玉の輿がしたいだけなのに!~毎度事件が起こる上に、興味のない平民魔法師団長から溺愛されるメイドの事件手帳~

高岩唯丑

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エキセントリック・メイドドリーム

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「いや、理解はしていたんだ、私が次期王だと……でも」
 アンデストがこちらを向いて、一度声を潜めた。口に出してしまっていいだろうか、という沈黙。それから苦笑して口を開く。
「でも……まだ先の事だろうと安心していた、覚悟を決めていなかった」
 アンデストは目を伏せてしまった。混乱して当然だ。ただ親が死んだわけじゃない。王という、すべてを背負う重責までついてくるのだから。真面目だからこそ、全てが手に入るなんて楽観視はできないのだろう。
「本当は、王にはなりたくなかった……少なくとも、まだ時間があると思っていた、徐々に王になる覚悟を決めていいかと、悠長に考えていた」
 アンデストが伏せていた目をこちらに向ける。
「情けないダメな人間だよ、私は」
 本当は王になりたくなかった。この人が、王様を殺すわけがないのでは。一瞬そんな事を考えた私は、一旦考えるのをやめる。今はアンデストを何とかしてあげたい。
 私はアンデストの頭の後ろ辺りに手を回して、自分の胸に引き寄せ優しく抱きしめる。
「ちょっ、ベル?」
 慌てているアンデストに私は声をかける。
「……ちゃんと泣きましたか?」
 いろいろな責務に追われて、王になる覚悟とか考えてて、きっとそんな暇はなかったのではないか。私は出来る限り優しい声で、アンデストに囁きかける。
「王の覚悟とか一旦脇に置いておきましょう、今はあなたはただのアンデストで、私はただのベル……王族と国民でもなければ、主人と使用人でもありません」
「あ……あぁ」
 アンデストがゆっくりと座り込む。私もそれに合わせて膝立ちになった。
「ただの一般人だから、強くなくてもいいんですよ、泣いたって誰も失望したりしない、ね?」
「……あり……だとう……ううっ、あぁぁ……」
 背中に回されたアンデストの手が、握り締められる。少し震えていた。


 私とアンデストは並んで、窓の下の壁を背もたれにして座り込んでいた。アンデストが少し笑う。私は何だろうとアンデストを見た。
「恥ずかしい所を見られてしまった……でもなんだか気持ちの整理がついたよ」
「それはよかったです」
「昔、母上が亡くなった時を思い出した……あの時もここで同じように泣いたんだった、その時はベルじゃなくてエミラ様だったけど」
 私がまだここに勤めていなかった時だ。エミラ様は王様の側妻だ。元メイドでメイドドリームの体現者。私はあの人が大好きだ。エミラ様と同じ行動が出来て、なんか嬉しい。
「……エミラ様の方が良かったですか?」
 ふといじわるな気持ちになった私は、そんな事を口にしてみる。それを受けてアンデストは困った様に笑った。
「……そんな事は無いよ」
 いまならキスしても拒否られないのでは。私の頭によこしまな考えが浮かぶ。いけない。今はそれより、アンデストの身の潔白を証明する方が先である。
「……ところで、辛いかもしれないんですが、昨夜の話を聞いてもいいでしょうか?」
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