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領主編
123 領主編17 地球人奪還3
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ブライビー男爵の騙し討ちの証拠が帝国ネットワークに上がったことにより、ブライビー男爵は討たれて当然という扱いになった。
だが親玉の第10皇子に関しては共犯である証拠は皆無で手出し出来なかった。
第10皇子はいち早くブライビー男爵の蛮行を非難し、お詫びにとブライビー星系の権利を僕に渡して来た。
ブライビー星系の権利を渡すとなると、星系の属する上位次元跳躍門であるハブ次元跳躍門が使えないと困る。
なので、第10皇子は主星系であるジェム星系の玄関口となるハブ次元跳躍門の使用の自由、つまり制御権を僕に譲ることになった。
ここを僕に抑えられるということは、それこそ第10皇子は他所へ出掛けることが事実上不可能となってしまう。
第10皇子は自分の主星系以外への航行の自由を僕に握られる形となる。
そうまでして詫びた第10皇子は人格者であると世間では評判になった。
まあ、そんなことは僕達も信用していないけどね。
なかなか上手いトカゲの尻尾切りで、第10皇子侮りがたしという結論になった。
第10皇子は、主星系内で完結した経済活動が可能であれば、今後も何不自由なく贅沢三昧は出来る。
命と天秤にかければ皇位継承を諦めたポーズをするぐらいはお安いことだろう。
じっと耐えていれば味方が巻き返してくれるという期待もあるのかもしれない。
だが僕としては、この結果は失敗だったと結論付けざるを得なかった。
この時点で地球人の奪還はゼロであり、何の成果を上げることも出来ていなかった。
そこでブライビー4の衛星軌道上にあった要塞艦、ブライビー要塞に残った情報を解析し、ステーションからブライビー要塞に管理移行された地球人6780名の名前を特定した。
これはほぼ年1回約2千人で4年分――初期は参加人数が少なかった――の参加者がここに誘拐されていた計算だった。
残り3年分がアノイ要塞に連れて来られたようで、その最後が僕たちが関わった誘拐事件だった。(アノイ要塞分の名簿は破棄されていて手に入らなかった)
僕たちの事務所メンバーは契約満了に該当しないが、前倒しで誘拐して後に帳尻を合わせるようなことは行われていたようだった。
つまりSFOが発足してから10年の間に1万人――再契約した人は除外して――の帰還者が出ているが、その人数とほぼ同数が誘拐されていたということだ。
ケイン元皇子の手口は、この中継地とした要塞艦から子飼いの貴族に地球人を難民保護名目で連れ出し、借金をたてに奉公を求める借金奴隷にするというパターンだろう。
下手すると難民としての保護期間の経費を借金として被せられて、借金奴隷に追い込むという可能性も無いとは限らない。
「参ったな。第10皇子を追い込んで、地球人の誘拐先を吐かせるつもりだったのに……」
「晶羅、見事に逃げられたな」
限りなく黒に近いのに、これ以上追及が出来ない。
皇子として決闘を求めることは出来るが、今の状況では善意の皇子に喧嘩を売った僕が野蛮人とみなされてしまう。
これが処世術というやつか。
いつか化けの皮を剥がしてやりたい。
「社長、誘拐致被害者の一部が特定出来たんだから、関係者に返還を求めるというのはどうだろうか?」
「そうだな。帝国が文明国であるならば、誘拐被害者と判った後まで地球人の所有に拘らないだろうと思えるな」
「はい。この誘拐は辺境で中央の目が届かないからこそ行われた暴挙ですので、地球人誘拐被害者をたまたま手に入れた善意の第三者であれば、返還に応じると思います。
皇位継承に品格を求めている上位皇子の関係者であれば、地球人の所有によって汚点となることこそを避けようとするでしょう」
「愛さんの見解の通りならば、アホなのは下位の皇子ってことか。なら地球人誘拐の実態調査と返還への協力を訴えたらいいのかもね」
僕達は公式なルートで地球人の返還を求めることにした。
そのメッセージと被害者名簿は帝国ネットワークに載せられ瞬く間に広がって行った。
「第1皇子、第2皇子、第3皇子は人間が出来てるね。地球人返還に協力してくれるそうだよ」
「彼らにとっても下位皇子を叩けるのはメリットがあるだろうからな」
「そりゃそうだよ社長。そこに大義名分があるんじゃ庇いようもないからね」
上位皇子が協力してくれるのは心強いけど、額面通りにいかないのが権力闘争だよね。
へたすると一連の事件の黒幕が紛れているなんてこともある。
まあ、世間に良い顔をするために協力してもらえるのは有難い。
僕と社長がそのように皇子達の対応を分析していると、愛さんから報告が入った。
「さっそく返還に応じる貴族が現れ始めました」
「愛さん、窓口業務なんて頼んじゃって悪いね」
「いいえ、かまいません。ですが事情があって返還に応じられないというメッセージも届いています」
「事情?」
「貴族家に奉公に入って見初められ、当主の子を産んで幸せに暮らしているそうです」
「そ、それは帰って来いとは言えないね……」
そうか。5年10年も経っていたら、そういった事例も発生しかねないよね。
男で入婿なんてのもあるかも。
「だが、晶羅、そういった事情を装う奴も出かねないから、しっかり検証していかないとな」
