政略結婚でも、相手を幸せにしたいと思うのはおかしいだろうか

藍砂さふ

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本編

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「父様は、幸せ?」

珍しく父が帰ってきた日の食事中、私は父に聞いた。父はきょとんとした顔をすると、ゆるゆると顔を緩めて微笑んだ。

「ああ、幸せだよ。ララちゃんが一緒にいてくれるしね」
「私も父様大好き」
「僕も大好きだよーーー!!!」

父がわざわざ立ち上がって抱きしめにくる。行儀が悪いと言うと、しゅんとした顔で席に戻っていった。

「どうしたの?学校でなにかあったのかい?」
「友達と話したの」
「ララちゃんにお友達……!!いつ邸に連れてくるんだい!?」
「すごく賢いの」
「さすが僕の娘のお友達!」

さりげなく友達を自慢する。友達だと言われたことはないけれど、ソテル様が『友達ができたのか』と聞いてきたから、多分友達だ。

侍女のアリーも毎日話す子がいると話したら『友達ですね』と言っていた。

父様は私に友達ができて嬉しいらしく、椅子から崩れ落ちてめそめそ泣いている。

床に強打した膝が痛そうだったからこの前ソテル様から渡された絆創膏を渡すと、不思議そうな顔をして『大事にするね』と言いながら胸ポケットにしまっていた。使って。

「どんな話をしたんだい?」
「好きな人の話」
「まさかの恋バナ……!」
「ソテル様が幸せじゃないって」
「……?どうしてだい?」
「私のこと好きじゃないから」

聞かれたから、話した内容を思い出しながら話すと、父様がぽかんとしている。

「それは、友達が言ったのかい?」
「フローラさんと私」
「へえ、フローラちゃんというのかい……その場にソテルギウスくんは?」
「いなかったよ」

ソテルくんは私と違って、優秀な人が入るSクラスに入っている。

そういえばフローラさんも成績を認められてSクラスに移動するって言っていた。ソテル様とも友達になるのだろうか。

「ガキが…うちのララに蠅1匹近づけるなって言っただろうが」

フローラさんと手を繋いでるんるんスキップしているソテル様の姿を想像していた私は、父様の低い声なんて当然聞いていなかった。

「父様、結婚した時も幸せだった?」

父様と母様は政略結婚だったと、祖父が言っていた。

私と同じで小さい頃からの婚約者で、最初から仲は悪かったと。

でも結婚した時は、何か変わったりしたのだろうか。何故かバクバクと鼓動を早めだした胸に手を当てて尋ねると、父様は途端に困ったような顔をした。

「………生憎だけど……幸せでは、なかったかな。だって彼女は、ララちゃんをたくさん虐めたから」
「…………」
「でも、彼女がいなければララちゃんは生まれなかった。だから、結婚してよかったと思ってるよ」

父様は幸せじゃなかった。
母様がいない今は幸せだけど、結婚する前も後も不幸せだった。

『好きでもない人と結婚して、幸せなわけないですよね』

そんなんじゃ、ソテル様は幸せになれっこない。




「父様、これ」
「んっ!!!??」

行動は早く。
食後、私は父様の部屋の戸を叩いた。

「どうしたのー?珍しい!おやつたべるー?」と満面の笑みで迎えてくれた父様は、私から受け取った包みを見た途端に絶句する。

「ラ、ララちゃん……?これなに……?」
「借金」
「どゆこと!!?」
「足りなかった?」
「そうじゃなくて!!!」

10年前から父が会うたびに『お祭りに行く?じゃあこれお小遣いね~』『旅行に行く?じゃあこれお小遣いね~』『魚を飼う?じゃあこれお小遣いね~』と渡してきたお小遣い。

貴族はお金を持ち歩かずとも買い物できるし、あまり欲しいものも出来たことがないので使わずに保存してきた。

『俺の家はお前の家にお金を借りている。お前の家は跡継ぎがお前しかいないから、婿養子が必要なんだ』

どれくらい借金があるかわからないけど、家が2.3軒建てられるくらいのお金は入っている。

「足りなかったら、働いて返す」
「ララちゃんにそんなことさせるはずないでしょ!!!それに借金なんてとっくの昔に………はっ!!」

ぎゅっぎゅっと押し付けるも、全力で押し返してきた父様がまたよくわからないことを言っている。よくわからないが、受け取ってもらえないらしい。

こうなったらソテル様に明日渡そうかと考えていると、苦笑した父様が尋ねた。

「ララちゃんはもしかして、ソテルギウスくんとの婚約を解消したいのかな?」

5.6回頷く。さすが父様だ。
父様はそれにまた笑うと、意外と穏やかな顔をして言った。

「そう。ララちゃんがそうしたいなら、構わないよ。別に血縁とかこだわってないしね。跡継ぎはそこらへんの親戚共に押し付けよう!老後はパパと一緒にダラダラ過ごそうか!ララちゃんが小さい頃は遊んであげられなかったし」

思わず立ち上がった。

「本当!?」
「本当だよ~もう、ララちゃんは可愛いな~」

勝手にあがった口角をにぱにぱして抱きつくと、父様がにやにやしながら抱きしめ返してくれる。

よしよしと頭を撫でられる感触にひたっていた私は、父様の『ざまぁみろ』という声はやはり聞こえていなかった。

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