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エキセントリック・メイドドリーム

解決編10

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 片刃の短剣。もちろん血なんてついていないけど、これが全く証拠にならないという事は無いはずだ。
「ほぅ、見せてもらえるかね?」
 そう言いながら近づいて手を差し出してきたアリーンに、私は短剣を差し出す。何か良い手があるのだろうか。
「ふむ……刃渡りは王に残されていた傷と、おそらく合うのだよ」
「よかった……これは凶器かもしれない」
 アリーンの言葉に、私はとりあえず安堵の声が出てしまう。そうしているとエミラが、金切り声をあげて怒り出した。
「たまたまでしょう! そんな事だけで、犯人にされたらたまらないわ!」
 まだ言い逃れをするらしい。でも確かにこれも偶然、似たような物を持っていただけと言えてしまう。
「まだ調べてられる事があるのだよ」
 不敵な笑みを浮かべたアリーン。そして、懐から赤い布を取り出す。
「それは?」
 赤といっても、黒ずんだ赤だった。それによく見ると端の方に、白い部分が少しある。四角い布に、丸く赤色が塗られているような感じ。
「王の血を染み込ませたものなのだよ」
 そう説明してくれたアリーンが、エミラに向けて口を開く。
「ご存じないかもしれませんが、血液は洗い落として見えなくなっても、しばらく残っています……つまり王の血と、短剣についているかもしれない血を照合すれば」
「王様殺害の凶器かどうかわかる!」
 ほとんど叫んだような私の言葉に、アリーンが頷くと、手のひらが光り出す。
「アリーン! やめなさい!」
 トールに掴まれているエミラが、抵抗しながら叫ぶ。
「そうだ、あなたは爵位を欲しがっているそうじゃない! 私が王の母親になれば、叶えてあげられるわよ! 約束するわ! それをやめれば夢が叶うのよ!」
 エミラの言葉を聞いたアリーンの体が、強張る。まさかここまで来て、アリーンが誘惑に負けてしまうのか。私が口を開きかけた所で、アリーンが微笑んで口を開いた。
「僕はね、愛する人のために爵位が欲しいのだよ、でもそんな風に爵位をもらったら、愛する人に軽蔑される、本末転倒ってやつなのだよ……それに」
 アリーンは一度言葉を切ると、ニヒルな笑みを浮かべて言葉を続けた。
「こういう僕を、僕はカッコイイと思うのだよ」
 私を見てウィンクをするアリーン。私は呆れながらも、ちょっと同意してしまった。
「はは、そうだね、アリーン……カッコイイよ、とっても」
 何でだろうな。心がとても暖かくなる。訳の分からない事を言うアリーンに、呆れる私。昔からのやり取りだった。
「ありがとう、とってもやる気が出たのだよ」
 アリーンが頷いた後、その手の光が勢いを取り戻した。
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