英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル

文字の大きさ
127 / 262
第二章

125話 説明会

しおりを挟む
 調印が済んだ条約の用紙はウィリーが回収し、彼の部下や隷下の帝国軍による厚い護衛の元、皇帝のいる皇都へ向けて出発した。

 その後会場は中央の机が撤去され、いくつかの小さなテーブルと料理が用意された。

 当初は親睦会を予定していたため、貴族用に運ばれていた比較的良い食材と酒が振る舞われている。
 しかし誰も料理や酒はそっちのけに、帝国貴族は自らの領地の魅力を売り込み、亜人・獣人たちはその話を真剣に聞き入った。

「──という訳です。……私の領地はこのような条件での受け入れを予定していますが、是非他の領地とも比較して皆さんがより良いと思う方を選んでください」

「いや俺たちはもうレオさんの所しか考えられねぇ!」

「こ、困ったな……」

 先ほどの演説が効いたのか、私の元には多くの族長が詰めかけた。
 しかしこれでは平等な競争とはいえず、後から他の貴族らとの摩擦が生じかねない。

「レオ君、この場で私たちで全てを決めるのは無理だよ。はやり文官や本陣に残る他の貴族たちにも声を掛けないか?」

「ミドラ殿のご意見よく分かります。ですが私としてはそのような詳細は決定は、正式な書類を通して全ての貴族と全ての族長らのやり取りをと考えていたのですが……」

「いや、今のうちにできるだけやっておこう。その方が彼らにとっても良いだろう。そして私たちにとっても・・・・・・・・。「善は急げ」とは、言い得て妙な先ほどの君の言葉だったな」

 デアーグは不敵な笑みを浮かべる。

 つまりは利権の独占ということだ。また派閥政治の話になって面倒だが、戦地にいる実力派貴族らだけで先にの亜人・獣人らとの協定を結んでしまおうというのだ。

 私は父の方を見る。
 獰猛な種族の獣人らの相手をしていた父は私の視線に気付くと、何かを察したらしくただ黙って頷いた。

 私は政治に疎い。更には歳もまだ若く所詮地方領主であり権力などほとんどない。中央への影響力など皆無だ。
 むしろヘクセルの引き抜きや、未成年でありながら領主就任の特例など、中央での印象はかなり悪いだろう。
 ヴァルターの私を見る冷たい目が懐かしい。

「……そうですね。それでは兵士を向かわせて可能な限りの貴族を集めましょう……」

「──君!そう、そこの君だ!至急本陣に戻って他の貴族や文官らもこっちに来るように呼び掛けてきてくれ!──そして君たちは椅子や机を大量に運んできてくれるか。この会場だけでは足りなくなる」

「り、了解しました!」
「すぐに用意します!」

 ミドラは天幕の入口から顔を出し外の兵士に指示を飛ばす。

「できれば亜人・獣人たちにも集められるだけ集まって欲しいのだがな……?」

「そ、そうですね……。──ハオラン、呼んできて貰えないか?」

蜥蜴人リザードマンと我々が同じ席に着くというのか?」

 ハオランは露骨に嫌な顔をする。

「何か不満があれば他の場所や機会を設けよう。私はそんな性急に全てを今すぐ決めるつもりはない」

「それがいい。……戻ったら二人だけで話がしたい」

「……?わ、分かった」

 私は一抹の不安を抱えながらも肯定の意を示す。

「では他の種族の族長らも呼んでくるよう、我が同族に頼んでこよう」

 ハオランは満足そうな顔で私の肩を叩き飛び立っていった。










 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆



 ハオランが戻ってくるのとほぼ同時に、本陣で待機していた貴族らと大量の文官が到着した。その中には私の文官として孔明の姿があった。

 戦地にいる文官は行政事務を行うような人物ではなく、兵糧やその他物資などの割り振りや戦争計画を立てる参謀がほとんどだ。
 だが幸いにも(?)孔明は歴史上でも有数の政治家である。素人の私は潔く身を引いて全て引き継いで貰おう。

「孔明、話は既に聞いているかもしれないが、計画通りに条約が成立した。私は席を外すので後の詳しいことは一任する」

「ふふ、我が君の躍進に我が身も震える程の喜びを感じております。……必ずやご期待に応える働きを見せましょう」

 孔明は袖の中で腕を組み、皆の前で大袈裟に深々と頭を下げた。

「それでは皆さん、私の代理としてこの孔明という男を置いていきます。今後の詳細は彼から説明を聞いてください」

 私はそう言い残し、ハオランの待つ離れた木陰へと向かった。




「すまない待たせた」

「いや、よい」

 ハオランは腕を組み、大木に背を預けながら目を瞑って私のことを待っていた。

「それで、話ってなんだ?」

「──そのブレスレット、……いや、その宝珠はどこで手に入れた?」

「ん……?」

 ハオランに言われ、私は袖を捲りブレスレットを確認する。
 中央に埋め込まれた魔石は淡い光を放ちながら輝いていた。どうやら次の『英雄召喚』に必要な魔力がいつの間にか貯まっていたらしい。

「あぁ、これは私が十歳の誕生日に母からプレゼントされたものだが──」

「それの力を知っているのか」

 ハオランは私の言葉を遮り、その巨体で私に迫ってくる。

「ど、どうしたハオラン……?少し怖いぞ……」

「いいから黙って答えろ」

 威圧的なその力の籠った声に、私はたじろいだ。額にはじんわりと不快な汗が浮かぶ。

「こ、これは魔力を貯める特別な魔石なんだ……。詳しくは言えないんだが私のスキルを使うには膨大な魔力が必要なんだが、私には魔力がない。だからこの魔石を身につけている必要があるんだ……」

「放っておけば魔力が勝手に貯まる魔石だと思っているのか?」

「……?ち、違うのか……?」

「…………。そうか。知らないんだな……」

 ハオランはため息を吐くと、重たそうな口を開いた。

「その宝珠は『暴食龍の邪眼』。死するものの体から零れ落ちる魔素を吸収し所持者に与えるのだ」

 ゲームでいう経験値システムの具現化のような感じか……?

「そしてそれは例え味方を殺しても魔素を集め魔力として所持者に渡す」

「味方を殺しても……?」

「ああ。だからこれを持った者は敵味方問わずに虐殺を行い、大魔法を発動させる生贄とするのだ。だからその宝珠は持つものを狂わせる、呪いの装備として竜人の間では言い伝えられている」

 確か伝説や御伽噺の中で、ドラゴンは自らの命を削りながら『原始の魔法』とやらの強大な大魔法を使うと聞いたことがあるが……。

「しかしこれがなければ私は能力を使えない……」

「……レオ、お前は転生者ではないか」

 衝撃的な詰問に、私の心臓が一瞬止まりかけるほどびくりと唸りをあげた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~

名無し
ファンタジー
 主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【最強モブの努力無双】~ゲームで名前も登場しないようなモブに転生したオレ、一途な努力とゲーム知識で最強になる~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
アベル・ヴィアラットは、五歳の時、ベッドから転げ落ちてその拍子に前世の記憶を思い出した。 大人気ゲーム『ヒーローズ・ジャーニー』の世界に転生したアベルは、ゲームの知識を使って全男の子の憧れである“最強”になることを決意する。 そのために努力を続け、順調に強くなっていくアベル。 しかしこの世界にはゲームには無かった知識ばかり。 戦闘もただスキルをブッパすればいいだけのゲームとはまったく違っていた。 「面白いじゃん?」 アベルはめげることなく、辺境最強の父と優しい母に見守られてすくすくと成長していくのだった。

処理中です...