【改訂版】異世界転移で宇宙戦争~僕の専用艦は艦隊旗艦とは名ばかりの単艦行動(ぼっち)だった~

北京犬(英)

文字の大きさ
75 / 199
アイドル編

072 アイドル編48 遠征5

しおりを挟む
 僕が貨物船を調べさせて欲しいと言うと、ボルド伯爵は一瞬怯んだような表情を浮かべたが、何事も無かったかのように執事に向かい指示を出した。

「貨物船に案内してやれ。いいか、あそこ・・・の貨物船だぞ?」

 ボルド伯爵は何やら含みのある言い方をすると僕らに向き直った。

「執事のシェバスに付いていけ。好きなだけ貨物船を調べるがいい」

「ご配慮感謝しますわ。じっくり調べさせていただきます」

 菜穂なほさんが退室の挨拶をする。
ボルド伯爵はしっしと手で追い払うかのようにするだけだった。
自信満々のボルド伯爵を執務室に残して僕らは貨物船格納庫へと向かった。


◇  ◇  ◇  ◇  ◆


「これが襲われた貨物船です」

 執事のシェバスに連れられて行った先の格納庫には一隻の貨物船が鎮座していた。
桟橋からは簡易的なタラップが船体前部のコクピット入り口までかけられている。
その貨物船の船体にはレールガンによると思われる大きな穴が開いていた。
あれが野良宇宙戦艦の被害だということだろう。

「ご覧のように野良宇宙戦艦のレールガンによって撃たれております。
不幸中の幸いで空の格納庫を突き抜けたため航行に支障なくここへと逃げ帰ったという次第です」

 僕らはその穴を見て「やっぱりか」という感想しかなかった。
シェバスに聞こえないように皆と話す。

「あの破孔はせいぜい20cmレールガンだよね?」と僕。

「ん」と美優みゆがすぐさま同意。

「やっぱり偽の被害貨物船を見せられたわね」と菜穂なほさん。

 菜穂なほさんはシェバスに向き合うと次の一手に出た。
まだ決定的な証拠が得られてないからね。

「コクピットに入ってもかまいません?」

「……どうぞ」

 シェバスは何をするつもりなのかと訝しむ様子だったが、断る理由もないのだろう、そのまま立ち入りを許可した。
シェバス立ち合いの元、菜穂なほさんを先頭に僕たちは貨物船に乗り込んだ。
貨物船のコクピットは荷役作業員も乗り込むためか僕らの戦闘艦とは違って思いのほか広く、座席も10以上あった。
菜穂なほさんが座席に積もった埃を指でつつと拭った。

「昨日撃たれたにしては埃っぽいわね」

 菜穂なほさん、それ意地悪姑みたいで嫌味っぽいw

「そ、それは……。貨物船なんて男所帯なので掃除が行き届いていないだけでしょう」

 シェバスが苦しい言い訳をする。
どうせ何度も同じ貨物船を使いまわしたんだろう。
つまり詐欺の常習ということだな。
僕らみたいにコクピットまで調べに来るのは稀有だったのかな?

「それじゃ晶羅きららちゃんよろしく」

 菜穂なほさんの指示で僕は腕輪の通信機を僕の専用艦へと繋げる。

「戦術兵器統合制御システム起動! この貨物船の電脳にリンク、情報を吸い出せ!」

 シェバスはポカンとしている。
僕が何をしているのか理解できないようだ。
僕は貨物船のコクピット内に仮想スクリーンを開いて貨物船のデータを表示させた。

「この貨物船が最後に航行したのは、この運航ログによれば3年前になってるね。
そしてこれが最後の航行時の映像だ」

 仮想スクリーン上には接近するボルド伯爵領軍の巡洋艦が映っている。
なぜボルド伯爵領軍とわかるかというと、艦体ボディにボルド伯爵家のエンブレムがでかでかと描かれているからだ。
その巡洋艦が貨物船にレールガンを向けるといきなり発射した。
揺れるカメラ。これが先ほどの穴の正体だろう。

「どうしてそれが……」

 シェバスは貨物船の電脳がこのようなデータを持っているとは理解出来ていなかったようだ。
目の前に表示された野良宇宙戦艦でっち上げの証拠にあわあわとしている。
帝国は星間文明であるのにもかかわらず、それを扱っている人間の文明程度は地球の中世レベルだという。
このような簡単な捜査で足がつくなど理解の外だったのだろう。

