水の流れるところ

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若いな

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 サウナ室はそれほど広いわけでもないし、他にだれもいない状況もあって、2人の会話は嫌でも聞こえてきた。

 誉の相手の男は、勘のいいやつのようだ。誉と千晃の間に何かを感じ取ったらしい。まあ、さっきの変な沈黙を誤魔化すには無理があったか。もちろん2人の今の関係をはっきりと言い当てることなんてできないだろうが。千晃ですら、よくわからないのだから。知り合い? 顔見知り? 友達……とは違う気もする。

 そんなわけで、差し詰め、千晃が誉に一目:れしたとか、誉が千晃に興味を持ったとか、そんな風に嗅ぎ取ったのではないだろうか。

「誉さん、痩せた?」
「そうか?」
「うん。ちょっと細くなったんじゃない?」
「いや……どうかな。体重は変わってないと思うけど」
「もともと誉さんって軽いしね。この前持ち上げた時も女みたいだったし」
「……そう……だった?」

 相手の男が意味ありげな言い方で、誉と会話をしている。千晃は心の中で笑った。千晃をけん制するために、わざと関係を匂わしている男が可愛らしく思えた。それは小学生が好きな子を奪われないために、必死で理由を並べて引き止める光景を連想させた。

 若いな。

 さっきは驚きで誉しか目に入らなかったが。目を開いてこうして改めて見ると、誉の相手の男はなかなか端正な顔の持ち主のようだ。かなり年下ではないだろうか。20代前半ぐらいの。そんなやつがこの高級ジムに通っているのなら、何か高収入が期待できる仕事に就いているのだろう。あの様子からすると、誉にかなり入れ込んでいるのかもしれない。

 それにしても。誉が男を相手にしていたとは。確かめたわけではないが、相手の男の言動から見ても間違いないだろう。しかし、それほど驚きはしなかった。誉のあの容姿なら、男が寄ってきても不思議ではない。というより、逆に女より男が好みそうな「匂い」がする。

 そんなことを考えながら、再び目を閉じて、頭の中に誉の姿を思い浮かべた。引き込まれそうなほど大きく輝く瞳。乾いた薄い唇。意志の強そうにすっと上がった眉。そしてあの人懐っこい笑顔。先ほど一瞬見ただけの印象だが、それでも目に付いた均整の取れた体。長い手足。それが上手い具合に重なりあって、妙な可愛さと色気を醸し出している。

 そんな誉は、セックスするとどうなるのだろう。

 そこまで考えて苦笑いする。おいおい。何を考えてんだ、と。まだまともに知り合ってもいない相手に対して、そんなことを思う自分が意外だった。こんな風に、特定の人間に興味を持つこと自体、千晃にはあまりないことなのだ。
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