おっぱい星人がやってきた

文字の大きさ
5 / 15

ほぼ犯罪者の宇佐美さん

しおりを挟む
 それから、三ヶ月ほど経った。

 仕事の休憩中。ポケットの中で俺のスマホがブルブルっとメール着信を知らせた。取り出してチェックすると。

『夜、行ってええ?』

 おっぱい星人からメールがきていた。

『ええよ』

 そっけなく一言で返信してやる。

 このやり取りを宇佐美と何回したことか。

 こんなことになるとは思うてなかった。あん時のことは、一回こっきりのもんやと思うてた。

 まさか、最初に乳を触られた時に我を忘れて喘いどった動画を撮られとったなんて(おっぱい星人は鞄に仕舞うフリしてスマホをポケットに忍ばせとったらしい)。それを例の動画とセットにされて脅されたのだ。これを拡散されたなかったら、この関係を続けろと。

 あいつ、犯罪者やん、もう。

 もちろん、抗議した。ばらまくなりなんなりしたらええやんっ、と逆ギレもしてみた。やけど、効果はあらへんかった。

 宇佐美はそんな俺を見て、すぐさま作戦を変えてきよった。あいつはほんま、悪知恵が働くわ。

『小野がおっぱい提供してくれへんかったら、ほんま、俺、そこら辺の女襲うで』
『……それはあかん』
『俺も結構な痛手を負うかもしれへんけど、会社もダメージ凄いで、たぶん』
『せやな。やからあかん。するな』
『なんでこんなことしたんやって警察に聞かれたら、同僚の小野が触らせてくれへんかったって正直に言うで』
『それ、俺も被害受けるやつやん。巻き込み事故やん!』

 俺だけやなく、会社や一般女性を巻き添えにすると脅して俺の罪悪感を呷るやり取りを繰り返し、最終的には、俺が拒否ったら本気で誰かの胸を揉みそうな勢いの宇佐美に根負けした。

 いや、まあ。そんな脅しは口先だけで、宇佐美がそんなことせえへんのは分かってんねんけど(たぶん)。

 ほんまは。傍目から見たら理解できひんやろうこの宇佐美との謎の行為が、俺にとってそれほど苦痛やないというか、むしろ快楽になっとったことが根負けした理由やったりした。

 宇佐美は宇佐美で、どうやら俺の平たい胸を大層気に入ったらしい。何がどう違うのか俺には分からへんけど、『小野のおっぱいええわ~』と毎回言われる。当分、俺の胸(というか乳首)でおっぱい触りたい欲を解消することに決めたようやった。

 俺たちは、なんやかんやで週一回は時間を駆使して会っとった。会うのは決まって俺のマンションやった。

 宇佐美との逢瀬?が始まって、俺はプライベートで女の子と会う機会が皆無となった。そちらに割く時間がなくなってもうたから。いや、まあ、最近は縁もなくてもともとご無沙汰ではあったけど。

 時々思う。これは、なんとも生産性の低い関係じゃなかろうか。他の時間を犠牲にしてまでする行為にしては、そこになんも生まれへん。強いて言うなら、宇佐美の犯罪防止できる、ぐらいで。しかも、乳触られてるだけで、セックスするわけでもないし。キスさえもせえへんし。

 やけど、止められへんかった。

 あの、宇佐美の指の呪いにかかってもうて。

 それに。この関係のおかげでいいこともあった。出会って数年、ちゃんと顔を付き合わせてじっくり話したことなん、なかったんやけど。盛り上がるとまではいかへんけど、会話ができるようになった。それは、俺にとってなかなか心躍る、ガ○ガ○君の当たりが出るみたいなラッキーなおまけやった。

 帰りになんかおやつになるもんでも買ってこうか。

 そう思い付いて、一人でニヤついた顔を、小野、きしょ。と一緒に休憩しとった先輩社員に言われながら、仕事に戻った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

素直じゃない人

うりぼう
BL
平社員×会長の孫 社会人同士 年下攻め ある日突然異動を命じられた昭仁。 異動先は社内でも特に厳しいと言われている会長の孫である千草の補佐。 厳しいだけならまだしも、千草には『男が好き』という噂があり、次の犠牲者の昭仁も好奇の目で見られるようになる。 しかし一緒に働いてみると噂とは違う千草に昭仁は戸惑うばかり。 そんなある日、うっかりあられもない姿を千草に見られてしまった事から二人の関係が始まり…… というMLものです。 えろは少なめ。

可愛いがすぎる

たかさき
BL
会長×会計(平凡)。

デコボコな僕ら

天渡清華
BL
スター文具入社2年目の宮本樹は、小柄・顔に自信がない・交際経験なしでコンプレックスだらけ。高身長・イケメン・実家がセレブ(?)でその上優しい同期の大沼清文に内定式で一目惚れしたが、コンプレックスゆえに仲のいい同期以上になれずにいた。 そんな2人がグズグズしながらもくっつくまでのお話です。

孤毒の解毒薬

紫月ゆえ
BL
友人なし、家族仲悪、自分の居場所に疑問を感じてる大学生が、同大学に在籍する真逆の陽キャ学生に出会い、彼の止まっていた時が動き始める―。 中学時代の出来事から人に心を閉ざしてしまい、常に一線をひくようになってしまった西条雪。そんな彼に話しかけてきたのは、いつも周りに人がいる人気者のような、いわゆる陽キャだ。雪とは一生交わることのない人だと思っていたが、彼はどこか違うような…。 不思議にももっと話してみたいと、あわよくば友達になってみたいと思うようになるのだが―。 【登場人物】 西条雪:ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。 白銀奏斗:勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

イケメン大学生にナンパされているようですが、どうやらただのナンパ男ではないようです

市川
BL
会社帰り、突然声をかけてきたイケメン大学生。断ろうにもうまくいかず……

ファントムペイン

粒豆
BL
事故で手足を失ってから、恋人・夜鷹は人が変わってしまった。 理不尽に怒鳴り、暴言を吐くようになった。 主人公の燕は、そんな夜鷹と共に暮らし、世話を焼く。 手足を失い、攻撃的になった夜鷹の世話をするのは決して楽ではなかった…… 手足を失った恋人との生活。鬱系BL。 ※四肢欠損などの特殊な表現を含みます。

処理中です...