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第二章 覇道、その一歩
第19話 戦争
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ジェイは事前に引き受けた依頼の詳細を頼りに、アインたちを連れ集合地点である中心街へと向かった。
街には市民の姿は無く、大量の兵士と冒険者が集まっている。
物々しい雰囲気と漂う異様な空気の中、見知った顔がいくつか混じっていた。
「久しぶりだなジェイ殿」
「ああ」
「お噂はかねがね聞いておりますわ。……そっちが例の」
アイリス騎士団一行の目線の先には、厚手のコートに身を包んだ少年少女の姿があった。
もちろんそのコートの下は完全武装である。
「皆、あなたと同じ魔法を使うの……?」
「それは言えない。だが俺にも劣らない実力はあると保証しよう」
ジェイの言葉にミサキは怯えた表情で後退りした。そんな彼女の背中をソフィアが叩く。
「心強いことじゃないか。あの第二級冒険者ヴァルカンが味方だなんて」
「──さあ冒険者共! お喋りはその辺にしておけ! 将軍殿がいらっしゃるぞ!」
ジェイたちの会話を遮るように、高圧的な兵士が壇上で叫ぶ。兵士の横にはやけに華美な鎧に身を包んだ男がいた。
「聞け! 我こそはワッフェ共和国エイス公爵配下、ファイクリング将軍である!」
長々しい肩書きにうんざりしたジェイは、あの男を将軍と呼ぶことにした。
「此度、我が国は隣国ブルーム公国に攻め入ることと相成った! 戦争となれば全ての国民が協力するのは当然の義務である! 貴様ら金に卑しい冒険者も、報酬分は働いてもらうぞ!」
これから肩を並べて一緒に戦おうという相手に、蔑みと変わらない言葉をぶつける将軍にジェイは辟易した。
彼が貴族でこちらが平民だとしても、戦場では肩書きなどなんの意味もないのだ。そう思ったとしても口に出すことは無い。
「作戦は追って知らせる! 最初の貴様らの仕事は行軍の露払いだ! モンスターから軍を守れ!」
将軍の合図でワッフェ共和国軍がザッザッザッと行進を始めた。ガシャンガシャンという規則的な金属音が街をこだました。
冒険者たちも言われるがままに着いていき、ろくな事前説明もないままに任務が始まった。
ブルーム公国はワッフェ共和国の北にある小国である。徒歩では五日かかる距離であり、その道程も楽なものではない。
鬱蒼とした森では、何度もモンスターの襲撃を受けた。だが冒険者数十人が集まれば敵ではなかった。
次々と倒されていくモンスター。しかしジェイたちヴァルカンのメンバーは誰一人として武器を取り出すことすらない。
「ジェイ殿、サボるのもいいがあまり働かないようだと他の冒険者に目を付けられ、あの面倒な将軍にチクられるぞ」
行軍の最中にジェイたちを見つけ、お節介にもそう忠告するオリビア。彼女は率先して先陣を切りモンスター退治に勤しんでいた。
「モンスター撃ちは俺たちの仕事ではない。安心しろ。戦場に着けばこの中で一番の戦果を持って帰る」
「そうは言ってもな……」
ジェイは涼しい顔で水を一杯口に含んだ。
「いいじゃないですのオリビア。どうせ戦争では冒険者は最前線送りですわ」
「そうなのか?」
後からとは言っても、ちゃんとした作戦が伝えられるはずだとジェイは思っていた。
「ええ。軍の人からしたら指揮系統もない冒険者なんて、使いずらいことこの上ないでしょうからね。まとめて最初にぶつけるぐらいしか脳がないんですわ」
ソフィアは嘲笑しながら吐き捨てる。そう言い切れるのは彼女たちアイリス騎士団が亡国の軍属だったからであろう。
