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第二章
95話 再会と
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「レオ様!お久しぶりです!ようこそお帰りになられました!」
「ありがとう。──約束の日時と異なり申し訳ないが、すぐに門を開けてくれ。そして父と母に、私が来たことを」
「は!了解致しました!」
数ヶ月ぶりに訪れたウィルフリードは、やはり大きく感じた。
私がファリア領主となって二年。ウィルフリードに帰ってきたのはこれで三度目だ。
故郷を思い出す間もないぐらい、忙しい日々が続いていた。
門はすぐに開いた。
ヘクセルのような幻影魔法のプロフェッショナルなら、いとも簡単にこの顔パスをかいくぐれるので、もうちょっとどうにかした方が良いと思う。
「やっぱり活気が違ェな!」
「あぁ。……戦争を前にこれだけ民が落ち着いていつも通り行動できるというのは、流石ウィルフリードと言ったところだな」
「懐かしい方々にお会いできるのが待ち遠しいです!」
「私もアルガーと会うのは二年ぶりになる。いつも入れ違いでな」
戦いのために、帝国最強と呼ばれる男たちが今この場に終結しているのだ。
「どうぞこちらへ!」
私は先導する兵士の歩幅に合わせ、ゆっくりと馬を歩かせる。
「……っ!レオ様だ!」
「レオ様がいらしたぞ!」
「レオ様万歳!ウィルフリード万歳!」
私は沸き起こる歓声に、片手を上げ応じた。
「ああ……」
「おいレオ、そんな気の抜けた返事をするな」
「緊張してるのさ。……多分な」
大なり小なり、私もファリア領主という責任を背負ってここまで来ている。
今から会う父は、戦場では対等な立場となる。
盗賊との小競り合いなどとは比べようもない、本物の戦争で父と戦場を共にするのは初めてだ。
「英雄の子レオ=ウィルフリード」
そう評される私の真価が、これから試されようとしているのだ。
期待の大きさは時に、そのまま重圧となる。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「懐かしい景色だな」
「ああ。歳三は本当に二年ぶりだもんな」
見えてきた、私が生まれ育った屋敷。そしてその先にある兵舎。
兵士たちは忙しなく辺りを走り回り、戦争への準備に精を出している。
次々と運び込まれる荷馬車は、ウィルフリード一万の兵を養う食料や大量の武器だろう。
「──全軍止まれ」
私が手を横に突き出し、指示を出すと後続の騎馬兵が一斉に馬の足を止める。蹄鉄が地面を蹴る音が同時に消えた。
この統率力はウィルフリードにも負けないだろう。
二年間の成果がここにも出ているのだ。
「タリオ!私と歳三は屋敷に向かう。お前は兵を連れ兵舎の方へ向かってくれ。積み込みや装備の点検を手伝うんだ。……その後は各自、自由行動で構わない」
「は!ありがとうございます!」
「各員、以後はタリオ、そしてウィルフリード軍副将であるアルガーの指示に従うように。……進め!」
私と歳三だけ軍列から外れ、タリオの先導するファリア軍を横目に眺めた。
「さて、早く中に入ろう」
「あァ。待ちきれねェぜ」
私たちは馬から降りて屋敷の門を通る。
「お待ちしておりました!馬をお預かりします」
「頼んだ」
私たちが足を踏み入れると、すぐに門番が出てきた。
そして、その奥には懐かしい面々が……。
「お帰りなさいませ、レオ様」
「ただいま、マリエッタ」
普段はクールなマリエッタも、心なしか頬を綻ばせているように見えた。
「レオ!お帰りなさい」
「ただいま戻りました、母上」
私は母と抱擁を交わした。
以前は私の顔がちょうど母の胸辺りだったが、今では肩の上程だ。来年には母の身長を越すかもしれない。
「待っていたぞ!……いや、予定より随分早かったな!レオ、歳三!」
「お待たせしました父上」
「久方ぶりだなウルツ!腕はなまってないだろうなァ?」
私と歳三は、父と固い握手を交わす。
懐かしいゴツゴツしたその手には、最近できたようなマメがいくつもあった。
父もこの戦争に備え、訓練に一層精を出しているのだろう。
「外で話すのもあれだ。中に入ってくれ」
父はそう言いながら両開きの玄関扉を開ける。
もう片方はマリエッタが開けた。
目の前に広がる、懐かしい我が家に僅かな寂しさを覚えた。
戦争に行けば、生きてここに帰って来れるなどという保証はない。
「おいウルツ、準備運動は済んでるか?」
歳三がニヤリとしながらそう呟く。
父の扉を開ける手が止まる。
「重要な話は孔明なしにはできない。そうだろ、レオ?」
「いや、まぁ、そうだが……」
馬車に乗ってくるとなると、もう二、三時間はかかるだろう。
「怪我でもしたら大事です。おやめ下さい」
すかさずマリエッタが止めに入る。
しかし母が何も言わないのは、この男たちにその言葉は意味を成さないと知っているからだろう。幼子を見守るような微笑みすら浮かべている。
「──裏庭に来い歳三!」
「よし来た!」
二人の目は輝いていた。
武の頂きに達した男たちはみんなこうなるのだろうか。
……少なくとも私がこうなることはないだろう。
「さぁレオ、私たちは中でお茶でもしましょう。最近あった話を聞かせて?」
「はい母上!」
私は空気を読んでササッと出てきた女中に刀と外套を渡し、母の背中を追った。
歳三と父はバチバチと火花を散らしながら裏へと回って行く。
