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第一章 第二の覇道、見出したり
第13話 拠点
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「食べ終わったら薬を飲んで寝ろ」
「はい」
お腹が膨れて眠気が出てきたのか、アインは大人しく言われるがまま眠りについた。
「さて、俺は向こうに運ぶ物資でも調達しに行くか……」
無防備にすやすやと眠るアインを横目に、ジェイは一人で街に繰り出した。
「──これと……あとそれもか……」
「ジェイ殿ではないか!」
買い物中の彼にそう声を掛けてきたのは、オリビアたちアイリス騎士団の一行だった。
「ああ、久しぶりだな」
「久しぶりという程ではないがな。……それにしても、派手にやったそうじゃないか」
「冒険者の間で噂が広まってますわよ」
「いい意味でも……悪い意味でも……」
降りかかる火の粉を払っただけだが、結果的に悪目立ちしてしまったことをジェイは若干後悔していた。
「まあ、もう街を去るんで許してくれ」
「別に私たちは構わないが……。それより、どこか別の街に行ってしまうのか?」
「強い冒険者がいなくなるのは残念ですわね。一緒に依頼もしてみたかったのに」
「悪いが依頼はしばらくやるつもりはない。コンフリクトの森に小屋を見つけたんだが、何か知っているか。誰も使っていなさそうだから、そこに移り住もうと思っている」
ジェイはあの小屋が、本当に誰のものでもないのか確認する。
「ああ、あれは丁度一年前ぐらいまで爺さんが住んでいたよ。あそこまでは国の徴税官も来ないからな。だがその分危険も伴うんだが……ジェイ殿には不要な心配か」
そう言ってオリビアはハハハと笑った。
「そうだったのか。じゃあ拝借させて頂こう」
「多分誰も文句は言わないさ。……それじゃあ私たちは依頼をこなしてくるよ。また森やどこかで会える日を楽しみにしている!」
「ああ、じゃあな」
ジェイは有益な情報をもらたした三人に感謝の気持ち抱きつつ、別れを告げて買い物を続ける。
それから遠征用のバックパックに物資を詰めれるだけ詰めてジェイは宿に戻った。
部屋ではアインがすやすやと寝息を立てていた。
薬剤耐性のない彼女には薬が効きすぎたかなと心配しつつ、ジェイも簡単な食事の後眠りについた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「うーん……」
「あ、えっと、おはようございます……」
ジェイが目を覚ますよりも前からアインは起きていた。
「おはよう。顔色は良くなったな」
「はい、おかげさまで……」
栄養価の高い食事に薬、そして十分な睡眠を経て、アインは体力を取り戻しつつあった。
「今日はやることがある。早く行くぞ」
「は、はい!」
ジェイと一緒に行けることを知り、彼女の声もどこか晴れやかなものになっていた。
二人は宿屋の朝食を貰い、エスタマイルの街に別れを告げコンフリクトの森へ旅立つ。
道中は特にモンスターと出くわすこともなく、例の小屋に辿り着くことができた。
「ここが今日から俺たちの家だ」
「こ、ここがですか……?」
アインはボロ小屋を前にたじろぐ。
「まあ見た目より状態は割といい。とりあえず今日寝れるぐらいには手入れしていこう」
「はい……」
ジェイから与えられたアインへの初めての業務命令。それは自分の寝床の確保だった。
アインは中を掃除し、ジェイは壁の割れている部分を補強して回る。
屋根などは雨漏りしない程度に板を打ち、窓は貴重なガラスが割れないように丁寧に枠を入れ替えた。
「──かなり埃っぽいです……」
アインは息苦しそうにゴホンと咳をする。
「ベッドの辺りは仕方がないな。シーツは新しいのを持ってきている。寝室が終わったら昼休憩にしよう」
昼は街で買った痛みやすい生物から食べた。
アインはレーションを物欲しそうに眺めていたが、今となっては貴重品でもあるためジェイは決して許さなかった。
許可がなければ、アインもそれに逆らってまで盗み食いをしようとはしなかった。
「暗くなるまでに作業を終わらせるぞ」
「はい」
ジェイはハンマーを握りながら昔のことを思い出していた。
彼は軍歴を持つが工作部隊の出身ではない。しかし彼の所属する部隊の性質上あらゆる状況に対応するために多少の技能は身につけていた。
カンカンカンという小気味良い音が、彼の思い出を甦らせる。
ジェイはかつてどのような日々を過ごしていたのか。それは誰も知らない。
そして彼自身もまた、それを頭から追い払うように、無心で釘を打ち込んでいった。
対するアインは元の家で家事の手伝いもやったことがないのか、めちゃくちゃな順番で掃除をしていた。
それでも要領はいい方のようで、日が落ちる頃にはコツを掴み全ての作業を完了させた。
「──よし、こんなもんでいいだろう。暗くなってきたしこれ以上の作業は危ない。今日はもう薬を飲んでゆっくり休め」
「はい。……あ、あの」
「ん?」
「これからどう暮らしていくんでしょうか……」
こんな辺鄙な土地に素性の怪しい男と二人。アインが怖がるのも無理はなかった。
「明日からお前に訓練をする。自分の身を守り、それを仕事にできるだけの技術を与える。お前は明日から軍人だ。命令には従え。しかし自分の頭で考えて行動しろ。常に自分の命と作戦の遂行を両立しろ」
「…………」
「……まあ全ていきなりできる訳じゃない。明日から……そうだな、一年間掛けてお前を一流の軍人に育て上げる。今日はもう寝ろ。そして弱い自分に別れを告げろ」
