フェイク

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明石だろ

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 にわかにこの状況が信じられなかった。

 いや、人形が七尾の顔していることだってかなり驚いたけど。

 この、冷静でサバサバした口調と態度。普段の七尾と全く変わりがない。

 そんな中身まで七尾にそっくりな人形を目の当たりにしたら、動揺するのは当たり前で。

「お前……本当に七尾なのか?」
「……そうだけど」
「七尾雄大?」
「だからそうだって」
「でも……一体、誰が、どうやって……」

 姿形だけならまだ理解できる。画像さえ手に入ればコピーは可能だろう。だけど。中身の部分までは、いくら今が情報社会だとしても、七尾をよく知っていなければ完全にコピーなんてできるわけがない。

 だとしたら、誰が七尾そのものの人形を造ったのか。

 明石の独り言に近い問いかけに、七尾人形はきょとんとした顔をして、すっと人差し指を明石に向けてきた。

「……何?」
「明石だろ」
「は?」
「俺を造ったのは、明石だろ」
「……いや、違うけど」
「そうだって」
「…………」

 しばらく無言で見つめ合う。

 昨晩の記憶がないのだから、明石一人で全ての答えを得ることはできないだろう。口調からして、自分よりこの七尾人形の方が事態を把握していそうだ。

 明石は一旦、自分の中に生まれた数々の疑問を置いておくことにした。

 はあっ、と大きく息を吐いて、七尾人形に話しかける。

「なあ。今まで俺の身に起こった経緯をお前が説明できるんだったら、してくれる?」
「いいけど」

 七尾人形が、七尾そっくりの喋り方で語った説明によると、明石が購入したのは、最先端技術を搭載したモデルの人形らしい。

 注文者が希望する人間そっくりに造ることが可能なのだそうだ。

 どうしてそれが可能かというと、この『未来人形専門店イクフエ』という店は、大きな臨床検査事業をしている会社が運営していて、血液検査等で手に入れた日本国民のDNA情報を利用しているからだった。

 つまり、そのDNA情報で外見はほぼ完璧に再現でき、全国に散らばったプロ級の調査員によって得られた対象人物の話し方や性格等の情報もデータ化し、それを踏まえて限りなく希望に近い人形を造り上げているのだ。

 明石のことを識別できたのも、調査員の情報に七尾の身近な人間として明石が含まれていたからだという。
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