死の商人、異世界にて暗躍す〜裏切られた武器商人は奴隷少女と銃器の力で成り上がる〜

駄作ハル

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第三章 覇道、歩む仲間

第37話 帝国

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 タイヴァーの通行許可証により、一行は難なく帝国へ入国することができた。

 帝国領ヴィヒテヒに入ると、すぐに大量の帝国兵が彼らを出迎えた。

「積荷はこちらで預かる。今日は積み下ろしをするので、明朝ここへ荷馬車を取りに来るように」

「へい、確かに」

 タイヴァーは帝国兵から荷物の預かり証を渡される。

 このとことん書類でのやり取りに、ジェイは規則に徹底した帝国の姿勢を理解した。そしてそれは契約が全ての世界で生きる彼にとって好印象であった。

「じゃあタイヴァー、俺たちも明日まで自由行動をさせてもらう。せっかく来た帝国を見て回りたいからな」

「ああ。また明日ここで」

 ジェイたちはタイヴァーにそう言い残し、この場を去ろうとした。
 その時、一人の男がジェイの肩に手を置いた。

「──その黒い筒を仕舞ってくれないか。何となく嫌な気がする」

 ジェイは男に背を向けたまま、黙って手を掲げた。それを見てヴァルカンメンバーたちは一斉に銃を外套の下に隠す。

「突然失礼した。私はこのヴィヒテヒで警備隊長をしているズヒャハイトだ。私はただ、冒険者として帝国内を歩くなら常に冒険者の階級章を持ち歩くように、と一言伝えておこうと思ってな」

 スラリと伸びた長身に短く整えられた金髪。そして顎に刻まれた古傷とジェイにも似た冷徹な目付き。
 そのどれもが彼がただならぬ軍人であることを物語っていた。

「了解した」

 ジェイはポシェットからおもむろに冒険者であることを示すバッチを取り出し、外套の見やすい所へ取り付けた。

「ほう、二級冒険者か……。名前を聞いても?」

「俺たちは民間軍事会社ヴァルカンだ」

「民間……軍事会社……? はは! そうか、それは面白い取り組みだ。いつか世話になる時が来るかもしれないな」

「共和国、コンフリクトの森にいる。仕事があれば言ってくれ」

「ああ。覚えておこう」

 ズヒャハイトは漆黒の軍服を翻し、荷馬車を護衛する部下と共に去っていった。

「ジェイ様……」

「あれは中々の手練だな。銃を直感的に武器だと判断した。戦場でいくつもの死の危機を越えてきた証拠だ。街の警備隊長クラスでこの実力とあれば、軍の上層部はどれほどのものか想像もつかんな」

 銃と身体強化魔法という組み合わせでここまで無双してきたジェイたちだったが、ここに来てルーイッヒやズヒャハイトといった強者が次々と現れた。

「実力者と出会うということは、つまり俺たちもそれだけの実力を手にしたということだ。……今日はこれで任務完了とする。俺は情報収集へ出掛ける。先の戦いで負傷した者は治療を受けろ。他は各々自分が必要だと思う行動でいい。では解散!」

「了解!」







 ヴァルカンメンバーと別れたジェイが向かった先は、ヴィヒテヒの中心街にある街一番の酒場だった。

「おっ! ジェイの旦那も飲みますかい!」

 多くの人々で賑わう酒場では、タイヴァーが顔を真っ赤に染めながら酒を呷っていた。

「遊びに来たのではない。……まあ飲むがな」

 人が集まる場所に情報も集まる。この世界では酒場を中心に人の交流が行われていると、ジェイは冒険者ギルドで学んでいた。

 実際、酒場にはこっちの冒険者や、帝国の軍服を纏った人でごった返していた。

「タイヴァー、お前は帝国にもよく来るのか」

「仕事の関係で、全国各地へ行きますよ。それでも、例の仕事で帝国が一番来ますがね」

「そうか。では、帝国が研究している魔法とやらにも詳しかったりするか」

 ジェイにとっての不確定要素、それが魔法だった。
 いかなる困難な状況も乗り越えてきたジェイだったが、今回は防護魔法という存在ひとつでそれが覆された。

 彼を知り己を知れば百戦危うからず、の精神で、ジェイは魔法と戦争について調査を行っていた。

「いやあ、何せ自分が魔法を使えないもんで、そっちはさっぱりで……」

 いきなり躓いたジェイは大きな溜息を漏らした。

 しかし、そんな話を横で聞いていた帝国軍人が一人、割って入ってきた。

「よお、アンタ、帝国の軍に興味があんのか!?」

 軍人は酷く酔っており、タイヴァーにも負けないほど顔は真っ赤だった。仲間の軍人も酔いが回っており、この軍人を気にかけている人間はいなかった。

「まあな。今やこの大陸の人間なら、帝国の軍を知らない人はいないだろう」

「その通り! 我が帝国は世界一ィィィ! なのだ! ──だがお前のような冒険者からの仕官は受け入れていないのだ!」

「ほう、それは何故だ」

「冒険者は各地を旅する! それを受け入れるということはつまり容易に他国のスパイを招くことになってしまう! 帝国が研究する魔法兵器は帝都でも最高機密の案件だ!」

「帝都で研究をしているのだな……」

 ジェイは思わず笑みを零す。
 いくら強大な帝国と言えど、酔った下士官の口を封じることまではできない。どうせならこの男から引き出せるだけ引き出そうとジェイは策を練る。

「魔法自体は戦争で使っているのを知っているが、魔法兵器はまた別のものなのだな?」

「その通り! 我が帝国の技術力は世界一ィィィ! なのだ! 研究中の新たな魔法兵器が完成すれば、帝国は瞬く間にこの大陸を制するであろう!」

「なるほど、流石は帝国だ。だがそんな帝国の恩恵に与れないのは、冒険者の辛いところだな」

「何、案ずるな! お前のような者でも帝国に貢献することはできる!」

「それは耳寄りな情報だな」

「魔法兵器の研究には多くの在野の研究者が参加している! お前も帝都の魔導師協会に行けば研究に協力できるぞ! その功績が認められれば将来は安泰だ!」

「帝都の魔導師協会……。分かった。是非行ってみよう」

 次々に出てくる新情報に、ジェイはにやけ顔を堪えるのに必死だった。

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