殺されそうになって逃げ出したら、美し過ぎるショタくんと出会いました。これから逃避行しながら溺愛したいと思います。

高岩唯丑

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「え……夢?」
 とっさに体を起こして、周りを見渡す。倒れていたのは東屋。地面に這いつくばるような形。体に視線を移すと、刺された場所の服に穴が開いて、血が染み付いていた。でも傷は無くなっている。触ってみても、傷らしいものは全く残っていない。地面には血だまりが出来て、服が水気で体に張り付いている。
「どういう事? 夢じゃない?」
 立ち上がると、血だまりが少し粘度のある嫌な音を立てた。
「思ったほど血が出てない? 奇跡的に軽傷だったの?」
 あれだけ刺されたのに、服に染み込んだ血は滴り落ちる事がない。刺されている最中は血の量なんて気にしていなかったけど、ボトボトと音がしていた気がするのに。
「あっ、レオルさ……レオルは?」
 なんとなく自分を刺した人間を様付けするのが嫌だったから、言い直す。周りを見てもレオルの姿はない。とりあえずよかった。どういう訳か分からないけど、息を吹き返した私を見たら、また殺しにかかってくるだろう。信じたくはないけど。
 私はその場を離れる。当てがある訳じゃないけど、とりあえずここにいてはダメだと思う。植木を抜けて、城内に入ると誰もいない。人払いをしていたのだろうか。こんなに人がいないのは、そういう事なんだろう。
「サミュ様! どうして?!」
 しばらく城内を進んでいると、通り過ぎたT字の廊下の脇からそんな声が聞こえた。そう声をかけられて私は体が強張る。聞き覚えのある声。親しくしていたメイドのアリー。アリーまで、私を殺す協力をしていたかもしれない。そんな考えを浮かべてしまう。私が声のした方に顔を向けると、涙でグシャグシャになったアリーの顔が見えた。
「アリー」
「サミュ様! よかった、ご無事だったのですね!」
 アリーは突進してくるように、私に抱き着いてくる。ちょっと痛かったけど、これは私を殺そうとしている人の反応ではなかった。
「アリー、服が汚れるよ」
「そんなのどうでもいいです、サミュ様が無事なら」
 しばらく私を抱きしめて落ち着いたのか、アリーは私を抱きしめるのをやめて離れる。案の定、メイドエプロンに血の染みが出来てしまっている。
「アリーはどうしてここに」
「城内勤務の者に東屋に近づくなと命令が出て、どうしてか尋ねるとサミュ様を成敗すると聞かされて……何とかできないかってここまで来ました」
 そういう事か。先ほどアリーを疑ってしまった事を悔やむ。この子は命令に背いてまでここに来たのに。
「とりあえず隠れましょう」
 いろいろ訳が分からないけど、そうした方が良いだろう。私はアリーの言葉に頷く。それを見てアリーは私の腕を掴んで、自分が来た道を引き返した。
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