私と女中たちは母に付き従い屋敷の中へと入る。心配そうに眺めるマリエッタも、小さくため息を吐いて諦めたような顔で、結局屋敷へと入って来た。
「ありがとう。──約束の日時と異なり申し訳ないが、すぐに門を開けてくれ。そして父と母に、私が来たことを」
「は!了解致しました!」
数ヶ月ぶりに訪れたウィルフリードは、やはり大きく感じた。
私がファリア領主となって二年。ウィルフリードに帰ってきたのはこれで三度目だ。
故郷を思い出す間もないぐらい、忙しい日々が続いていた。
門はすぐに開いた。
ヘクセルのような幻影魔法のプロフェッショナルなら、いとも簡単にこの顔パスをかいくぐれるので、もうちょっとどうにかした方が良いと思う。
「やっぱり活気が違ェな!」
「あぁ。……戦争を前にこれだけ民が落ち着いていつも通り行動できるというのは、流石ウィルフリードと言ったところだな」
「懐かしい方々にお会いできるのが待ち遠しいです!」
「私もアルガーと会うのは二年ぶりになる。いつも入れ違いでな」
戦いのために、帝国最強と呼ばれる男たちが今この場に終結しているのだ。
「どうぞこちらへ!」
私は先導する兵士の歩幅に合わせ、ゆっくりと馬を歩かせる。
「……っ!レオ様だ!」
「レオ様がいらしたぞ!」
「レオ様万歳!ウィルフリード万歳!」
私は沸き起こる歓声に、片手を上げ応じた。
「ああ……」
「おいレオ、そんな気の抜けた返事をするな」
「緊張してるのさ。……多分な」
大なり小なり、私もファリア領主という責任を背負ってここまで来ている。
今から会う父は、戦場では対等な立場となる。
盗賊との小競り合いなどとは比べようもない、本物の戦争で父と戦場を共にするのは初めてだ。
「英雄の子レオ=ウィルフリード」
そう評される私の真価が、これから試されようとしているのだ。
期待の大きさは時に、そのまま重圧となる。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「懐かしい景色だな」
「ああ。歳三は本当に二年ぶりだもんな」
見えてきた、私が生まれ育った屋敷。そしてその先にある兵舎。
兵士たちは忙しなく辺りを走り回り、戦争への準備に精を出している。
次々と運び込まれる荷馬車は、ウィルフリード一万の兵を養う食料や大量の武器だろう。
「──全軍止まれ」
私が手を横に突き出し、指示を出すと後続の騎馬兵が一斉に馬の足を止める。蹄鉄が地面を蹴る音が同時に消えた。
この統率力はウィルフリードにも負けないだろう。
二年間の成果がここにも出ているのだ。
「タリオ!私と歳三は屋敷に向かう。お前は兵を連れ兵舎の方へ向かってくれ。積み込みや装備の点検を手伝うんだ。……その後は各自、自由行動で構わない」
「は!ありがとうございます!」
「各員、以後はタリオ、そしてウィルフリード軍副将であるアルガーの指示に従うように。……進め!」
私と歳三だけ軍列から外れ、タリオの先導するファリア軍を横目に眺めた。
「さて、早く中に入ろう」
「あァ。待ちきれねェぜ」
私たちは馬から降りて屋敷の門を通る。
「お待ちしておりました!馬をお預かりします」
「頼んだ」
私たちが足を踏み入れると、すぐに門番が出てきた。
そして、その奥には懐かしい面々が……。
「お帰りなさいませ、レオ様」
「ただいま、マリエッタ」
普段はクールなマリエッタも、心なしか頬を綻ばせているように見えた。
「レオ!お帰りなさい」
「ただいま戻りました、母上」
私は母と抱擁を交わした。
以前は私の顔がちょうど母の胸辺りだったが、今では肩の上程だ。来年には母の身長を越すかもしれない。
「待っていたぞ!……いや、予定より随分早かったな!レオ、歳三!」
「お待たせしました父上」
「久方ぶりだなウルツ!腕はなまってないだろうなァ?」
私と歳三は、父と固い握手を交わす。
懐かしいゴツゴツしたその手には、最近できたようなマメがいくつもあった。
父もこの戦争に備え、訓練に一層精を出しているのだろう。
「外で話すのもあれだ。中に入ってくれ」
父はそう言いながら両開きの玄関扉を開ける。
もう片方はマリエッタが開けた。
目の前に広がる、懐かしい我が家に僅かな寂しさを覚えた。
戦争に行けば、生きてここに帰って来れるなどという保証はない。
「おいウルツ、準備運動は済んでるか?」
歳三がニヤリとしながらそう呟く。
父の扉を開ける手が止まる。
「重要な話は孔明なしにはできない。そうだろ、レオ?」
「いや、まぁ、そうだが……」
馬車に乗ってくるとなると、もう二、三時間はかかるだろう。
「怪我でもしたら大事です。おやめ下さい」
すかさずマリエッタが止めに入る。
しかし母が何も言わないのは、この男たちにその言葉は意味を成さないと知っているからだろう。幼子を見守るような微笑みすら浮かべている。
「──裏庭に来い歳三!」
「よし来た!」
二人の目は輝いていた。
武の頂きに達した男たちはみんなこうなるのだろうか。
……少なくとも私がこうなることはないだろう。
「さぁレオ、私たちは中でお茶でもしましょう。最近あった話を聞かせて?」
「はい母上!」
私は空気を読んでササッと出てきた女中に刀と外套を渡し、母の背中を追った。
歳三と父はバチバチと火花を散らしながら裏へと回って行く。
私と女中たちは母に付き従い屋敷の中へと入る。心配そうに眺めるマリエッタも、小さくため息を吐いて諦めたような顔で、結局屋敷へと入って来た。
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