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エキセントリック・メイドドリーム

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「はぁ」
 私はどっと疲れた気分になった。一日かけて三人の王子が寝ていた時間を、調べただけなのだから。
「どういう事だろう」
 最重要容疑者であったはずの三人の王子は、犯行があった刻限には寝ていた。つまり犯行は可能。でも印象的にも、動機的にも三人が犯人ではないと感じる。この中に、嘘をついている人間がいるのだろうか。私は信じたくない気持ちになる。
 今日、それぞれの王子と顔を合わせて話した。三人とも形は違えど、王様が、父親が居なくなってほしいなんて思っていなかった事がわかった。
 アンデストは王になる覚悟を、まだ持つ事ができないと言っていた。それなのに王様を殺害するだろうか。むしろ長生きしてほしいと思う気がする。居なくなって困るとさえ、思っているかもしれない。その上、声をあげて泣いた。泣きじゃくっていた。本当に悲しんでいたと感じる。
 トールは王様に感謝をしていた。自分は王の器ではないと理解していた。いろんな人から外に追いやられた哀れな王子と思われていたけど、実際はその立場に望んで留まっていたともいえる。のんびり研究をしている方が性に合っていると、そう思っている。野心なんて見えかったし、王様を恨んでもいなかった。
 セブリアンはむしろ王になりたがっていた。でもそれは殺害してでも手に入れたい、とはセブリアンは思っていない。実力で見返して、王座を得ようとしていた。その為に長生きしてもらいたかった、と思っているかもしれない。それに王様の死で涙を流していた。私には見えない様にしていたけど、あれはきっと泣いていたと思う。珍しく隙を見せてしまうぐらいに、ショックだったと言える。
「……騎士団と魔法師団は何かわかったかな」
 いや、セブリアンが言うには形だけの調査らしいから、何も分かっていないかもしれない。そもそも呼び出されて話を聞かれたりしてないのが、その証拠かな。私がこれだけ歩き回っていても、咎められていないし。私はため息をついてしまう。
「アリーンは形だけじゃなくて、ちゃんとやってるかな」
 私がアリーンの名前を出した途端に、前からアリーンが駆けてくるのが見える。もしかして私がアリーンの名前を出したのが聞こえて、嬉しくなって疾走してきたのだろうか。なかなかキモイぞ。
「ベル!」
 逃げようか迷っているうちに、アリーンが目の前まで迫って叫ぶようにそう言った。なんか様子がおかしい様な。そう思っているうちに、アリーンがスピードを緩めずに、私を抱きしめてきた。
「にゃっ……何するんだよ、バカ! 痛いわ!」
 私はアリーンの頭をはたく。それでもお構い無しに、アリーンは私を抱きしめ続けた。
「よかった……無事で」
「はっ?! ちょっ、なんなの?!」
 意味がわからない。私が逃れようともがいていると、満足したのかアリーンが離れて私の顔を見た。深刻な表情。嫌な予感がするほどに。
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