死の商人、異世界にて暗躍す〜裏切られた武器商人は奴隷少女と銃器の力で成り上がる〜

駄作ハル

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第六章 覇道、混沌たる世界へ

第74話 昔話

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「社長、屋敷から金品・権利証の類は全て回収しました」

 社員たちが次々と屋敷から箱を抱えて出ていく中、一人の幹部社員が報告に来た。

「よし、街は速やかに帝国に引き渡そう。帝国にはこちらから連絡する。……くれぐれも他の民家や商店から収奪は行うなよ。この土地で商売がやりにくくなる」

「はい。部下たちに厳命します」

 そう言い残し、幹部社員は頭を下げて仕事に戻っていった。

「さて、俺たちも戻ろうか、アイン」

「はい、ジェイ様」

 ジェイとアインは馬に乗り、アルトの街を後にした。






「──貴族の生まれだったか」

「はい」

 ジェイとアインは馬上で二人、ポツリポツリと言葉を交わす。

「なら奴隷生活は尚更大変だっただろう」

「そうですね。でも、ああでもならなければ苦しむ人々の気持ちは一生分からなかったでしょうから」

「そんなことはない。お前は優しい子だ」

「いつまでも子ども扱いはやめてください。私ももう十八歳です」

「そうだったか」

 隠すものがなくなったアインは、自分のことについてもすんなり話す。

「昔はああやって私も生活していたんです。お金を稼ぐ大変さも、そしてその喜びも知りませんでした。ですので、ジェイ様には感謝しています。……流石に奴隷商にはそこまで思えませんけどね」

 アインはクスリと笑った。

「ところで、ジェイ様の過去について、お聞きしてもいいですか?」

「…………」

「私だけ本名から過去から何まで、一方的に知られているのは、なんかずるいじゃないですか」

「……まあ、それもそうだな」

 本当は誰にも言うつもりはなかったジェイだったが、もう何年も同じ時を過ごしたアインになら、話してもいいと思った。

「俺の世界については、お前にとっては異世界の話になる。わからない所も多いと思うが、雰囲気で何となく掴んでくれ」

「それも面白そうですね。はい、分かりました」

 アインが頷いたのを見てジェイは遠い目をしながら語り始める。

「俺は日系三世のアメリカ人、ジェームズ・リュウザキという。俺の祖父はアメリカに移住した日本人だった。慣れない土地で、祖父は苦労しながらもアメリカ人の妻──つまりは祖母と出会い、それなりに幸せにやっていたそうだ」

 分からない単語がいくつも出てきたが、アインはそれが国の名前だと察した。

「だがやがて日本とアメリカは戦争になる。すると当然アメリカ人の憎悪は日本人である祖父にも向いた。根強い人種差別に敵愾心を煽るプロパガンダ……。そういう時代だった。住む場所も、仕事も奪われ、祖父は窮地に追いやられた」

「…………」

「そんな中生まれたのが俺の父だった。父が学校に通う頃にはもう戦争は終わっていたが、差別は当然のように残っていた。……貧しい両親と周囲の厳しい差別の中、父が生きるために選んだ道は軍隊だった。そこでは安全な寝る場所も、食事もあった。そして何より、アメリカの為に命を懸けることでその存在価値を証明するしかなかった」

「ご立派ですね」

「そうだな。だが父は死んだ。ベトナム戦争で戦死したんだ。母のお腹に俺を遺してな」

「…………」

「俺はそんな祖父と父の話を聞かされて育った。だからこそ、愛国心だけが心の拠り所だった。父が示したように、行動することでのみ自分の居場所を見つけられると思ったからだ。……俺は十八歳になってすぐ海兵隊に入隊した。そこで死ぬほど努力し、とある特殊部隊のメンバーに選ばれた」

 ジェイが行う訓練の過酷さを知るアインは、彼の言う「努力」を想像するだけで身震いがした。

「俺の初めての大仕事は紛争地帯でのテロリストの抹殺だった。……だがそこで見たのは地元武装派たちによる虐殺や少年兵の利用、大国のエゴと利権、宗教勢力による略奪や暴力といった汚い戦争の裏面だった。俺は泣きそうだったよ。父はこんなものに命を懸けていたのか……ってな」

「…………」

「だから俺は決めた。祖父や父を苦しめた“戦争”というものに復讐すると。アメリカ……いや世界中の大国に、世界に、復讐してやるとな。苦しめられる側ではなく、苦しめる側に。搾取されない為には搾取する側に回らなければならない」

「…………」

「そのために俺は軍隊を抜け、任務上知り得た情報や人脈を使って民間軍事会社を興した。それが俺の選んだ道だった」

 ジェイの壮大な過去に、アインは言葉を失っていた。
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