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当たって砕けろ
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交通規則に違反しないように気をつけながら車を飛ばして、七尾のマンションを目指す。事前に電話しようかと思ったが、迷った末、しないで行くことにした。『当たって砕けろ』作戦の方が今夜はいい気がしたのだ。
同期たちと訪れたことのある七階建てのマンションが近づいてくる。その五階の奥から二番目が七尾の部屋だ。
近くにあった有料駐車場に車を停めて、エントランスまで歩く。インターホンの前に立った。
ここで追い返される可能性だってある。もう寝てるかもしれないし、もしかしたら不在かもしれない。でも。
明石は大きく深呼吸すると、ゆっくりと七尾の部屋番号のボタンを押した。
時間がとても長く感じた。ドキドキしながら応答を待っていると。
『……はい?』
どうやら明石のマンションと同じくインターホンにはカメラが付いてないようだ。少し警戒したような声が返ってきた。
姿が見えないなら警戒するのは当たり前だろう。真夜中の訪問者を手放しで迎えてくれるような人間はなかなかいない。
「七尾……俺、明石」
『……明石⁇』
「うん……ごめんな、遅くに。だけど、どうしても会って話したかったから」
『……開ける』
ゲートのロックが解除される音が聞こえた。自動ドアをくぐってエレベーターへと向かう。
良かった。とりあえず門前払いは避けられた。
エレベーターで五階に上がり通路へと出ると、七尾が玄関前で扉を開けて待っていてくれた。足早に七尾宅へと近づく。七尾はすでに寝ていたのか、Tシャツと下着姿だった。
「本当にごめん。もう寝てたよな?」
「……別にいいよ。寝付けなかったし」
入って。そう言われて、お邪魔します、と小さく呟いて中へと進んだ。
靴を脱ぐと、リビングへと通された。
七尾の家は、物がそれなりに沢山あるのだが、全て綺麗に整頓されているせいか、あまり乱雑さは感じられなかった。インテリアも雰囲気も、前に訪れた時と全く変わっていない。
「なんか飲む?」
「あ、水もらっていい?」
七尾がキッチンへと消える。しばらくすると、グラスを持って戻ってきた。
「座ったら?」
手持ち無沙汰状態で突っ立ったままでいる明石をちらっと見て、七尾が勧めてきた。
「え? ああ、うん」
ありがとう、とグラスを受け取って、ソファに腰をかける。七尾がどさっと隣に腰を下ろした。
お互いに真正面を見て、目を合わせようともしなかった。
前方にある、大きめのテレビ画面を何気なく見る。電源の入ってない、真っ暗なスクリーンに二人の姿が反射して映っている。
微妙な距離を開けて座る二人。
いつものように、緊張と沈黙が生まれる。前の自分ならこの気まずさが苦しくて、逃げ出すことしか考えなかったけど。今は逃げ出すわけにはいかない。ちゃんと七尾と向き合って、自分の想いを伝えたい。
同期たちと訪れたことのある七階建てのマンションが近づいてくる。その五階の奥から二番目が七尾の部屋だ。
近くにあった有料駐車場に車を停めて、エントランスまで歩く。インターホンの前に立った。
ここで追い返される可能性だってある。もう寝てるかもしれないし、もしかしたら不在かもしれない。でも。
明石は大きく深呼吸すると、ゆっくりと七尾の部屋番号のボタンを押した。
時間がとても長く感じた。ドキドキしながら応答を待っていると。
『……はい?』
どうやら明石のマンションと同じくインターホンにはカメラが付いてないようだ。少し警戒したような声が返ってきた。
姿が見えないなら警戒するのは当たり前だろう。真夜中の訪問者を手放しで迎えてくれるような人間はなかなかいない。
「七尾……俺、明石」
『……明石⁇』
「うん……ごめんな、遅くに。だけど、どうしても会って話したかったから」
『……開ける』
ゲートのロックが解除される音が聞こえた。自動ドアをくぐってエレベーターへと向かう。
良かった。とりあえず門前払いは避けられた。
エレベーターで五階に上がり通路へと出ると、七尾が玄関前で扉を開けて待っていてくれた。足早に七尾宅へと近づく。七尾はすでに寝ていたのか、Tシャツと下着姿だった。
「本当にごめん。もう寝てたよな?」
「……別にいいよ。寝付けなかったし」
入って。そう言われて、お邪魔します、と小さく呟いて中へと進んだ。
靴を脱ぐと、リビングへと通された。
七尾の家は、物がそれなりに沢山あるのだが、全て綺麗に整頓されているせいか、あまり乱雑さは感じられなかった。インテリアも雰囲気も、前に訪れた時と全く変わっていない。
「なんか飲む?」
「あ、水もらっていい?」
七尾がキッチンへと消える。しばらくすると、グラスを持って戻ってきた。
「座ったら?」
手持ち無沙汰状態で突っ立ったままでいる明石をちらっと見て、七尾が勧めてきた。
「え? ああ、うん」
ありがとう、とグラスを受け取って、ソファに腰をかける。七尾がどさっと隣に腰を下ろした。
お互いに真正面を見て、目を合わせようともしなかった。
前方にある、大きめのテレビ画面を何気なく見る。電源の入ってない、真っ暗なスクリーンに二人の姿が反射して映っている。
微妙な距離を開けて座る二人。
いつものように、緊張と沈黙が生まれる。前の自分ならこの気まずさが苦しくて、逃げ出すことしか考えなかったけど。今は逃げ出すわけにはいかない。ちゃんと七尾と向き合って、自分の想いを伝えたい。
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