「難しいね」
それを悪用も出来るのか。これは地球人の担当官を任命すべき大仕事かも。
「姉貴の情報は無いんだよね?」
「はい。全くありません」
本物の善意の第三者は返還に応じてくれている。
だが、悪意を持って攫われた被害者は情報すら出てこない。
下手すると戦場に駆り出されて亡くなっている人もいるのかもしれない。
その人を返還しろと言っても無理だろう。
だが亡くなったという証拠が無い限りいつまでも返還事業は終わりを迎えられない。
誘拐されたと知った家族は諦めることはないからね。
「どこかに一元管理されているデータでもないかね」
ポロっと出た僕の言葉に愛さんが反応する。
「腕輪の登録データが個人特定の一元管理データになります」
「まさか、名前さえわかれば腕輪データとマッチング可能とか?」
「その閲覧許可さえ出れば現在の所在が特定可能かと思われます」
「あー。許可が無いのか」
「はい。許可さえ出れば除籍の記録も見れるはずです」
「除籍って亡くなってるということか……」
「腕輪を外し帝国の管理の外で生活していれば生きているかもしれませんが」
「それは濃い犯罪臭がするな」
「はい。非合法市民になりますから」
「それもデータ閲覧許可を得なければ絵に描いた餅か。閲覧許可は何処でとればいい?」
「帝国本星に行くしかありません」
「帝国本星か」
「そこで皇帝陛下の許可を得る必要があります」
「うわー。それは最後の手段にしたいな」
皇帝に会う? こっちが真・帝国と関係がある以上勘弁して欲しい。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
SIDE:某所 仮想空間内会議室 8 9 (三人称)
仮想空間の極秘会議室に2体のアバターが集まっていた。
4つあった席は既に2つが空席となっていた。
1つはケイン元皇子の席。もう1つは第10皇子の席だった。
第10皇子の次元通信はハブ次元跳躍門の中継器が晶羅に抑えられたため寸断され参加不能だったのだ。
第10皇子は自分の主星系に引きこもるしかない所謂蟄居状態だった。
9「ジェラルドの奴めがアキラに屈した」
8「奴は我らが助けに行くと思っているのだろうな」
9「あのような失態を帝国中に晒されては、奴を助けに行けば我らとてダメージを追う」
2人は大きく溜息をついた。
9「それにアキラの戦力だ。5万もの艦隊を擁し反物質粒子砲を使うとは……」
8「あれは我らの新兵器であったものを」
9「ケインめ、我らにまで隠して量産化を図ろうとは、どこまで権力欲が強いのか」
8「おかげで我らにはあの新兵器は造れぬ」
9「我らが獲得したDNAのせっかくの成果だったというのに」
不快感を露わにして話す2人のターゲットがケインから別の人物に移る。
8「そのDNAの持ち主も行方不明か」
9「ケインを助けに行かせたことが仇となったな」
8「まさかあのまま出奔するとはな」
9「駆け落ちか……」
2人は苦笑いするしかなかった。
8「ケインとジェラルドから我らに辿り着くのは時間の問題だろう」
9「困った兄達だ」
そう彼らはケインとジェラルドの腹違いの弟である皇子だ。
だが、彼らの方が継承順位が上だった。
そのため兄として敬うことはなく呼び捨てだった。
8「善意の第三者を装うにも、返せない地球人の存在がネックになるだろう。戦いは不可避だ」
9「何らかの不手際をあげつらってアキラに決闘を申し込むとして、ジェラルドの戦力をあてにしてもこちらの方が分が悪い」
8「やはり我らの総帥に出張ってもらうしかないな」
9「我らはもう皇帝の座を諦めた皇子とは名ばかりの総帥の手下でしかないのだからな」
8「このような時に出てもらうための主従関係なのだから嫌とは言わんだろう」
彼らは解ってなかった。
総帥の敵は晶羅だけではないと。
晶羅と戦うことで戦力を低下させれば他の敵を利することになると。
そうまでして助ける価値が自分達に無いのだと。
8「こちらも切り札を切るべき時が来たようだな」
9「あれを出すのか!」
8「直接戦闘の前の嫌がらせには最適であろう?」
2人は嫌らしい笑みを浮かべるのだった。
9「さて、奴を呼ぶか。新たな四天王11よ歓迎する!」
その言葉で極秘会議室の入室許可が発生したのか、仮想空間内に新たなアバターが表示される。
11「ご紹介にあずかりました11です。今後ともよろしく」
9「11はケインの紹介で配下がアキラとトラブルになっている」
8「なるほど、我らと力を合わせる必要があるのだな。11よ歓迎する」
11「ありがとうございます」
新たな四天王が誕生した。
お知らせ
121でSFO発足から5年、合計2万人が誘拐されたと書いていましたが誤りです。
その前の記述では年間2千人ぐらいの帰還者が出て、それに相当する人数が誘拐されていたとしていて、これと矛盾していました。
この時、なぜか初年度から3年度のプレイヤー総数+再契約人数と年間契約数を勘違いし、年間8千人が契約していると思い込み計算してしまっていました。
発足10年、誘拐人数1万人に変更いたします。申し訳ありません。
発足5年なら3年契約のプレイヤーの帰還が始まって2年。年間2千人が帰ったとして、まだ4千人しか該当しない。
その帰還者の数に相当する人数が誘拐されていたということなのに誘拐人数が2万人っておかしいですよね?
