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本編
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しおりを挟む数日後、学園の長い廊下を歩いていると、ソテル様とフローラさんが一緒に歩いているのを見た。
銀髪のソテル様と金髪のフローラさんはまるで一対の人形みたいで、一緒にいるととてもしっくりきた。
なのに何故か頭とは違うところでどうしようもない違和感が襲ってきて、気がつくと私は2人に話しかけていた。
「おはよう。友達になったの?」
「「!!」」
その瞬間、何故かソテル様が勢いよく後ずさる。
それに対しフローラさんは一瞬不満そうな顔をしたけど、すぐに元の笑顔に戻ってソテル様の腕を自分の元に引き寄せた。
「ええ!仲良くなったんです!ね、ソテル?」
「………ソテル?」
「………!」
彼が敬称で呼ばれていないことに違和感を感じて復唱すると、なぜかソテル様が仄かに赤面した気がした。
……ソテル様が顔色変えるとこ、初めて見た。思わずジッと見ていると、フローラさんが『照れちゃって可愛い!』と嬉しそうにしている。
「……照れた?」
何に照れたのだろう。
「照れてなどいない」
「ふふ、今はそれでいいです」
「何を言っているんだ?」
2人の話していることが、わからない。何故だろう。先程感じた違和感がどんどん大きくなっていく。
嫌ならここを立ち去ればいいのに、ただ呆然と仲の良い2人の様子を眺めていると、それに気づいたソテル様が、顔を顰めてふいっと体の向きを変えた。
「………友達なのだろう。俺は用があるから行く。そこで話してろ」
「え!テル、ちょっと待ってくださいよー!」
フローラさんの制止の声も聞かず、ソテル様は去っていってしまった。
……私が来たから?
いつも私と会えば『最近どうだ』と必ず聞いてくるのに、最近はそれが全くない。どうして?
遠のいていく背中を呆然と見送っていると、フローラさんがニコニコしながら話しかけてきた。
「ソテルって可愛いですよね。2人はご両親に言われて婚約してるんですって?羨ましいなぁ」
「………ソテル」
「ソテルがそう呼んでほしいと言ったんです。でも婚約者のララ様は様付けだし、私は遠慮したんですけど、ソテルがどうしてもって言うから……」
知らなかった。ソテル様は敬称が嫌いだったのだろうか。……でも、私は呼び捨てで呼んで欲しいだなんて言われたことがない。
「ソテル様が可愛い?」
「はい!そう思いませんか?笑った顔とか、意外と子供っぽくて可愛いです」
「………笑った、顔?」
思わずぽかんと口を開ける。
ソテル様が、笑う?
現実でも想像でも夢の中でも常に顰め面のソテル様が?
そんな私に、フローラさんがいっそう笑みを深めたような気がした。
「ええっ、ソテルの笑った顔見たことないんですか?婚約者なのに。怒った顔も照れた顔ももちろんかっこいいですけど!」
「怒った…?」
「はい!私がこの前転びかけたら、ソテル怒っちゃって……ほんと過保護ですよね」
そんなの、知らない。
彼が楽しそうに笑って、誰かに怒るところなんて、見るどころか想像もしたことがない。
だって私の記憶の中の彼は、いつも顰め面をしている。10年以上一緒にいるのに、いつもいつも。
「………そっか、幸せになったんだ」
『ああ、幸せだよ。ララちゃんが一緒にいてくれるしね』
この間、笑顔でそう言い切った父。
でもあの人が生きていた時は、いつも辛そうな顔をしていた。
『本当に、何もされてないんだよね?この傷は、ただ転んだだけなんだよね?』
よかった。ソテル様は今幸せなんだ。
ソテル様は、フローラさんが好きなのだろうか………?
「フローラさんは、ソテル様が好き?」
「……!?え、ええ」
「じゃあ結婚しなきゃだね」
「は!!??」
ソテル様は(多分)フローラさんが好きで、フローラさんがソテル様を好き。
ならソテル様の幸せに邪魔なのは、私だ。
「ちょ、ちょっと待ってください。ソテルのことが好きなんですよね」
「まってて、説得するから」
「聞いてる!!?」
あれから父様から連絡はない。
つまり私とソテル様の婚約はまだ終わってない。
やっぱりソテル様の言ってた『政略結婚』のせい……?
「ソテル様の父様に、公爵に話に行かなきゃ」
午後にまだ授業が残っていることも忘れ、鞄を取りに教室へと踵を返す。
政略結婚をしなくても良いと言ったら、ソテル様は私にも笑ってくれるだろうか。
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