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エキセントリック・メイドドリーム

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「すまない、泣き言だったな」
 一瞬だけ目の辺りを手で拭ったセブリアンが、背もたれにもたれ掛かるのをやめて姿勢を正す。それから私に体を向けた。
「君の用事はなんだ? 何か用があったのだろう?」
 もういつものセブリアンだった。
「疑っているわけではないんですが、アリーン様に関係者に話を聞いてくるように言われまして」
 言い訳がましい言い方になってしまった。セブリアンにはバレてしまいそうだと、少しハラハラする。
「……あの変人、なぜ自分の部下にやらせないのか」
 私は今日三回目のアリーンへの謝罪を、心の中でする。アリーンの今後の評判を犠牲にしてしまった。そう思っているとセブリアンが、考える様な素振りを見せる。
「いや、形だけの調査にしないために、独自で動いているのか……それなら部下に任せない理由になる」
 良い感じに勘違いしてくれたおかげで、アリーンの今後の評判に悪影響は無さそうでよかった。
「昨日の一の刻から三の刻に王様は亡くなったらしいんですが、その時間は何を?」
「……寝ていたな、さすがにそれを証明できないが」
 ほとんど即答だった。
「……ですよね」
 予想通りの答えに、私は少し疲れを感じる。これなら聞いても聞かなくても、同じだっただろうか。それとも王子三人とも犯行は可能だったという事が、一つ事実としてわかったと考えるべきか。
「その様子だと、他の容疑者たちも概ね同じ答えか?」
 私の疲れた表情を察したのか、セブリアンが聞いてくる。私は「……はい」と頷いた。
「だろうな……一日かかっただろう、まぁそう簡単ではない」
 私は窓の外を一度、見る。空が赤くなってきていた。一日経ってしまった。それに対して、事件が進展する様な情報は得られなかった。どっと疲れたよ。
「……少なくとも、私の印象的にセブリアン様は犯人ではないです、アリーン様にはそう伝えておきます」
「……先入観は良くないぞ、見聞きした事をそのまま伝えるんだ、ただの情報として」
 自分が不利になるかもしれないのにそれを言うのは、すごいなと思う。誠実というか。私の中でセブリアン犯人説がさらに否定される。
「もういいか? これから忙しい」
「あっ、そうですね」
 これから王様の葬儀の、一の夜が行われる。その準備でセブリアンは忙しいはずだ。と言っても、私達使用人も忙しくなるけど。
 外に出るために、私はドアまで移動して一礼をする。そこでセブリアンが思いついたように声をあげた。
「気を付けるんだぞ、犯人を刺激する事を君はしているのだからな」
「はい、ご心配ありがとうございます」
 私はもう一度頭を下げて、部屋から出た。
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