死の商人、異世界にて暗躍す〜裏切られた武器商人は奴隷少女と銃器の力で成り上がる〜

駄作ハル

文字の大きさ
73 / 93
第六章 覇道、混沌たる世界へ

第73話 誇りと命

しおりを挟む
「つまりこいつらはあの騎士の忠義を利用するためだけに生かしているということか……?」

 アルト侯爵は微笑を浮かべたまま何も答えようとしない。その沈黙は、この場において肯定と同意であった。

「忠臣の忠義をダシにして暮らす日々を情けないとは思わないのか!」

 ジェイは激昂しアードルフに掴みかかる。彼の服の襟元についていた宝石が外れバラバラと床に転がる。

「お、おい! どうしたんだ!?」

「ここで引導を渡してやろう」

「なっ!?」

 ジェイはアードルフに銃口を向ける。
 しかしここでずっと黙っていたアインが堪えきれずに嗚咽を漏らした。

 我に返ったジェイは一呼吸置き、この男に最後のチャンスを与えることにした。

「……選択肢をやろう。一つ、このまま偽の貴族として死ぬか。一つ、我がヴァルカンに加わり、奴隷が如く働くか。そのどちらかだ」

「奴隷だと……?」

「ああ。料理から便所掃除までなんでもやってもらおうか」

「馬鹿にするな! そんなこと貴族ができるか!」

 無謀にも拳を振り上げるアードルフを見て、ジェイは乱暴にらAR15の銃口を口へ押し込んだ。
 歯茎を切ったアードルフの口から血がダラダラと流れる。

「そんなことだと!? アインはそうやって生きてきたんだぞ! お前たちがもはや滅んだ国への忠義を理由に家臣に働かせ、悠々自適に暮らしている間、アインはそうやって一人で生きてきたんだぞ! 貴様らが貴族だかなんだか知らないが、人の親なら思うところの一つや二つもないのか!?」

「うぐ……」

「何故アインを探してやらなかった! この子が死にかけている間、お前たちは何をしていた!?」

「お願いもうやめて!」

 サリーシャがジェイの銃を掴みにかかる。しかしジェイは容赦なく彼女の頭を銃床で殴り飛ばした。

 サリーシャは脳震盪を起こして床に倒れ込む。
 その様子を見ていたアードルフは失禁しながら涙を流してジェイに頭を下げた。

「い、命たげばどうが……! どうがおねがいじまず……!」

「今までもそうやって生きてきたんだろうな」

 命乞いしか出来ないアードルフに失望したジェイはGLOCK18を取り出し彼の額に押し当てる。

「待ってください!」

 そんなジェイをアインが止めた。

「私が……! 私がやります!」

 アインはUSPコンパクトを構える。その照準は、確かにアードルフの頭を捉えていた。

「ごめんなさいお父さん」

「ぞんなアルージャ! やめなざい!」

「はあ……はあ……はあ……! ああぁぁぁ!!!!」

 アインは引き金を引いた。

 しかしその弾丸はアードルフではなく、書斎の壁を撃ち抜いた。

「ジェイ様……! どうして……!」

「もういい」

 ジェイは前が見えなくなっているアインの涙を拭い、彼女をソファに座らせた。






「本題に戻ろうアルト侯爵。時間稼ぎはこれで十分だな」

「はて、何のことやら……」

「お前には妻と、娘が二人、そして息子が三人いたはずだ。五百の兵をつけて地下道から逃がしたな?」

「…………」

「たった今街を包囲していた部隊から連絡が入った。護衛は全滅、親族は全員捕まえたとな」

「な……!」

 アルト侯爵は目を丸くし、力なく椅子に崩れ落ちた。

「覚悟の決まった男だ。どこか余裕そうな表情をして、自らを囮に使うとは。──さて、依頼内容にはお前の殺害が含まれている。息子たちも帝国に引き渡す約束だ」

「ああ、そうだろうな」

 アルト侯爵は無気力にそう言い放ち、天井を仰いだ。

「死は平等にやって来る。恨んでくれるなよ」

「ふっ、この死神が。……いや、お前は商人だったか」

「ああ。俺は死の商人だ」

 ジェイはアルト侯爵の胸に、GLOCK18を一発撃ち込んだ。

 そして彼が息絶えたのを確認し、そっと瞼を下ろしてやった。彼の口元には、微かに笑みが浮かんでいた。







「おい、来てくれ」

「は!」

 ジェイは部屋の護衛に当たっていた社員を呼び戻す。

「遺体は帝国に引き渡す。そっちの二人は拠点まで運べ」

「了解しました」

 社員はアードルフとサリーシャを引き連れ部屋を後にする。

「ジェイ様どうしてですか!? どうして私の両親を救うような真似を……!」

「勘違いするなアイン。俺はあのシュヴェールトという魔法騎士が気に入っただけだ。アルト侯爵と同じだ」

「そんな! 今さら私たちにとって防護魔法なんて──」

「それと、あの二人にはうちで下働きをしてもらう。その利用価値はある」

「え……」

 ジェイはそう言うが、わざわざ下働きに不慣れな貴族を使うなど、それがアインのためであることは明らかであった。

 両親は救う。そしてアインが経験したようなことを身をもって体感させる。それから改めて……
 不器用な、彼なりのアインたち家族への慈悲だった。

「帰るぞアイン。ツヴァイも心配だ」

「……そうですね。あの無鉄砲が死にかけてる様子をしっかり見てやらなきゃ」

 そう言うアインは、泣き腫らした目で、笑っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

最弱スキル《リサイクル》で世界を覆す ~クラス追放された俺は仲間と共に成り上がる~

KABU.
ファンタジー
平凡な高校生・篠原蓮は、クラスメイトと共に突如異世界へ召喚される。 女神から与えられた使命は「魔王討伐」。 しかし、蓮に与えられたスキルは――《リサイクル》。 戦闘にも回復にも使えない「ゴミスキル」と嘲笑され、勇者候補であるクラスメイトから追放されてしまう。 だが《リサイクル》には、誰も知らない世界の理を覆す秘密が隠されていた……。 獣人、エルフ、精霊など異種族の仲間を集め、蓮は虐げられた者たちと共に逆襲を開始する。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?

石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます! 主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。 黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。 そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。 全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。 その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。 この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。 貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...