【改訂版】異世界転移で宇宙戦争~僕の専用艦は艦隊旗艦とは名ばかりの単艦行動(ぼっち)だった~

北京犬(英)

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アイドル編

073 アイドル編49 遠征6

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 僕たちが次元跳躍門ゲートを背にして布陣しているのは、ボルド伯爵の領軍の射線を次元跳躍門ゲートに向けさせることで、いきなりの攻撃を防ぐ意味があった。
ボルド伯爵側の嘘を暴くということは、相手を追い詰めるということであり、ボルド伯爵側が強硬手段に出る事は想定内だったからだ。
この一瞬の膠着時間を突いて菜穂なほさんが交渉に入る。

『ボルド伯爵、交渉しませんこと? 私共は不可能依頼として無事に帰れれば事を荒立てることはしませんわ』

 菜穂なほさんが平和的解決を打診するも、ボルド伯爵側の反応は薄く、着々と攻撃準備を始めるだけだった。
見る間に次元跳躍門ゲートを射線から外すように艦隊が展開し始める。

『何のことかな? 我らは依頼失敗の違約金を払わず不敬を働き、逃亡した賊を討伐しようとしているだけだが?』

 ああ、そう来るのか。
僕らを逃がさず殲滅すれば詐欺の証拠もSFOギルドには届かないということね。
死人に口なしってやつか。
最早、戦って生き残るしかこの窮状を打開する術は無さそうだ。

「だめね」

「だね」

「でも、撃たせてから反撃よ。
特に綾姫あやめ、正義感が強いのはわかるけど自重して」

「うー。でもあいつ卑怯すぎる!」

紗綾さーやには、初撃を受けて耐えてもらうわ。
危険な任務になるけど、わかってるわね?」

紗綾さーやがポチったせいだから、頑張る~」

「まあ、やられる前に攻撃準備しとくのはOKでしょ?
脅威度判定で効率の良い射撃データを送っとくよ」

 さあ準備万端。撃つなら撃て。こちらもただではやられない。


 ボルド伯爵の領軍艦隊は中央に40、左右に30ずつと艦隊を分け、左右の30ずつが次元跳躍門ゲートを避ける射線を取ろうと展開していく。
この艦隊が射撃位置についたら攻撃開始だろう。

『降伏して違約金を払ったらどうだ? お前らも命は惜しいだろう?』

 ボルド伯爵が下衆い声で勝ち誇ったように降伏勧告をしてくる。

『冗談じゃないわ!
居もしない野良宇宙戦艦の討伐任務なんて不可能依頼の何物でもないわ!
依頼偽造の証拠もあるし、そんなものに違約金など払う気はないわ!』

 菜穂なほさんがわざと経緯を詳細に語る。
これらのやり取りを記録することで、事後にこちらの正当性を主張する材料とするのだ。

『ならば死ね。依頼失敗、後に貴族に対する不敬で処分。
こちらはお咎めなしだ!』

 実際、この帝国での裁判は貴族優位に運ばれ有り得ないような判決が簡単に出るようだ。
唯一の救いは、こちらの後ろ盾が帝国皇子だということだ。
だが、こちらが生きて証拠を持ち帰れなければ、SFOを管轄する皇子に助けを請うことも出来ない。

「交渉決裂! 攻撃に備えよ! 後の指揮は晶羅きららちゃんに一任するわ」

 菜穂なほさんが戦闘準備の号令を発する。
いよいよ戦闘開始だ。


 とその時、次元跳躍門ゲートから警報が発令された。
敵艦隊が亜空間から突入して来たのだ。
本来なら空間異常が観測された段階とシステムが介入された段階の2段階で警報が出るはずだが、既に敵艦隊が次元跳躍門ゲートを抜けて来ている。
通常の手順を無視した異常事態だった。

『回避! 天頂方向』

 僕らは艦を急加速させて次元跳躍門ゲート前から天頂方向真上に緊急回避をする。
敵艦隊に弱点である後部推進器を晒すのは危険だからだ。
前後左右どちらにも敵なら側面を晒してでも真上か真下に回避するしかない。

 僕らを左右から併撃するために展開していたボルド伯爵の分艦隊が敵艦隊の攻撃に晒されている。
ボルド伯爵の指揮が遅れたための一瞬の躊躇が徒となっている。

『バカな! どうしてハブ下の通常次元跳躍門ゲートに敵艦隊が来るんだ!』

 ボルド伯爵がオープン回線で叫ぶ。
よっぽど慌てているのだろう。
しかも、詐欺の決定的証言いただきました。

 本来、通常次元跳躍門ボルドゲートにはハブ次元跳躍門ベントレーゲートを通らないと侵入することが出来ない。
なのにボルド星系に野良宇宙戦艦が紛れ込んで来たという。
ハブ次元跳躍門ベントレーゲートを通らずに。
今、それが有り得ないことをボルド伯爵自らが認めてしまったのだ。
過去にも同様の事があったならば、このような発言にはならない。