「この映像も証拠としてSFOギルドに提出させてもらいますわ」

「だ、旦那様! 大変です! バレました! 騎士団を早く!」

 シェバスは慌ててボルド伯爵執務室の方へと駆けて行った。 
不可能依頼で帰してくれれば、もっと穏やかに解決出来たのに。
どうやらボルド伯爵側は僕らを処分してでも隠蔽工作に走るようだ。
さて、このままだと僕たちの身が危ない。
生身で伯爵の騎士団と戦うわけにはいかないからね。

「みんな専用艦に戻るよ。あのコクピットが一番安全だ」

 僕らも一斉に専用艦格納庫へと駆けた。


◇  ◇  ◇  ◆  ◇


 ボルド伯爵が動く前に僕らは専用艦のコクピットへと戻り、バベルの格納庫から脱出した。
ただし、次元跳躍門ゲートを使えないので帰ることが出来ない。

「僕が次元跳躍門ゲートをハッキングして制御を奪っちゃおうか?」

「それは駄目よ」

 僕の提案を菜穂なほさんが却下する。

「それが帝国法に触れた場合、私たちの方が悪者にされてしまうかもしれないわ」

「それは困るけど、ボルド伯爵の領軍艦隊と戦うのも拙くない?」

 小スクリーンの中の菜穂なほさんの顔が苦悩で歪む。

「まず話し合い。それが通じなくて攻撃されたら正当防衛で応戦しつつ次元跳躍門ゲートを奪うわ」

 つまり専守防衛で、こちらからは手を出さないということか。
帝国ともめないためには、それしかないのかもしれないな。

紗綾さーやがポチったせいで皆ごめんなさい!」

 紗綾さーやが沈痛な表情で謝罪する。
いや軽率だったとは思うけど、まさかギルドに紹介されたクエストにこんな酷いのがあるとは普通は思わないからね。
なんで今まで発覚しなかったかの方が不思議だよ。
まさかクエストを受注した艦隊は未帰還じゃないだろうな?

紗綾さーやのせいじゃないよ。これはSFOギルドの不始末で、ボルド伯爵の犯罪だよ」

「そうね。戻ったら徹底的に糾弾してやりましょう」

「ん」「そうよ!」

 僕たちの前にはボルド伯爵領軍100艦が緊急発進して来ていた。
その砲口は僕たちに向けられていた。
僕らは次元跳躍門ゲートを背にして100艦の艦隊と対峙することになった。

「皆は紗綾さーやが守る!」

 紗綾さーやの専用艦が盾を展開して僕たちの前に出る。
ボルド伯爵領軍の戦力は最大戦力でボルド伯爵の戦艦だ。
他はほぼ巡洋艦と突撃艦だ。
100:5。

「各自20艦やっつければ勝ちだよ。私らなら楽勝だよ」

 綾姫あやめも血気に逸って好戦的なセリフを吐く。

「皆早まらないで。その前に交渉だけはしときましょう」

 菜穂なほさんが諫めるも皆直ぐにも暴発しそうだ。
さて落としどころはどこになるのだろうか。
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

現代ダンジョンの苦情係 〜元クレーム処理担当の俺、魔物の言葉がわかるので菓子折り一つで世界を救う〜

ぱすた屋さん
ファンタジー
「その咆哮は、騒音公害に当たります」 現代日本に出現した『ダンジョン』と、そこから溢れ出す魔物たち。 人々が英雄(Sランク探索者)の活躍に熱狂する一方で、組織の闇に葬られた部署があった。 ――ダンジョン管理ギルド・苦情係。 そこへ左遷されてきたのは、前職で数万件のクレームを捌き倒した伝説のカスタマーセンター職員・久我良平(くが りょうへい)。 彼にとって、新宿に降臨した災害級ドラゴンは「騒音を撒き散らす困ったお客様」であり、聖女の奇跡は「同意なきサービスの押し付け(強売)」に過ぎない。 「力」でねじ伏せる英雄たちが敗北する中、久我は「正論」と「どら焼き」と「完璧な事務手続き」を武器に、魔物たちの切実な悲鳴(クレーム)をハックしていく。 一癖も二癖もある仲間と共に、久我はギルド上層部の腐敗や外資系企業の傲慢な介入を次々と「不備」として処理していく。 これは、組織の鎖を断ち切った一人の事務屋が、人間と魔物の間に「新しい契約」を紡ぎ、世界を再起動させるまでの物語。 「――さて。予約外の終焉(ラグナロク)ですか? 承知しました。まずは、スケジュールの調整から始めましょう」

処理中です...