバい見た目に香水の匂いがキツかったが今日は礼服を着ていて化粧も薄かった。
目も赤くなっていたから、相当泣いていたんだろう。
「これ、みくから。」
ミクのママから、手紙を渡された。
「なんで俺に…?」
俺は聞いた。
「ミクがどうしても渡して欲しいって」
ミクが俺宛に手紙を書いていた。
(とりあえず葬式が終わったら読んでみようかな。)
お葬式には、クラスの女子も来ていた。
でも、りっくんの姿だけはなかった。
「みく…」
隣に居たけんたが小さな声で名前を呼んでいた。
「けんた…みくが急に病気でなくなるなんて変じゃないか」
俺は疑問に思っていたことをけんたにぶつけた。
「あぁ、俺もそう思うよ。とりあえず手紙を夜見に行こうぜ。」
葬式が終わり、けんたのいえでみくの手紙を開けた。
---------------------------------------------
しゅうくんへ
この手紙を見てる頃には、みくはもう死んじゃってるのかな。
最後に病院で会えて嬉しかった。
でも、お別れの挨拶はできなくてごめんね。
最後にみくからお願いがあるの。
もう秘密基地には行ったらダメだよ。
あと、りっくんとはもう関わっちゃダメだだよ。
しゅうくんがけんたくんとずっと仲良しでいたいなら、もう関わったらダメだからね。
みくより
---------------------------------------------
「なんだこれ…。」
俺とけんたは声に出した。
「なあ、みくはりっくんのこと好きだったよな?なのになんで関わるなって…。」
けんたが言った。
(みくは病院で秘密基地の事を覚えていなかったのになんでこんな手紙を…。)
「なあ、りっくんの本名って…」
俺はりっくんの名前を聞こうとしたその時。
ズズ…
また耳鳴りが…
「今日はもう帰ろうぜ。」
けんたが唐突に言った。
「なんでだよ」
「葬式の後だし、こんな気分で遊べるわけないだろ?」
けんたは真剣な顔で言った。
「それもそうだな。じゃあまた明日な。」
モヤモヤした気もきちがまだ残っていたけど、
今日はもう帰ることにした。
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