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第五章 覇道、穿つ真実
第64話 王子
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「一応説明を聞こうかアルヌルフ」
「ええと……、こんなことは初めてなので私もちょっと……」
歯切れの悪い回答にツヴァイは舌打ちしながら、アルヌルフの頭に銃を突きつける。
「指揮官、ここは牽制射撃をしつつスモークを展開、そして速やかに撤退することを進言します」
「いや待て。ここで退けば絶対に二度目はないだろう……」
ジェイはどこまでも冷静にエルフの国を見渡す。
それからアルヌルフの顔を確認するが、少なくとも彼にはアルヌルフが嘘を吐いているようには見えなかった。
「ふむ……。アルヌルフ、ちょっとついてこい」
「え? ああ、はい」
「お前たちはそこで待機だ。絶対に撃つなよ」
「り、了解しました……」
ジェイは銃を降ろし、アルヌルフの腕を引いて歩み出た。
彼らがギュッギュッと草原を踏みしめる度、木の上のエルフたちは弓をギリリと振り絞る。
ジェイは高まる緊張もお構い無しにどんどんと前に進んだ。
そして遂に魔法装飾式陣に魔力が込められ、暗い木陰に色とりどりの怪しい光が朧気に浮かび上がる。
その様子を確認し、ジェイは大声を上げた。
「我々は民間軍事会社ヴァルカン! こちらのアルヌルフ殿を保護したところエルフの国に客人として招かれた! どなたかいらっしゃるだろうか! ──ほら、お前からも何か言ってくれ」
「ああ、はい。……誰かー! お茶でも出してくれー! 沢山いるから私一人では大変だー!」
「…………」
微妙に論旨がズレているアルヌルフにジェイはズッコケそうになったが、そんな思いとは裏腹に木の上から一人のエルフが現れた。
現れた、というのも、実際は巨大樹か、垂直落下してきて地面に叩きつけられる寸前に風の魔法で身体を浮かせ着地する、という技を使って突然ジェイたちの目の前に姿を現したのだった。
そんなエルフの男は、年齢による見た目の変化が著しく少ないエルフの中でも年配であることが伺えるような、深い皺と白髪を備えた人物だった。
その姿は、まるで物語に登場する神様とでも呼ぶべき威厳を兼ね備えている。
「さっきこの人間が言っていたことは本当かアルヌルフ」
「大体そんなところです、父さん」
アルヌルフはいつもの飄々とした美青年顔を崩し、少年かのように父親へ微笑む。
「父さん、だと?」
「ああそうじゃ。ワシは──いや、名前はどうでもいい。私はこのエルフの国の王ということになっている。王、国王、または長老。好きに呼べばいい」
「待て、アンタが王ならコイツは……」
「そうじゃ。このアルヌルフはエルフの王子じゃよ。全く、どうしてこうも世間知らずに育ってしまったのか……」
果たしてエルフに世間と呼べるものが存在するのかジェイはやや疑問に思ったが、アルヌルフが王子だと言う事実を知ったことで今までの彼の不思議な行動にいくらか合点がいった。
「そうか。それなら好都合だ。俺たちはエルフの代表と話がしたくてやって来た」
「面倒事を持ち込んで……。アルヌルフ、お前の弓の腕なら全員殺すこともできたはずじゃ。どうしてそんなに甘いんじゃ」
「父さん。食べもしない獲物を殺すのは駄目だと、父さんが教えてくださったのですよ。馬は食べられますが人間は食べられません」
柔らかな笑みを浮かべるアルヌルフの目は、まるで光差す湖のように純真に輝いていた。
「ワシが今全員この手で殺してもいい。だがアルヌルフを助けてもらった恩もある。……どれ、アルヌルフを早く解放してやってくれ。そうすれば恩に免じてお前たちを生きて返そう」
「断る」
「……何故だ」
長老の掴みどころのない濁った瞳が怪しく揺れる。
「お前の提案は嘘だからだ。アルヌルフを解放すれば俺たちはすぐに殺される。仮にも国の位置を知った俺たちを生かしておくメリットは無い」
「……だったら何故ここに来た。木々と暮らすエルフに命を賭ける価値などないはずじゃ。それこそ、かつて人間がやったようにエルフの女を売り払おうとでもしなければな……」
エルフの長老は憎しみの籠った目でジェイを睨んだ。
人間にとって神話の世界の出来事すら、エルフにとっては親世代の事実なのである。
「人を人攫いのように呼んではもらいたくないな。最初にも言ったが、我々は民間軍事会社。つまりはビジネスを行う商会のようなものだ。──改めて言おう、話がしたい。互いに利益のある取り引きがな」
