死の商人、異世界にて暗躍す〜裏切られた武器商人は奴隷少女と銃器の力で成り上がる〜

駄作ハル

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第七章 覇道、世界を統べる

第88話 抵抗

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「社長、定時報告です」

「始めろ」

「はい」

 確実に起きる武力闘争に備え、フュンフを共和国に、ゼクスを帝国に、アハトをドワーフの国に、ノインをエルフの国に派遣し、協力体制の足元を固めていた。

 対して他の小国はジェイたちが遊撃隊として全てを担うことになっていた。

「北方のノーザンランド公国やスウェン王国は隣国たる共和国の影響力を鑑み、ヴァルカンにも恭順する姿勢を示しました」

「あの寒冷な山岳地帯で戦争は御免だったからな。助かった」

「しかし西方のシャージカン市国やアータリー法国、ミザーリ聖王国などの宗教国家は団結し抵抗の兆しが見られます」

 ジェイはそれらの国の名前を聞き、顔を顰める、

「聖教会では基本的に如何なる戦争にも不介入の姿勢を取ってきた。聖戦と名付けた宗教戦争を除いてな。……社員の中から信心深い社員を中心に使節を派遣し支援を願い出よう。聖職者を殺す汚名は目標達成の足枷になる」

「はい。既に交渉は行っています。……実際の所、抵抗の姿勢だけ見せて優遇措置を得ようとしているのが目的かと思われます。集められる兵力も少なく、実際に武力での抵抗というよりも非協力的な行動をする等の消極的抵抗かと」

「そうか。それならいい。神に見放されたくはないからな」

 ジェイはかつての戦友のドッグタグをまとめたチェーンを握り締める。

「――南方の貧しい砂漠地帯の諸国は抵抗する力もないようです。独裁国が多く、権力者の権力誇示のための小規模なテロは予想されますが、組織的な反抗は見込めません」

「対テロ部隊は派遣済みだな。……爆弾もない彼らのテロなど所詮行商を襲う程度だろう。十分対処可能だ。──それよりも問題は東方だな」

「はい。極東のヒノデ皇国は近年急速な拡大製作を取っており、共和国や帝国に“追い付け追い越せ”を標語として、実際に急成長を遂げています」

 ヒノデ皇国。大陸の東端に位置する海洋国家であり、共和国などの騎士道とは異なった作法の戦い方を持つ。
 また天候を操作する魔法を扱い豊作を司る、万世一系の魔法使いを神同然に崇めている。

「共和国と帝国という二大国が従ったなら、むしろヒノデ皇国は抵抗するだろうな」

「そうなってしまいそうです……。ヒノデ皇国は現在国境沿いに石の防塁を築き、更に無数の騎士も配置しているとの事でした。また全世界の冒険者や在野の傭兵を集め、戦力を強化しているようです」

「交渉の余地もないか」

「はい。ヒノデ皇国内の商業拠点は全て略奪され、現在まで送った使者は誰一人帰ってきておりません」

「……フュンフたちは動かせない。俺が直々に指揮を執ろう。──中央での全体の統括はお前に任せる。補佐に好きなだけ幹部社員を使え」

「分かりました。社長の留守番は私がきちんと務めます」

 ズィーベンは未だに慣れない腰元のFN Five-seveNに手を当てる。

「──よし、行くぞアイン! すぐに支度をしろ! ツヴァイたちにも伝えろ! 俺たちの最後の戦いはヒノデ皇国だ!」

「はい!」






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆





 共和国、帝国、そしてヒノデ皇国の三者が接するダニプロ川を自然の国境とし、東アイオッパ平野は三者にとっての緩衝地帯となっていた。

 そんなアイオッパ平野に進駐したヒノデ皇国。人々の間では彼らは“最後の抵抗者”と呼ばれていた。
 これを鎮圧することが出来るか。まさに民間軍事会社ヴァルカンの真価を問う戦争が、全世界からの注目を浴びる中、幕を開けようとしていた。

「見渡す限りの平原ですね」

 アインは草原を吹き抜ける爽やかな風に乱れた短い白髪を押さえる。

「ああ。多少の起伏はあるが丘と呼ぶべきものばかりで、山など一つもない。無規則に乱立する木々や川の侵食作用で生み出された沼地など、手付かずの自然は政治的緊張の産物といえるな」

「やや戦いにくいですか」

「そうだな。少なくともヴァルカンでは極東のこの地域までインフラ整備が間に合わなかった。この戦争もそうしたことが遠因となっているのかもしれない」

「関係ありません。ジェイ様の道を阻む者に、それを正当化する理由など存在し得ないのですから」

「…………」

 ジェイは黙って無線機を持つ。

 ヴァルカン陣営は正規軍が1500のみ。
 対してヒノデ皇国は正規軍5000に加え、冒険者や傭兵など合わせて2万弱。

 しかし兵数など紙上の文字に過ぎず、精鋭たるヴァルカンにとって脅威ですらない。ジェイを含め、ここにいる全てのヴァルカン社員がそう信じていた。

「──ヒノデ皇国の諸君! 我々は民間軍事会社ヴァルカン! 諸君らが軍を展開するアイオッパ平野は政治的空白地帯であり、何人たりとも自らの勢力下に加えることは許されない! このような武力による現状変更は、我々の平和的統治下においては到底認められるものではない!」

 無線を通じ、可搬式の巨大プロパガンダ用スピーカーから爆音でジェイによる警告がヒノデ皇国に伝えられる。

「ヒノデ皇国は即時撤退し我々との契約を締結せよ! 抵抗のある場合は軍事力の行使も厭わない! 繰り返す、我々は軍事力の行使も厭わない!」

 ジェイの警告など聞き入れる素振りもなく、ヒノデ皇国は一歩一歩兵を勧め、その支配領域の拡大を続けている。

「是非もなし、か……。仕方がない。始めようか」
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