フェイク

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カスタムサービス

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 一枚は領収書だった。残りの二枚は納品書とあり、クリップでまとめてあった。納品書の一枚目は取引年月日や金額などが記されていて、それを捲って二枚目を見ると、『カスタムサービス内容控え』と頭に書いてあった。そこに箇条書きで文章が書いてある。

 それを黙読していく。

 注文一 俺に惚れていることを前提にする ※『俺』は注文者様と理解し、設定致しました。
 注文二  照れない。
 注文三 目を逸らさない。
 注文四 俺に優しくする ※『俺』は注文者様と理解し、設定致しました。
 注文五 俺に毎日キスをする(状況によって深いのも可)※『俺』は注文者様と理解し、設定致しました。
 注文六 俺を褒める(ここぞという時)※『俺』は注文者様と理解し、設定致しました。
 注文七 俺とイチャイチャする(ここぞという時)※『俺』は注文者様と理解し、設定致しました。

「何これ……」

 酔っていたとはいえ、自分の願望が駄々漏れの内容に、顔から火が出そうになる。

 なるほど、どうりで七尾とまともに話ができるはずだ。『照れて目を逸らさない』と自分が注文を付けていたのだから。

「……ムリ」
「え?」
「こんなの、恥ずかし過ぎるだろ、俺! いくら墓場まで持っていくって決めた気持ちだからって! そんな……人形で代用しようなんて……俺のその欲深さがもう、ヤバい。無理」
「はあ……」
「返品だ返品!」

 そう叫んで、タブレットを手に持った。返品について確認しようと、〇〇市場のホームページを再び開いた。が、メールの通知が届いているのに気づいて、もしやとそちらを先に確認する。

 予想通りショップからの返信だった。明石が返品の希望メールを出してから一時間も経っていない。その早さが逆に明石を不安にさせた。
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