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第七章 覇道、世界を統べる
第89話 武士道
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ジェイの合図と共に、75mm野戦砲による砲撃が開始した。
旧態依然とした密集隊形を取るヒノデ皇国軍は降り注ぐ砲弾の前に次々に撃破された……ように思われた。
「──防護魔法!? 何故あんなので75mm榴弾が防げる!」
「ヒノデ皇国の皇帝は全ての国民に対して強力なバフ魔法を使えるとの噂があります。もしかすると……」
「それは知っている! しかし帝国の精鋭部隊ですら防げない砲弾だぞ!?」
「軍とは違う戦いの経験から研鑽を積んできた冒険者なら或いは……」
「また冒険者が俺の前に立ちはだかるか!」
ジェイは等倍のレットドットサイトを取り外し、AR15に8倍スコープをマウントする。
「砲撃中止! 徹甲弾に詰め替えて直射だ!」
ジェイの指示で砲兵部隊は手を止め、皇国軍を包んでいた爆煙が消える。
砲撃が止んだ隙を逃さず、皇国軍は川を越えようと一気になだれ込んできた。
「──魔装済みの銃を持っている者は射撃を開始せよ!」
「は!」
流石の防護魔法と言えど魔装弾の前ではガラスのように打ち砕かれ、隊列を護っていた最前線に立つ魔法使いから順に倒れていった。
しかし十倍以上の物量はそう簡単に崩せるものではなく、徐々に皇国軍は川を渡りヴァルカンが展開する側の平原にたどり着いていた。
「砲撃で削れなかったのが痛いな。やむを得ない! 野戦砲は数発撃って威圧してから早めに撤退せよ! 後方の陣地で迎え撃つ!」
ジェイは入念な事前準備をもってしてこの戦いに臨んでおり、後方には無数の塹壕や軽トーチカを築いた防御陣地が構築されていた。
それもこれも、各地でインフラ整備を手掛けたヴァルカン社員によるもので、その防御力は折り紙付きであった。
「……敵の魔法が届く前にアレをやるぞ! 限界まで引き付ける!」
400m、300mと近付くにつれヴァルカン側の銃の有効射程に皇国軍が収まる。
銃撃が苛烈を極め、とてつもない数の犠牲者を出しながらも怯むことなく、味方の亡骸を踏み越え皇国軍は狂気の進撃を行う。
「──今だ爆破しろ!」
次の瞬間、皇国軍の足元が突如大爆発を起こした。
唸りを上げる大地はその上の人間を蟻のように天高く突き飛ばす。
地面に埋め込まれていた総量にして10tもの爆薬が東西500mに渡って爆発し、皇国軍の前線は完全に崩壊した。
「自分の真下まで防護魔法を展開する魔法使いはいない。この先も地雷は有効だな」
ジェイは軍用双眼鏡を片手にじっと戦況を分析する。
「……そんな分析はどうでもいい! ……防御役の魔法使いが揃って吹き飛んだ今、一気呵成に攻め立てるべきだ!」
「いや、俺たちも撤退する。最前の塹壕にも同じ仕掛けがある。そこまで引き付けて確実に数を減らしてから攻勢に出るほうがいい」
「……クソ!」
進言を却下されたツヴァイは、未だ土煙が収まらない皇国軍のいた方向へ向かって闇雲にAK-308を連射する。
射撃の手を止めたのは、魔装に魔力を持っていかれ息が切れた頃だった。
「満足したか? さあ、退くぞ」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
一回目の会戦ではヒノデ皇国が大損害を被り、体制を立て直すのには数日を要した。
その間にヴァルカン側は防御陣地を拡大し、後方から物資弾薬の補給を受けていた。
「……これは長期戦になりそうですね」