「確かに、数百人規模の傭兵団ならまだしもせいぜい四、五人の冒険者チームを集めて一律な運用も難しいか」
戦争に参加するのは冒険者本来の仕事ではない。ただ個の戦闘力が高い人物と言うだけで、軍の訓練を受けた兵士ではないのだ。
ジェイは忠告を聞き流し、冒険者たちの魔法やらの戦い方を観察するに留めた。
四日間の行軍を終え、ジェイたちは弾薬を温存しながらも無事戦場に到着することが出来た。
ジェイは偵察用の双眼鏡を取り出す。
「敵軍との距離敵も甲冑姿の騎兵に軽装の弓兵、前線にはフルプレートアーマーの盾兵……。予想通りだな」
ワッフェ共和国侵攻の報せを受け、ブルーム公国軍は国境線を越えた平原で待ち構えていた。
昨日の雨で地面はぬかるみ、日差しを反射してキラキラと輝いている。
「ジェイ様、敵軍の魔法使いにはお気をつけください。国有軍の魔法使いは、冒険者のそれとは練度が違います」
アインは他の冒険者から聞き出した情報を書き留めたメモ帳片手にそう言う。
「ああ。承知の上だ」
ジェイはこの一年と数ヶ月、この世界の戦争について入念な下調べを行っていた。それは戦争で商売をする基本の布石であった。
「やることは訓練と何も変わらない。──ツヴァイ、次は躊躇うなよ」
「は……」
「ドライ、フィーア。お前たちは先に射撃位置に付け。フィーア、お前は周囲の警戒も怠るなよ。少しでも違和感を覚えたら無線で報せろ」
「うん」
「うん」
ドライとフィーアは二人並んで森に消えていった。
「いいか冒険者共! この戦争は国家の興廃を左右する一戦である! 最後まで戦い国に貢献して見せろ!」
将軍が剣を抜いて掲げた。太陽に剣が輝くその光景を見て、冒険者たちも「おぉぉぉ!!!」と勇ましい声を上げながら敵軍の真正面に向かって一斉に走り出した。
ジェイはあまりの無謀さに、目眩がするほどの衝撃に襲われ、頭を抱えた。
アイリス騎士団の面々も、率先して最も危険な一番槍を担っているようである。
「彼らを助けますか?」
「いや、放っておけ。アイツらは好きでやってるんだ。俺たちも好きにやらせてもらう。──それでは各員戦闘準備! 行動開始だ!」
街には市民の姿は無く、大量の兵士と冒険者が集まっている。
物々しい雰囲気と漂う異様な空気の中、見知った顔がいくつか混じっていた。
「久しぶりだなジェイ殿」
「ああ」
「お噂はかねがね聞いておりますわ。……そっちが例の」
アイリス騎士団一行の目線の先には、厚手のコートに身を包んだ少年少女の姿があった。
もちろんそのコートの下は完全武装である。
「皆、あなたと同じ魔法を使うの……?」
「それは言えない。だが俺にも劣らない実力はあると保証しよう」
ジェイの言葉にミサキは怯えた表情で後退りした。そんな彼女の背中をソフィアが叩く。
「心強いことじゃないか。あの第二級冒険者ヴァルカンが味方だなんて」
「──さあ冒険者共! お喋りはその辺にしておけ! 将軍殿がいらっしゃるぞ!」
ジェイたちの会話を遮るように、高圧的な兵士が壇上で叫ぶ。兵士の横にはやけに華美な鎧に身を包んだ男がいた。
「聞け! 我こそはワッフェ共和国エイス公爵配下、ファイクリング将軍である!」
長々しい肩書きにうんざりしたジェイは、あの男を将軍と呼ぶことにした。
「此度、我が国は隣国ブルーム公国に攻め入ることと相成った! 戦争となれば全ての国民が協力するのは当然の義務である! 貴様ら金に卑しい冒険者も、報酬分は働いてもらうぞ!」
これから肩を並べて一緒に戦おうという相手に、蔑みと変わらない言葉をぶつける将軍にジェイは辟易した。
彼が貴族でこちらが平民だとしても、戦場では肩書きなどなんの意味もないのだ。そう思ったとしても口に出すことは無い。
「作戦は追って知らせる! 最初の貴様らの仕事は行軍の露払いだ! モンスターから軍を守れ!」