「意地でも帰らぬつもりじゃな。どうやら一際厄介な人間が来てしまったようじゃ」
長老は髭をさすり、もう片方の弓を持つ手に力を込めた。
「ええと……、こんなことは初めてなので私もちょっと……」
歯切れの悪い回答にツヴァイは舌打ちしながら、アルヌルフの頭に銃を突きつける。
「指揮官、ここは牽制射撃をしつつスモークを展開、そして速やかに撤退することを進言します」
「いや待て。ここで退けば絶対に二度目はないだろう……」
ジェイはどこまでも冷静にエルフの国を見渡す。
それからアルヌルフの顔を確認するが、少なくとも彼にはアルヌルフが嘘を吐いているようには見えなかった。
「ふむ……。アルヌルフ、ちょっとついてこい」
「え? ああ、はい」
「お前たちはそこで待機だ。絶対に撃つなよ」
「り、了解しました……」
ジェイは銃を降ろし、アルヌルフの腕を引いて歩み出た。
彼らがギュッギュッと草原を踏みしめる度、木の上のエルフたちは弓をギリリと振り絞る。
ジェイは高まる緊張もお構い無しにどんどんと前に進んだ。
そして遂に魔法装飾式陣に魔力が込められ、暗い木陰に色とりどりの怪しい光が朧気に浮かび上がる。
その様子を確認し、ジェイは大声を上げた。
「我々は民間軍事会社ヴァルカン! こちらのアルヌルフ殿を保護したところエルフの国に客人として招かれた! どなたかいらっしゃるだろうか! ──ほら、お前からも何か言ってくれ」
「ああ、はい。……誰かー! お茶でも出してくれー! 沢山いるから私一人では大変だー!」
「…………」
微妙に論旨がズレているアルヌルフにジェイはズッコケそうになったが、そんな思いとは裏腹に木の上から一人のエルフが現れた。
現れた、というのも、実際は巨大樹か、垂直落下してきて地面に叩きつけられる寸前に風の魔法で身体を浮かせ着地する、という技を使って突然ジェイたちの目の前に姿を現したのだった。
そんなエルフの男は、年齢による見た目の変化が著しく少ないエルフの中でも年配であることが伺えるような、深い皺と白髪を備えた人物だった。
その姿は、まるで物語に登場する神様とでも呼ぶべき威厳を兼ね備えている。
「さっきこの人間が言っていたことは本当かアルヌルフ」
「大体そんなところです、父さん」
アルヌルフはいつもの飄々とした美青年顔を崩し、少年かのように父親へ微笑む。
「父さん、だと?」
「ああそうじゃ。ワシは──いや、名前はどうでもいい。私はこのエルフの国の王ということになっている。王、国王、または長老。好きに呼べばいい」
「待て、アンタが王ならコイツは……」
「そうじゃ。このアルヌルフはエルフの王子じゃよ。全く、どうしてこうも世間知らずに育ってしまったのか……」
果たしてエルフに世間と呼べるものが存在するのかジェイはやや疑問に思ったが、アルヌルフが王子だと言う事実を知ったことで今までの彼の不思議な行動にいくらか合点がいった。
「そうか。それなら好都合だ。俺たちはエルフの代表と話がしたくてやって来た」
「面倒事を持ち込んで……。アルヌルフ、お前の弓の腕なら全員殺すこともできたはずじゃ。どうしてそんなに甘いんじゃ」
「父さん。食べもしない獲物を殺すのは駄目だと、父さんが教えてくださったのですよ。馬は食べられますが人間は食べられません」
柔らかな笑みを浮かべるアルヌルフの目は、まるで光差す湖のように純真に輝いていた。
「ワシが今全員この手で殺してもいい。だがアルヌルフを助けてもらった恩もある。……どれ、アルヌルフを早く解放してやってくれ。そうすれば恩に免じてお前たちを生きて返そう」
「断る」
「……何故だ」
長老の掴みどころのない濁った瞳が怪しく揺れる。
「お前の提案は嘘だからだ。アルヌルフを解放すれば俺たちはすぐに殺される。仮にも国の位置を知った俺たちを生かしておくメリットは無い」
「……だったら何故ここに来た。木々と暮らすエルフに命を賭ける価値などないはずじゃ。それこそ、かつて人間がやったようにエルフの女を売り払おうとでもしなければな……」
エルフの長老は憎しみの籠った目でジェイを睨んだ。
人間にとって神話の世界の出来事すら、エルフにとっては親世代の事実なのである。
「人を人攫いのように呼んではもらいたくないな。最初にも言ったが、我々は民間軍事会社。つまりはビジネスを行う商会のようなものだ。──改めて言おう、話がしたい。互いに利益のある取り引きがな」
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