水の流れるところ

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本能的な営み

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 2人並んで駐車場へと向かった。女を助手席に乗せ、運転席へと乗り込んだ。重いエンジン音を響かせて、病院から走り出す。

 千晃には、こんな風に時々勤務後に帰りを共にする相手がいる。それは女に限らなかった。千晃からしてみたらみな同じだった。女だろうと男だろうと。千晃の下で声を上げて鳴く姿に変わりはなく、一体今だれと交わっているのか、交わっていたのか、記憶が曖昧になることもしばしばあった。

 千晃にとってのセックスは、自分の中にまった鬱憤や欲を晴らすためだけの、本能的な営みでしかなかった。そこに、情など込めることは一切なかった。

 それほどドライに対応していても、千晃には相手が寄ってくる。それは大抵、千晃の医者という地位や、恵まれた家庭環境や、時々ハーフに間違えられる容姿にかれたやつらだった。千晃と交われば、それらを自分のモノにできると勘違いしているやつら。

 この隣に座る看護師の女もその1人だ。最初がいつだったかなんて覚えてもいないし、興味もないが、ここ1年ほど関係を持っている相手だった。見返りがある保障もないのに。体の関係だけという条件をんで、ほとんどしゃべりもしない、こんなつまらない男に会い続けて何が楽しいのだろう。

 しかし、自分だってそれでいいか、と思っているのだから拒む必要も理由もない。とりあえず生活には困っていないし、勉強もできたので一応それなりの職業にも就いている。容姿のおかげで悩むこともない。そういう点では両親に感謝はしなくてはならないだろう。

「九条先生ってお静かですよね」

 突然、話しかけられて我に返る。病院を出てから女とは全く会話をしていなかった。今さら俺の性格について聞くか? と思いながらも答えた。

「まあ……こういう性格だから」
「でも、子供にはとっても明るくて優しいって聞きましたよ」
「……だれに?」
「小児科のスタッフです」
「はあ……」

 そりゃ、小児科の医師になることを選んだぐらいだから、子供は別に嫌いじゃない。子供に冷たかったら小児科医としては死活問題だろう。医者だって詰まるところ商売なのだ。

 それに千晃にとっては、大人より子供に接する方が何倍も楽だった。大抵の子供は何に対しても正直で単純で。大人のように悪意を持って言葉を発することも、計算して行動することもない。千晃みたいに根暗で捻くれてもいない。だから、警戒せずに接することができる。たまに相手が無垢むくすぎて、自分の可愛くない性格を思い知らされることもあるが。

どうして自分はこんな人間に育ってしまったのだろう。

そんなことは考えなくても明らかだった。
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