英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル

文字の大きさ
128 / 262
第二章

126話 伝説は現実に

しおりを挟む
「──え、えっと、……質問の意図が分からないな…………?そ、その“転生者”ってのは一体なんだ……?」

「お前は嘘が下手だな。……いや、正直なのはいいことだ。別にこのことで脅したり殺したりするって訳じゃない。レオ、そなた自身の口から聞きたいのだ」

 このまま逃げられそうにもない。私は観念し、誰にも聞かれないように小声で真実を告げる。

「…………そうだ」

 首筋を流れる汗が背中を伝い、悪寒が走った。

「そうか。周囲にそのことは隠しているのだな?それなら我が口から漏らすこともしない。確認ができて良かった」

 真意の見えないハオランの独り言に、私は探りを入れる。

「何故転生者の存在を知っている?」

 妖狐族に竜人族と、転生者の存在を知る人物が連日私の前に現れ生きた心地がしない。

「ドラゴンは数千年を生きる生物。それに仕える我々竜人もその知識を一部だけだが与えられている」

「この魔石……、いや『暴食龍の魔眼』と呼ばれる宝珠の話からどうして転生者の話になるんだ?」

「あぁいや、その前に一応もうひとつ確認させてくれ。そなたは魔力を集めるためにこの戦争を起こした訳ではないだろう?……言い換えれば、手っ取り早く魔力を集める手段として戦争という虐殺行為を招く工作を行ったことはあるか?」

「そんなことするはずもない!」

 それは私が望む世界の対極にある、最も忌み嫌う行為だ。

「そうだろうな。ならよい。……端的に言えば、転生者は強力なスキルを持つが魔力を持たない。故にこの宝珠を欲しがる」

「つまり、本来転生者は本来スキルが使える状態にないのか……?」

「ああ。だから転生者自体は居てもすぐに死んでいくのだ。それかひっそりと一般人としてこの世界での生を終えるかだな」

 正直、この世界で命は安い。特に魔力や特別なスキルを持たない人間は相対的に価値が下がる。
 アルガーのように心身を鍛え上げ身体能力の向上系スキルを後天的に身に付けた人物も例外的に存在する。そうすれば理論上は誰でも活躍、ないしは自分の身を守るだけの力を手に入れられる。

 だが大抵は魔物やモンスターに怯えながら小さな村で暮らすか、どこかの国の都市の庇護を受け、対価として戦争時に徴兵の義務を負うか。そのどちらかになるのだ。

「まぁ転生者など本来世界の秩序を乱す面倒な存在だ。放っておけ」

「しかし……」

「そなたの同族を思う気持ちは分かる。しかし様々な考えを持つ人間が居る以上、強大な力を使ってこの世界を危機に陥れる可能性もあるのだ」

 味方に引き入れられれば良い。だが、仮に牙を向いてきたら誰が止められるのか。
 いや既に剣を研ぎ澄ませ、“その時”を待っている人物がいるのかもしれない。

「そなたはその力を争いのない平和な世界を為すために使おうとしている。ならば我らとしても殺して奪おうとは思わんよ」

 ここで私はある不安が過ぎった。

「この宝珠の真の力を知る者はどれ程いる?」

 真の力を知る者。つまり私を殺してでも『暴食龍の邪眼』を奪おうと考える人物もいるはずだ。

「さあどうだろうか……。だが少し宝石や魔石といった類に詳しい人間なら知っていそうだとは思うが。……そういえば、『邪眼』と言うだけあって宝珠は眼と同じくこの世界に二つ存在するのだが、もう一つは何処にあるのだろうな」

 ハオランは露骨に話を逸らす。

 私の脳裏には幾つもの疑惑が浮かび上がってきた。
 母はどこでそんな物を手に入れたのか?真の力を知っていたのか?
 ヘクセルも私のブレスレットを見て驚いたような反応をしていた。ヘクセルも知る者なのか?

 そして私は知る者の存在に怯えながらこのブレスレットと共に生きていかなければならない。
 竜人たちだって今こそハオランは殺さないと言っているが、私がこの世界に不要である、敵対的であると判断されればいつ殺しにかかってくるかも分からない。

 私は常に護衛として歳三を近くにおいておこうと決心した。

「なに、そんなに思い詰めることでもない。そなたはこれまで通り、望む世界を目指して生きていけばよいのだ」

「……期待に応えられるよう頑張るよ」

「ああそれと、我々竜人もそなたに協力しよう。我が同族らが平穏に暮らすためには、そなたの望む平和な世界が一番だと思うからな」

 竜人に囲まれて暮らせば、いつでも私は殺されかねない。だが断って敵対的だと見なされればすぐにでも首が飛ぶかもしれない。

「そうか、それは心強いな……。──と、まだ仕事が残っているのでこの辺で私は本陣に戻らせてもらうよ。……また今度話そう、ハオラン」

 私は度重なる心労によってふらつきそうな足取りで、そっとその場を後にした。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

スーパー忍者・タカシの大冒険

Selfish
ファンタジー
時は現代。ある日、タカシはいつものように学校から帰る途中、目に見えない奇妙な光に包まれた。そして、彼の手の中に一通の封筒が現れる。それは、赤い文字で「スーパー忍者・タカシ様へ」と書かれたものだった。タカシはその手紙を開けると、そこに書かれた内容はこうだった。

処理中です...