殺されそうになって逃げ出したら、美し過ぎるショタくんと出会いました。これから逃避行しながら溺愛したいと思います。

高岩唯丑

文字の大きさ
1 / 10

01

しおりを挟む
 暖かな光が降り注いでいた。花に囲まれている東屋に佇んで、私はそれを眺めていた。婚約者レオルと、ここで待ち合わせをしている。彼が来るまでいつもこうやって、ここからの景色を眺めていた。
「レオル様」
 少し高めの植木の陰から、レオルが姿を現す。穏やかな笑みで手を振ってこちらに近づいてきた。いつもの風景。私も微笑んで手を振り返す。なんて幸せな時間だろう。結婚してしまえば、こういうのは無くなってしまう。それは少し寂しいと思いつつ、早く結ばれたいという気持ちもある。贅沢な悩みだろうか。私は少し笑ってしまった。
「遅くなってすまない」
 レオルがあと数歩という距離まで、近づいてきていた。レオルは少し遅れてやってくる。これもいつも通り。いつもと違う所があるとすれば、今日は剣を腰に下げている事。その剣にレオルは手をかけて、勿体ぶる様に少しゆっくり抜く。そしてさらに数歩歩み寄ってきて、その剣を私のお腹に突き立てた。意外とすんなり剣の中間まで刺さり、背中から剣が突き出るのを感じる。痛みはあとからやってきた。
「な……なんで」
 本当に分からなかった。意味がわからない。怒らせてしまったとしても、さすがに剣で刺してくるような頭のおかしい人ではなかったはず。私がレオルの顔を見つめると、今まで浮かべていた笑顔が、雲った表情に変わる。
「すまない……君は危険な存在なんだそうだ」
 誰かから言われた様な物言いに、私は嫌な予感を感じる。頭に過った人物がいた。レオルはその人物に、ほとんど言いなりだ。
「昨日、聖女様の預言があった、サミュ、君はこの国を脅かす、夕闇の令嬢という人物になるだろうという事だ……だから殺すべきだとも」
 私が口を開こうとすると、それを遮るかの様にレオルは一気に剣を引き抜く。私の言葉は痛みの叫び声に変わってしまう。
「どうして、愛し合って……」
 地面に這いつくばりながら何とか痛みに耐え、そう口にしたけどそれも背中に突き立てられた剣によって途中で止められる。呼吸が上手くできない。声が出ない。口からはひゅうひゅうと、息が抜け出る音がするだけだ。
「僕はこの国の王子として、私情で国を危険にさらす訳にいかない」
 そう言いながらレオルは剣を抜く。もうすでに体の感覚が消えてきていて、痛みは無かった。私はレオルを見上げる。その姿は剣を振り上げて、突き刺す寸前の冷たい顔だった。相変わらず声は出ない。私はレオルから視線をそらさなかった。もしかしたらやめてくれるかもしれないという希望を持って。でも剣は振り下ろされて、視界は真っ暗になった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

婚約破棄を伝えられて居るのは帝国の皇女様ですが…国は大丈夫でしょうか【完結】

恋愛
卒業式の最中、王子が隣国皇帝陛下の娘で有る皇女に婚約破棄を突き付けると言う、前代未聞の所業が行われ阿鼻叫喚の事態に陥り、卒業式どころでは無くなる事から物語は始まる。 果たして王子の国は無事に国を維持できるのか?

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

正妃として教育された私が「側妃にする」と言われたので。

水垣するめ
恋愛
主人公、ソフィア・ウィリアムズ公爵令嬢は生まれてからずっと正妃として迎え入れられるべく教育されてきた。 王子の補佐が出来るように、遊ぶ暇もなく教育されて自由がなかった。 しかしある日王子は突然平民の女性を連れてきて「彼女を正妃にする!」と宣言した。 ソフィアは「私はどうなるのですか?」と問うと、「お前は側妃だ」と言ってきて……。 今まで費やされた時間や努力のことを訴えるが王子は「お前は自分のことばかりだな!」と逆に怒った。 ソフィアは王子に愛想を尽かし、婚約破棄をすることにする。 焦った王子は何とか引き留めようとするがソフィアは聞く耳を持たずに王子の元を去る。 それから間もなく、ソフィアへの仕打ちを知った周囲からライアンは非難されることとなる。 ※小説になろうでも投稿しています。

護国の聖女、婚約破棄の上、国外追放される。〜もう護らなくていいんですね〜

ココちゃん
恋愛
平民出身と蔑まれつつも、聖女として10年間一人で護国の大結界を維持してきたジルヴァラは、学園の卒業式で、冤罪を理由に第一王子に婚約を破棄され、国外追放されてしまう。 護国の大結界は、聖女が結界の外に出た瞬間、消滅してしまうけれど、王子の新しい婚約者さんが次の聖女だっていうし大丈夫だよね。 がんばれ。 …テンプレ聖女モノです。

お前など家族ではない!と叩き出されましたが、家族になってくれという奇特な騎士に拾われました

蒼衣翼
恋愛
アイメリアは今年十五歳になる少女だ。 家族に虐げられて召使いのように働かされて育ったアイメリアは、ある日突然、父親であった存在に「お前など家族ではない!」と追い出されてしまう。 アイメリアは養子であり、家族とは血の繋がりはなかったのだ。 閉じ込められたまま外を知らずに育ったアイメリアは窮地に陥るが、救ってくれた騎士の身の回りの世話をする仕事を得る。 養父母と義姉が自らの企みによって窮地に陥り、落ちぶれていく一方で、アイメリアはその秘められた才能を開花させ、救い主の騎士と心を通わせ、自らの居場所を作っていくのだった。 ※小説家になろうさま・カクヨムさまにも掲載しています。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

処理中です...