「いい証言もらったね」

「しっかり記録しているわ。
これで裁判になったとしても楽に勝てるわ」

 菜穂なほさんがニンマリしている。
いくら貴族が難癖付けようが、権力を使おうが、この証拠の数々は覆せない。
そうこうするうちに敵艦隊の侵入が完了したようだ。

「敵艦隊の総数は120だね。
どうする? 僕たちがボルド伯爵側で参戦すれば勝てない数じゃないよ?」

「高みの見物でい~んじゃない?
セクハラもされたし~」

 紗綾さーやは騙された恨みもあって放置を提案する。
悪い笑みを浮かべている。
紗綾さーやが、もっと慎重にポチれば回避出来た案件だけど、確かに僕もボルド伯爵のやり口には頭にきている。

「ボルド伯爵と敵艦隊をぶつけて、残った方を僕らで殲滅が一番楽でいいかもね」

 僕も悪い顔をして提案しとく。

「漁夫の利ね」

 綾姫あやめも提案に乗る。

「ん。同意」

「全員一致ね。高みの見物としましょう」

 皆ニヤリと悪い笑みを浮かべ方針が決定した。


◇  ◇  ◇  ◇  ◆


 ボルド伯爵の領軍艦隊は分艦隊60が初撃で大被害を受け、そのうち撤退して来た10が本隊と合流出来た。
しかし戦力差が著しいため、慌ててバベルから援軍50を呼び寄せ、合計100で敵艦隊120と正面からぶつかった。
僕たちは戦闘平面を垂直に離れた場所から見下ろすように戦場を観察していた。
たまに敵艦隊から分艦隊が差し向けられたが、僕と菜穂なほさん、紗綾さーやのレールガンが長距離狙撃で葬った。
ボルド伯爵の領軍艦隊は敵艦隊とガチの殴り合いになり、お互いに被害を重ねていく。
CICのパイロット転送システムで撃墜された艦から人員回収専門艦がパイロットを転送回収している。
僕たちがボルド伯爵の艦隊を見捨てたのも、この転送回収システムがあるため人的被害は少ないと見込んでのことだった。
人員回収専門艦は僕たちの側に配置されていたため、僕たちが間接的に護っている状態になっているのも幸運だったろう。

 そうこうするうちにボルド伯爵の艦隊は、ボルド伯爵の座乗艦と護衛の艦艇の合計5艦にまで数が減っていた。
一方敵艦隊は戦艦を中心とした10艦がボルド伯爵の座乗艦に襲い掛かっていた。

「そろそろ頃合いかな?」

「しょうがないわね。助けますか」

 僕と菜穂なほさんが通信用の小スクリーンで目配せを交わす。
ここでボルド伯爵を助けて恩を着せてやろう。

『ボルド伯爵、助太刀は必要かしら?』

 菜穂なほさんが、わざと恩着せがましく言う。

『助けろ! いや、助けてくれ!』

 ボルド伯爵も、自分の命がかかって、藁にも縋るつもりで助けを求める。
いくらパイロットが転送回収されて無事だからといって、全艦やられれば人員回収専門艦だって無事では済まないからね。

『それでは、野良宇宙戦艦・・・・・・の討伐任務、履行しますわ』

 僕たちブラッシュリップス艦隊が、真上から敵艦隊に襲い掛かる。
菜穂なほさんの30cmレールガンが敵戦艦の護衛である巡洋艦と駆逐艦を狙い撃つ。
紗綾さーやも僕が渡した射撃データで36cmレールガンで敵戦艦に直撃弾を与える。
僕も40cmレールガンを敵戦艦にぶち込む。
接近してからも粒子ビーム砲で残りを狩った。
あっと言う間の殲滅戦だった。
その戦闘力にボルド伯爵が通信用小スクリーン内でビビった顔をしている。
この期に及んで敵に回したらヤバいと思ってくれただろう。

『野良宇宙戦艦の討伐完了。依頼達成で宜しいわね?』

 菜穂なほさんがボルド伯爵に圧をかける。

『宜しいわね?』

『は、はい!』

 ボルド伯爵が小スクリーンの中でガクガクと頷く。
よし依頼達成だ。
ちなみに僕の専用艦の40cm粒子ビーム砲が発射予兆光を発していたのは秘密だ。
僕が討伐した敵艦を次元格納庫にサクっと回収すると、僕らはボルド伯爵に次元跳躍門ゲートを開けさせて帰路に着くのだった。
戦艦1、巡洋艦7、駆逐艦10の収穫だった。
途中で迎撃した分艦隊を含めた数ね。
まあ、ボコボコにしたから優良素材は少ないかもだけど。
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