将軍の合図でワッフェ共和国軍がザッザッザッと行進を始めた。ガシャンガシャンという規則的な金属音が街をこだました。
冒険者たちも言われるがままに着いていき、ろくな事前説明もないままに任務が始まった。
ブルーム公国はワッフェ共和国の北にある小国である。徒歩では五日かかる距離であり、その道程も楽なものではない。
鬱蒼とした森では、何度もモンスターの襲撃を受けた。だが冒険者数十人が集まれば敵ではなかった。
次々と倒されていくモンスター。しかしジェイたちヴァルカンのメンバーは誰一人として武器を取り出すことすらない。
「ジェイ殿、サボるのもいいがあまり働かないようだと他の冒険者に目を付けられ、あの面倒な将軍にチクられるぞ」
行軍の最中にジェイたちを見つけ、お節介にもそう忠告するオリビア。彼女は率先して先陣を切りモンスター退治に勤しんでいた。
「モンスター撃ちは俺たちの仕事ではない。安心しろ。戦場に着けばこの中で一番の戦果を持って帰る」
「そうは言ってもな……」
ジェイは涼しい顔で水を一杯口に含んだ。
「いいじゃないですのオリビア。どうせ戦争では冒険者は最前線送りですわ」
「そうなのか?」
後からとは言っても、ちゃんとした作戦が伝えられるはずだとジェイは思っていた。
「ええ。軍の人からしたら指揮系統もない冒険者なんて、使いずらいことこの上ないでしょうからね。まとめて最初にぶつけるぐらいしか脳がないんですわ」
ソフィアは嘲笑しながら吐き捨てる。そう言い切れるのは彼女たちアイリス騎士団が亡国の軍属だったからであろう。
「確かに、数百人規模の傭兵団ならまだしもせいぜい四、五人の冒険者チームを集めて一律な運用も難しいか」
戦争に参加するのは冒険者本来の仕事ではない。ただ個の戦闘力が高い人物と言うだけで、軍の訓練を受けた兵士ではないのだ。
ジェイは忠告を聞き流し、冒険者たちの魔法やらの戦い方を観察するに留めた。
四日間の行軍を終え、ジェイたちは弾薬を温存しながらも無事戦場に到着することが出来た。
ジェイは偵察用の双眼鏡を取り出す。
「敵軍との距離敵も甲冑姿の騎兵に軽装の弓兵、前線にはフルプレートアーマーの盾兵……。予想通りだな」
ワッフェ共和国侵攻の報せを受け、ブルーム公国軍は国境線を越えた平原で待ち構えていた。
昨日の雨で地面はぬかるみ、日差しを反射してキラキラと輝いている。
「ジェイ様、敵軍の魔法使いにはお気をつけください。国有軍の魔法使いは、冒険者のそれとは練度が違います」
アインは他の冒険者から聞き出した情報を書き留めたメモ帳片手にそう言う。
「ああ。承知の上だ」
ジェイはこの一年と数ヶ月、この世界の戦争について入念な下調べを行っていた。それは戦争で商売をする基本の布石であった。
「やることは訓練と何も変わらない。──ツヴァイ、次は躊躇うなよ」
「は……」
「ドライ、フィーア。お前たちは先に射撃位置に付け。フィーア、お前は周囲の警戒も怠るなよ。少しでも違和感を覚えたら無線で報せろ」
「うん」
「うん」
ドライとフィーアは二人並んで森に消えていった。
「いいか冒険者共! この戦争は国家の興廃を左右する一戦である! 最後まで戦い国に貢献して見せろ!」
将軍が剣を抜いて掲げた。太陽に剣が輝くその光景を見て、冒険者たちも「おぉぉぉ!!!」と勇ましい声を上げながら敵軍の真正面に向かって一斉に走り出した。
ジェイはあまりの無謀さに、目眩がするほどの衝撃に襲われ、頭を抱えた。
アイリス騎士団の面々も、率先して最も危険な一番槍を担っているようである。
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