アインは目を泳がせながらも、ジェイの方をしっかりと向き、力強く頷いた。
「はい」
お腹が膨れて眠気が出てきたのか、アインは大人しく言われるがまま眠りについた。
「さて、俺は向こうに運ぶ物資でも調達しに行くか……」
無防備にすやすやと眠るアインを横目に、ジェイは一人で街に繰り出した。
「──これと……あとそれもか……」
「ジェイ殿ではないか!」
買い物中の彼にそう声を掛けてきたのは、オリビアたちアイリス騎士団の一行だった。
「ああ、久しぶりだな」
「久しぶりという程ではないがな。……それにしても、派手にやったそうじゃないか」
「冒険者の間で噂が広まってますわよ」
「いい意味でも……悪い意味でも……」
降りかかる火の粉を払っただけだが、結果的に悪目立ちしてしまったことをジェイは若干後悔していた。
「まあ、もう街を去るんで許してくれ」
「別に私たちは構わないが……。それより、どこか別の街に行ってしまうのか?」
「強い冒険者がいなくなるのは残念ですわね。一緒に依頼もしてみたかったのに」
「悪いが依頼はしばらくやるつもりはない。コンフリクトの森に小屋を見つけたんだが、何か知っているか。誰も使っていなさそうだから、そこに移り住もうと思っている」
ジェイはあの小屋が、本当に誰のものでもないのか確認する。
「ああ、あれは丁度一年前ぐらいまで爺さんが住んでいたよ。あそこまでは国の徴税官も来ないからな。だがその分危険も伴うんだが……ジェイ殿には不要な心配か」
そう言ってオリビアはハハハと笑った。
「そうだったのか。じゃあ拝借させて頂こう」
「多分誰も文句は言わないさ。……それじゃあ私たちは依頼をこなしてくるよ。また森やどこかで会える日を楽しみにしている!」
「ああ、じゃあな」
ジェイは有益な情報をもらたした三人に感謝の気持ち抱きつつ、別れを告げて買い物を続ける。
それから遠征用のバックパックに物資を詰めれるだけ詰めてジェイは宿に戻った。
部屋ではアインがすやすやと寝息を立てていた。
薬剤耐性のない彼女には薬が効きすぎたかなと心配しつつ、ジェイも簡単な食事の後眠りについた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「うーん……」
「あ、えっと、おはようございます……」
ジェイが目を覚ますよりも前からアインは起きていた。
「おはよう。顔色は良くなったな」
「はい、おかげさまで……」
栄養価の高い食事に薬、そして十分な睡眠を経て、アインは体力を取り戻しつつあった。
「今日はやることがある。早く行くぞ」
「は、はい!」
ジェイと一緒に行けることを知り、彼女の声もどこか晴れやかなものになっていた。
二人は宿屋の朝食を貰い、エスタマイルの街に別れを告げコンフリクトの森へ旅立つ。
道中は特にモンスターと出くわすこともなく、例の小屋に辿り着くことができた。
「ここが今日から俺たちの家だ」
「こ、ここがですか……?」
アインはボロ小屋を前にたじろぐ。
「まあ見た目より状態は割といい。とりあえず今日寝れるぐらいには手入れしていこう」
「はい……」
ジェイから与えられたアインへの初めての業務命令。それは自分の寝床の確保だった。
アインは中を掃除し、ジェイは壁の割れている部分を補強して回る。
屋根などは雨漏りしない程度に板を打ち、窓は貴重なガラスが割れないように丁寧に枠を入れ替えた。
「──かなり埃っぽいです……」
アインは息苦しそうにゴホンと咳をする。
「ベッドの辺りは仕方がないな。シーツは新しいのを持ってきている。寝室が終わったら昼休憩にしよう」
昼は街で買った痛みやすい生物から食べた。
アインはレーションを物欲しそうに眺めていたが、今となっては貴重品でもあるためジェイは決して許さなかった。
許可がなければ、アインもそれに逆らってまで盗み食いをしようとはしなかった。
「暗くなるまでに作業を終わらせるぞ」
「はい」
ジェイはハンマーを握りながら昔のことを思い出していた。
彼は軍歴を持つが工作部隊の出身ではない。しかし彼の所属する部隊の性質上あらゆる状況に対応するために多少の技能は身につけていた。
カンカンカンという小気味良い音が、彼の思い出を甦らせる。
ジェイはかつてどのような日々を過ごしていたのか。それは誰も知らない。
そして彼自身もまた、それを頭から追い払うように、無心で釘を打ち込んでいった。
対するアインは元の家で家事の手伝いもやったことがないのか、めちゃくちゃな順番で掃除をしていた。
それでも要領はいい方のようで、日が落ちる頃にはコツを掴み全ての作業を完了させた。
「──よし、こんなもんでいいだろう。暗くなってきたしこれ以上の作業は危ない。今日はもう薬を飲んでゆっくり休め」
「はい。……あ、あの」
「ん?」
「これからどう暮らしていくんでしょうか……」
こんな辺鄙な土地に素性の怪しい男と二人。アインが怖がるのも無理はなかった。
「明日からお前に訓練をする。自分の身を守り、それを仕事にできるだけの技術を与える。お前は明日から軍人だ。命令には従え。しかし自分の頭で考えて行動しろ。常に自分の命と作戦の遂行を両立しろ」
「…………」
「……まあ全ていきなりできる訳じゃない。明日から……そうだな、一年間掛けてお前を一流の軍人に育て上げる。今日はもう寝ろ。そして弱い自分に別れを告げろ」
アインは目を泳がせながらも、ジェイの方をしっかりと向き、力強く頷いた。
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