「いや、ヒノデ皇国は必ずすぐにまた来る」
ジェイは簡素な前線基地でアインの淹れたコーヒーを啜っていた。
「……? そう言い切れるのは何故でしょうか?」
「ヒノデ皇国の目的は、俺たちを打ち破り反ヴァルカンの機運を世界に示すことだ。だがこうしている間にも世界各国ではヴァルカンとの契約が進み、一国、また一国とヴァルカン側に回っている」
「そうですね」
「つまり皇国は一刻も早く俺たちを撃破しなければ将来の味方を失い手遅れになる。それにあんな雑な作戦で大量の冒険者を使い潰せば彼らの不満も抑えきれないものになるだろう。──次はヒノデ皇国の正規軍を前線に、近日中にやって来る」
「なるほど」
ジェイの予測通り、ヒノデ皇国は大敗から七日後に再び進軍を開始した。
「なんか変な感じだねお姉ちゃん」
「うん、嫌な感じがするね」
「……その気持ちは分かるぞ」
ヒノデ皇国の正規軍。それは異様な雰囲気を纏っていた。
全身を甲冑に身を包み、片手には刀を握っている。
それだけならただの時代遅れの軍装だが、何より目を引くのは空間が歪んで見えるほど濃密な防護魔法だった。
「あれが如何なる遠距離攻撃も許さず、確実に一騎打ちに持ち込んで倒すというヒノデ皇国お得意の極東騎士軍団とやらか……」
「あんなもの……!」
ツヴァイは命令を待たずにAK-308を射撃する。
7.62×51mmの魔装弾は防護魔法こそ貫通したものの、弾道が歪められ兵士に命中することは無かった。
「ドライ! 撃ってみろ」
「うん」
今まであらゆるものを撃ち抜いてきたバレットM82の12.7×99mm魔装弾。今回もその光の筋は防護魔法を一直線に貫通したものの、兵士の刀の一振によって弾丸は弾道を逸らされ、命中することなく地面へと叩きつけられた。
「ふはは!!! ……これは泥臭い戦いになりそうだな」
ジェイは猟奇的な笑みを浮かべながら、AR15のストックを短く折りたたみ、スリングを外した。
旧態依然とした密集隊形を取るヒノデ皇国軍は降り注ぐ砲弾の前に次々に撃破された……ように思われた。
「──防護魔法!? 何故あんなので75mm榴弾が防げる!」
「ヒノデ皇国の皇帝は全ての国民に対して強力なバフ魔法を使えるとの噂があります。もしかすると……」
「それは知っている! しかし帝国の精鋭部隊ですら防げない砲弾だぞ!?」
「軍とは違う戦いの経験から研鑽を積んできた冒険者なら或いは……」
「また冒険者が俺の前に立ちはだかるか!」
ジェイは等倍のレットドットサイトを取り外し、AR15に8倍スコープをマウントする。
「砲撃中止! 徹甲弾に詰め替えて直射だ!」
ジェイの指示で砲兵部隊は手を止め、皇国軍を包んでいた爆煙が消える。
砲撃が止んだ隙を逃さず、皇国軍は川を越えようと一気になだれ込んできた。
「──魔装済みの銃を持っている者は射撃を開始せよ!」
「は!」
流石の防護魔法と言えど魔装弾の前ではガラスのように打ち砕かれ、隊列を護っていた最前線に立つ魔法使いから順に倒れていった。
しかし十倍以上の物量はそう簡単に崩せるものではなく、徐々に皇国軍は川を渡りヴァルカンが展開する側の平原にたどり着いていた。
「砲撃で削れなかったのが痛いな。やむを得ない! 野戦砲は数発撃って威圧してから早めに撤退せよ! 後方の陣地で迎え撃つ!」
ジェイは入念な事前準備をもってしてこの戦いに臨んでおり、後方には無数の塹壕や軽トーチカを築いた防御陣地が構築されていた。
それもこれも、各地でインフラ整備を手掛けたヴァルカン社員によるもので、その防御力は折り紙付きであった。
「……敵の魔法が届く前にアレをやるぞ! 限界まで引き付ける!」
