フェイク

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拗ねてないっ

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 そして、自分はどうやら七尾にうり二つの人形を自ら希望して注文してしまったようだ。

「だけど……その情報だけでこんなにそっくりに造れるか? それに、お前は『お楽しみ企画』かなんかで写真もなかったし、選べる感じじゃなかったぞ。俺が七尾を注文できること自体おかしくないか?」
「ナナオユウダイに関してはもともとDNA情報もデータ量も多かったからな。ほら、俺ら職業柄、臨床検査機関に関係深いし」
「まあ、そうだけど……」

 明石と七尾の勤めている会社は、臨床検査機器を開発、販売している。だから、確かに臨床系の検査機関とは繋がりが深い。

 明石は現在、出向で子会社の製造部門に所属しているので直接顧客と関わる機会は少ないが、営業である七尾はおそらく毎日のように検査機関の人間と顔を合わせているだろう。

「てことは、七尾の性格とかそういうのも得やすかったってことか?」
「そう。あと、注文できたはずだけど、俺を」
「え? だって……」
「書いてなかったか? 『希望はできる限りお受け致します』って」
「そういやあったかも……」

 確かに商品説明ページにこっそりと書いてあった気がする。

「いや、でもあくまで希望だろ?」
「まあそうなんだけどな。会社的にはできれば毎回希望通りの人形を造りたいとは思ってるんだよ。だけど、会社も日本国民全員の完璧なデータを持っているわけじゃない。たまにデータ不足で注文通り造れないこともある。特に子供とかな。だから予防線として、『お楽しみ企画』と称してどんな人形が来るかは分からないようなスタンスで販売して、『希望はできる限り』って文句を付けてるわけ」
「なるほど……で、七尾に関してはデータが十分あったから完璧に近いのが造れたのか」
「そういうこと。注文してすぐ届いたのも同じ理由」

 そこまで話を聞いて、七尾人形がなぜこんなに七尾に近いのか一応理解はした。信じがたい内容ではあるが。

 それにしても。もしこれが事実だとしたら。

「あのさ、これってほぼ違法じゃないの?」
「ほぼっていうか、違法だな」
「いや、でも、堂々と売ってたぞ。ネットで」
「この店は、本当に必要な人にしか見つからない」
「……どういうこと?」
「俺も詳しい仕組みは分からないけど。人形だし。だけど、ネット上でこの店に辿り着ける人と辿り着けない人といるらしい」
「意味分かんねえ……」
「まあ、そこはあんまり深く考えない方がいいんじゃないのか? 俺も明確な答えは知らないし。考えても答えが出るわけじゃない。つまりは店側が選んでるってことだろ、客を」
「店側が……」
「明石は選ばれたんだろうな。もしかして金持ちとか? 金づるにされたんじゃないのか」
「いや、俺、そんなに金持ってないし。というか、そこまで高くなかったぞ、お前」

 そう言うと、七尾人形があからさまにムッとして答えた。

「……俺、セール品だしな」
「ああ、そういやそうだったな」
「最新モデルじゃないし。型落ちだし」
「そうなのか?」
「俺の後になぜかすぐ次のモデルが出て型落ちになった。型落ちって言っても、まあまあ新しいからそこまで安くもできないし、格安モデルとの板挟みみたいになって、全く売れなかったからな」
「マジで?」
「そう。それに、この会社、ネット販売はセール品しか売らないしな。最新モデルは上客との間で個人的に取引されてる。俺みたいな処分の困るようなやつだけ一般市場でセール品として売られる。上客は最新型って言葉に弱いからな。どうせ型落ちは興味ないだろうし」
「……拗ねてんの?」
「拗ねてないっ」
「拗ねてんじゃん」

 七尾そっくりだな。そう思って、思わず噴き出した。
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