水の流れるところ

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可能性

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 中はやはり真っ暗だった。リビングに人の気配はない。しかし、念のため腰を低くして慎重に奥へと進んだ。リビングの電気スイッチを探り当てて、金槌かなづちを握り締めながらスイッチを押した。一気に部屋が明るくなり、一瞬目がくらむ。身構えながら周りに全神経を集中させるが、だれかが襲ってくることはなかった。

 ふうっ、と大きく息を吐いて、体を起こした。先ほどの女の部屋とは違い、高級マンションらしい最新家電で囲まれたモダンなリビングルームだった。天井にはプロジェクターまで装備されている。この部屋の主はゲームが好きなのか、あらゆるメーカーのゲーム機がテレビ近くの床に無造作に置かれ、コンセントがぐちゃぐちゃとつなげられていた。その周りにはゲームソフトが散らばっている。

 部屋は足の踏み場もないほどに乱れていた。衣類がそこら中に落ちており、菓子類の袋や、ビール缶、雑誌や漫画などが床に散乱していた。

 足でそれらを避けながらリビングを抜けて奥をのぞくと、廊下に面して他に3部屋ほどあるようだった。千晃は金槌かなづちをしっかりと握り直し、一部屋ずつ確認するために歩き出した。一番手前のドアは、間取りから推測しておそらく浴室だ。ぐっとドアハンドルを握ると一気に開けた。人の気配はなかった。電気を点けると、鏡が正面に現れた。そこに見覚えのある浴室の背景が映っている。間違いない。さっき、誉はここにいた。

 浴室を出て、次の部屋へと向かう。先ほどと同じように勢いよくドアを開け、中へ飛び入った。部屋を明るくすると、キングサイズぐらいのベッドが目の前に現れた。ブラインドは下ろされたままになっている。ここは寝室らしい。リビングと同じように、あちこちに服が脱ぎ捨てられたままになっていた。壁一面を使った大きなクローゼットは半開き状態で、引き出しからは靴下がだらしなくぶら下がっている。クローゼットを全開にして中をくまなく調べたが誉はいなかった。

 残るのは奥の一部屋だけだった。どこかに連れていかれてでもない限り、誉はそこにいるはずだ。廊下に出て、最後の部屋へと慎重に足を踏み出した。あと数歩でドアの前に着くというその時。部屋の中から微かに音が聞こえた気がして足を止めた。耳を澄ませると、確かに何かが音を立てている。千晃は警戒心を強めながらその部屋へと近づいた。ドアの前で中の様子をうかがう。

 聞こえていたのは、金属製の何かが床に擦れる音のようだった。金属バットだろうか。ここの主が武器を手にして待ち構えているのかもしれない。正気を失った人間は突拍子もない行動に出ることがある。入った途端、やみくもに襲われる可能性もある。

 それでも。誉がこの中にいる可能性があるのなら。
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