400m、300mと近付くにつれヴァルカン側の銃の有効射程に皇国軍が収まる。
銃撃が苛烈を極め、とてつもない数の犠牲者を出しながらも怯むことなく、味方の亡骸を踏み越え皇国軍は狂気の進撃を行う。
「──今だ爆破しろ!」
次の瞬間、皇国軍の足元が突如大爆発を起こした。
唸りを上げる大地はその上の人間を蟻のように天高く突き飛ばす。
地面に埋め込まれていた総量にして10tもの爆薬が東西500mに渡って爆発し、皇国軍の前線は完全に崩壊した。
「自分の真下まで防護魔法を展開する魔法使いはいない。この先も地雷は有効だな」
ジェイは軍用双眼鏡を片手にじっと戦況を分析する。
「……そんな分析はどうでもいい! ……防御役の魔法使いが揃って吹き飛んだ今、一気呵成に攻め立てるべきだ!」
「いや、俺たちも撤退する。最前の塹壕にも同じ仕掛けがある。そこまで引き付けて確実に数を減らしてから攻勢に出るほうがいい」
「……クソ!」
進言を却下されたツヴァイは、未だ土煙が収まらない皇国軍のいた方向へ向かって闇雲にAK-308を連射する。
射撃の手を止めたのは、魔装に魔力を持っていかれ息が切れた頃だった。
「満足したか? さあ、退くぞ」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
一回目の会戦ではヒノデ皇国が大損害を被り、体制を立て直すのには数日を要した。
その間にヴァルカン側は防御陣地を拡大し、後方から物資弾薬の補給を受けていた。
「……これは長期戦になりそうですね」
「いや、ヒノデ皇国は必ずすぐにまた来る」
ジェイは簡素な前線基地でアインの淹れたコーヒーを啜っていた。
「……? そう言い切れるのは何故でしょうか?」
「ヒノデ皇国の目的は、俺たちを打ち破り反ヴァルカンの機運を世界に示すことだ。だがこうしている間にも世界各国ではヴァルカンとの契約が進み、一国、また一国とヴァルカン側に回っている」
「そうですね」
「つまり皇国は一刻も早く俺たちを撃破しなければ将来の味方を失い手遅れになる。それにあんな雑な作戦で大量の冒険者を使い潰せば彼らの不満も抑えきれないものになるだろう。──次はヒノデ皇国の正規軍を前線に、近日中にやって来る」
「なるほど」
ジェイの予測通り、ヒノデ皇国は大敗から七日後に再び進軍を開始した。
「なんか変な感じだねお姉ちゃん」
「うん、嫌な感じがするね」
「……その気持ちは分かるぞ」
ヒノデ皇国の正規軍。それは異様な雰囲気を纏っていた。
全身を甲冑に身を包み、片手には刀を握っている。
それだけならただの時代遅れの軍装だが、何より目を引くのは空間が歪んで見えるほど濃密な防護魔法だった。
「あれが如何なる遠距離攻撃も許さず、確実に一騎打ちに持ち込んで倒すというヒノデ皇国お得意の極東騎士軍団とやらか……」
「あんなもの……!」
ツヴァイは命令を待たずにAK-308を射撃する。
7.62×51mmの魔装弾は防護魔法こそ貫通したものの、弾道が歪められ兵士に命中することは無かった。
「ドライ! 撃ってみろ」
「うん」
今まであらゆるものを撃ち抜いてきたバレットM82の12.7×99mm魔装弾。今回もその光の筋は防護魔法を一直線に貫通したものの、兵士の刀の一振によって弾丸は弾道を逸らされ、命中することなく地面へと叩きつけられた。
「ふはは!!! ……これは泥臭い戦いになりそうだな」
ジェイは猟奇的な笑みを浮かべながら、AR15のストックを短く折りたたみ、スリングを外した。
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