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2話 回避するために
しおりを挟む「夢だ!」
自分の声に驚いて目が覚めた。がばっと上半身を起こして周囲を見回す。
心臓がどくんどくんと強く脈打って嫌な感じがした。
「……はぁ、最悪だったわ」
私は予知夢を見ることが出来る。いつからこうなったのかはよく覚えていない。
ルーカス殿下と婚約できたのも、予知夢を見て国のために助言をしたからだった。功績を買われて王太子妃として迎え入れられた。
「マリアのこと、どうしましょう……」
確か未来でルーカス殿下は『君の部屋から証拠が見つかった』と言っていた。ということは、誰かが私の部屋に証拠を隠した……?
それなら隠すために侵入したはず。私の部屋に見張りを置いておけば、捕まえられるかも!
愛する殿下の悲しい顔なんて二度と見たくない。
ささっと外出の準備を済ませると、執務室へと急いだ。
婚約中の身ではあったけど、既にルーカス殿下とはひとつ屋根で暮らしている。この家に移り住んできたとき、私専用の部屋を用意してくれていた。
「ルーカス殿下、よろしいですか?」
中から優しい返事が聞こえてきて、思わず頬が緩む。さきほどとは違う心地よい胸の高鳴りが始まった。
「失礼しま──」
使用人が扉を開けてくれて、中に入ろうとするとルーカス殿下がすぐ目の前にいた。
「「あっ」」
私を迎え入れようとしてくれてたみたい。ルーカス殿下を見上げると、緋色の瞳もこちらを見ていた。
視線がぶつかると、訳もなく楽しい気持ちになって笑みがこぼれてくる。
部屋の中に入ってテーブルを挟むように向かい合って座ると、簡単に近況報告をしあった。
忙しい殿下とは、同じ家にいても顔を合わせるのが難しい。久しぶりの時間だった。
いつまでもお話ししているわけにもいかず、仕方なく本題に入る。
「……私の部屋に誰かが入ろうとしてきたんです。誰だったのかは分からないのですが、怖くて……」
護衛をつけてもらうための嘘をついた。予知夢を見るなんて話は誰も信じない。それをよく知っている私は、目的を達成するために適当に理由を作り上げる。
「俺がいながら……、気が回らず悪かった。とても怖かっただろう?」
「いいえ、大丈夫です。ただ、少し不安なので騎士様に見張りをお願いしたいのですが……」
「ああ、俺の右腕に見張らせよう」
ルーカス殿下の右腕といえば、負け知らずで有名なレオン騎士隊長だ。
あまり表情が変わらないルーカス殿下だけど、すごく心配してくれているようで嬉しくもあり、嘘をついている手前申し訳なくもあった。
お礼をいって執務室を出ると、夢の中では憎々しい顔をしていたあの女の姿が目に飛び込んできた。
「あら? クラーラ姉さま?」
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