フェイク

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視線

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 作ったことに満足して、嬉しそうに笑う七尾人形。その笑顔を思い出して、自然と口元が緩んだ。そこで、今は会議中だったと慌てて表情を引き締める。

 幸いにも細かい生産計画について説明している部下に周りが注目していたので、明石の意識がどこかに行っていたことは気づかれなかったようだ。

 と、ふと視線を感じて顔を上げる。

 対面の椅子に座る七尾とばっちり目が合った。

 あ、見られてた?

 今回の会議は新モデルの生産会議だったので、企画や営業など担当者が本社からわざわざこちらへ赴いて慎重に行われていた。最初の生産数を見誤ると、在庫過多になりかねないからだ。そして、このモデルの営業担当者は七尾だったため、今こうして同じ会議に彼も参加している。

 自分が集中してなかったことを、七尾には気づかれたらしい。

 七尾はよく見ている。さりげなく周りに気を配るし、明石がボケッとしていたことが七尾に勘付かれてもおかしくはない。でも。いつもは目が合うと向こうからさっと逸らすのに。

 七尾は明石の目を見つめたまま視線を外さなかった。今までとは違う七尾の反応に戸惑う。何かを探っているような、明石の心の奥を見透かそうとするかのような視線。

「…………」

 その鋭い眼差しに耐えきれず、珍しく明石から目を逸らした。

 その後、しばらく明石の胸はドキドキと強い鼓動を打っていた。

 七尾の視線一つで、自分はこんなにも動揺してしまう。その事実に更に動揺する。そして。こういう時に、七尾に惚れているんだと思い知らされて。

 悲しくなる。

「明石さん、今回、前モデルに比べて初回ロット数が多いですが、部品の納品は問題ありませんか?」
「はい。生産開始に間に合うように部品数、スケジュールとも確認済みです。詳しくはこちらのスクリーンをご覧ください」

 明石は行き場のないその気持ちを無理やり抑えこんだ。

 集中力を戻すと、残りの会議をなんとか滞りなく終わらせた。
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