死の商人、異世界にて暗躍す〜裏切られた武器商人は奴隷少女と銃器の力で成り上がる〜

駄作ハル

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第五章 覇道、穿つ真実

第55話 世界のカラクリ

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「──ということになった。構わないな?」

「ああ。国の安全さえ約束されれば、他のことは任せる」

 ズヒャハイトとの交渉を終えドワーフの国に戻ったジェイたちは、情報交換を兼ねハマーたちドワーフの代表団との会議を開いていた。

「それにしても、随分と私たちに有利な条件で帝国は諦めてくれましたね」

 アインはそう訝しむ。

「こちらの戦力がどれ程か分かっていなかったからな。スコープや無線機といったものを使って遠距離での作戦行動が可能な我々はさぞ恐ろしかっただろう。そしてドラゴンがやられたのも相当ショックだったか。……ともかく、戦略上はともかく戦術の上では我々の勝利には違いない」

「指揮官、口を挟んで申し訳ありませんが、我々の被害も相当です。二十四名が死亡、約七十名が負傷に数名の離反。加えて武器弾薬の消耗も激しいかと。これから我々は……」

「分かっているゼクス。これからヴァルカンには立て直しの時間が必要だ。帝国が撤退したのを確認した後、俺たちも拠点まで戻る。次の一手も考えている。安心しろ」

「は。愚見を失礼しました」

 初めての正規戦を経て、それぞれ思うところがあるのは確かだった。
 何より、初めてヴァルカン内から死者を出したという事実は重くジェイの肩にのしかかっている。

「ともかく、後は契約通りに進めよう。俺たちも撤退の準備をする。また後ほど連絡しよう。──じゃあなハマー」

 ジェイがそう言い残して会議室を去ろうとした時、ハマーが彼を呼び止めた。

「待ってくれ。大切な話がある」

「契約に不満か?」

「違う。個人的なことだ。……アンタについて」

「ほう?」

 ハマーの不審な態度に、ジェイは振り向かずに立ち止まった。

「二人で話がしたい。……いや、不安に思うならそっちだけ護衛を付けてもいい。ただし、信頼できる人だけだ」

「ではアインからアハトまで幹部を全員連れていくが、構わないな?」

「もちろんだ」

 何らかの企みかと疑ったジェイは、ドワーフのアハトも敢えて選出したが、ハマーは迷うことなくそれを受け入れた。

「……では話を聞こう」

「待て。場所を変えよう」

「ああ」






 ジェイたちはハマーに連れられ、以前来た鋼鉄の摩天楼にいた。
 首領の部屋は完全武装したアインたちヴァルカン幹部が神妙な面持ちで取り囲んでいる。

「それで、話とはなんだ。手短に頼むぞ」

「分かった。では単刀直入に聞く。……アンタ、異世界人だろう?」

「……ほう? 何故そう思う?」

 ジェイは眉ひとつ動かすことなくハマーに問う。

「ドラゴンすら屠る力、類まれなる知略、そしてこの先進的な技術の結晶の数々……。そのどれもが伝わる異世界人の特徴に似ている。逆に聞くが、アンタはどこの国出身だ? そこの特産品は? 気候は? 方言は? 言えるものなら言ってみろ」

「それで仮に俺がその異世界人だとして、お前は俺をどうするつもりだ?」

 ジェイはわざとらしく懐からGLOCK18を取り出しテーブルの上に置いた。
 これは宣戦布告に等しい行為だった。

 しかしハマーは怯むことなく言葉を続ける。

「別にどうもしない。伝承によれば異世界人はその力を持ってかつてこの世界を支配していた魔王を打ち倒したらしい。我々のこの技術も、帝国の戦闘技術も、別の異世界人が伝えたものだ」

「待て、異世界人というものはそんなポンポン現れるものなのか?」

 ジェイは思わず眉をひそめた。

「いや、数百年に一度だという。だがドワーフやエルフの寿命を考えれば、長命種にとってはそう珍しいものでもないがな」

「そうか、ならいい。……それにしても……なるほどな、転移者、あるいは転生者というのは実在する。そして前回のそいつらはドワーフの国や帝国に生まれたと」

 全てを理解した彼は髪をかき上げ、天井を仰いだ。

「それでこの歪な技術発展がもたらされたのだな。馬鹿な地球人だ。勇者気取りで帝国に味方したのかもしれない……。だが、自分の死後、この世ならざる人間によって力をつけ過ぎた帝国が周辺地域で暴れ回り、更なる悲劇が生まれることは想像出来なかったらしいな。他を圧倒する暴力で悲劇を作るなど、本質的には魔王などと同類だ」

 ジェイは吐き捨てるようにブツブツと独り言を呟いていた。

「それで、アンタはどうする? この力をどう使う? 富も名声も思うがままだ」

 ハマーは低く響くような声でそう凄んだ。

「ん? ああ……。別に俺はそういった名誉欲といった下らないものはない。俺は俺のやりたいようにやるだけだ。──最終目標については話せないがな」

「目指すべき信念があるんだな。ならいい。俺にアンタをどうこうするように言う権利はないからな。……まあ、契約通り今後ともドワーフの国をよしなに頼むぞ」

 ハマーは憮然とした表情を崩し、出口の方へ手を差し向ける。

「もちろんだ。こちらこそビジネスパートナーとしてよろしくな」

 ジェイは渋い顔を取り繕い、ハマーの部屋を後にした。







「──聞こえていたか」

 ハマーの部屋を出ると、ばつが悪そうなヴァルカンメンバーたちがジェイを待っていた。

「その……はい……。申し訳ございません」

「構わん。いずれ話そうと思っていたことだ」

 アインは目を伏せてそれ以上口を開かなかった。
 ツヴァイの無口はいつものか、それとも思うことがあるのか、右斜め下を見つめながらカチャカチャとAK-12をいじっている。

 そんな重たい沈黙を破ったのはフュンフだった。

「まあ、ボスが只者じゃないってのは勘づいてましたよ! それに、俺たちは生まれた国も育った国もバラバラの集まりです。そのトップがちょっと遠い世界から来た人だって、何の問題もありませんよ!」

「ジェイさまはこれからもジェイさまなんだよね? お姉ちゃん」
「うん。ジェイさまはジェイさまだよ」

「俺はこれからも指揮官の元で戦うつもりだ」

「そうですよ社長! ほら、辛気臭い顔してないで、仕事をしましょう!」

「ほれ、帰るぞ。武器の手入れもまだなんだ」

 ドライからアハトまでもがジェイのことを受け入れた。

 ツヴァイはどこか不満そうではあったが、それでもジェイの肩をぽすりと「……もっと早く話してくれても良かったんじゃないか?」と軽く殴っただけだった。

 そしてアイン。彼女だけには、出会った頃にその秘密を告げていた。
 気まぐれか、或いは信頼を得るための打算だったのか。

 いずれにせよ、アインにとってそれは、秘密を共有することによる強い絆であった。

 ジェイと彼女を結ぶそれが失われた今、彼女はただ黙ってジェイに抱きついた。
 今回ばかりはジェイも黙ってそれを受け入れる。

「……帰りましょうジェイ様。私たちの家へ」

 アインは彼の背中に呟く。

「ああ。そうだな」

 それから彼らはジェイの出自について話をすることはなく、普段と変わらぬ様子で拠点への帰路につくのだった。
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