この人数の帰還者を出すには10年分の帰還者が必要で、つまり最低でも発足13年になる。
再契約で残る人数を入れたら、もっと年数が経っていなければおかしい。
しかも、eスポーツが発足して13年は無理がある。
名前がeスポーツになる前からやっているとしてもせいぜいが10年。
発足して10年。帰還者が2千×7で1万4千人。うち4千が契約延長――同じ人が延長している場合もあるので延べ人数になります――していれば1万人。
もっと誘拐人数が少ない設定でも良かったのですが、アブダクションが騒がれた年代を考えるともっと昔から誘拐はされていて、SFOが関わりだしたのが近年だとしてもそのぐらいかなと。
その結果、SFO発足10年で誘拐人数1万人となりました。
だが親玉の第10皇子に関しては共犯である証拠は皆無で手出し出来なかった。
第10皇子はいち早くブライビー男爵の蛮行を非難し、お詫びにとブライビー星系の権利を僕に渡して来た。
ブライビー星系の権利を渡すとなると、星系の属する上位次元跳躍門であるハブ次元跳躍門が使えないと困る。
なので、第10皇子は主星系であるジェム星系の玄関口となるハブ次元跳躍門の使用の自由、つまり制御権を僕に譲ることになった。
ここを僕に抑えられるということは、それこそ第10皇子は他所へ出掛けることが事実上不可能となってしまう。
第10皇子は自分の主星系以外への航行の自由を僕に握られる形となる。
そうまでして詫びた第10皇子は人格者であると世間では評判になった。
まあ、そんなことは僕達も信用していないけどね。
なかなか上手いトカゲの尻尾切りで、第10皇子侮りがたしという結論になった。
第10皇子は、主星系内で完結した経済活動が可能であれば、今後も何不自由なく贅沢三昧は出来る。
命と天秤にかければ皇位継承を諦めたポーズをするぐらいはお安いことだろう。
じっと耐えていれば味方が巻き返してくれるという期待もあるのかもしれない。
だが僕としては、この結果は失敗だったと結論付けざるを得なかった。
この時点で地球人の奪還はゼロであり、何の成果を上げることも出来ていなかった。
そこでブライビー4の衛星軌道上にあった要塞艦、ブライビー要塞に残った情報を解析し、ステーションからブライビー要塞に管理移行された地球人6780名の名前を特定した。
これはほぼ年1回約2千人で4年分――初期は参加人数が少なかった――の参加者がここに誘拐されていた計算だった。
残り3年分がアノイ要塞に連れて来られたようで、その最後が僕たちが関わった誘拐事件だった。(アノイ要塞分の名簿は破棄されていて手に入らなかった)
僕たちの事務所メンバーは契約満了に該当しないが、前倒しで誘拐して後に帳尻を合わせるようなことは行われていたようだった。
つまりSFOが発足してから10年の間に1万人――再契約した人は除外して――の帰還者が出ているが、その人数とほぼ同数が誘拐されていたということだ。
ケイン元皇子の手口は、この中継地とした要塞艦から子飼いの貴族に地球人を難民保護名目で連れ出し、借金をたてに奉公を求める借金奴隷にするというパターンだろう。
下手すると難民としての保護期間の経費を借金として被せられて、借金奴隷に追い込むという可能性も無いとは限らない。
「参ったな。第10皇子を追い込んで、地球人の誘拐先を吐かせるつもりだったのに……」
「晶羅、見事に逃げられたな」
限りなく黒に近いのに、これ以上追及が出来ない。
皇子として決闘を求めることは出来るが、今の状況では善意の皇子に喧嘩を売った僕が野蛮人とみなされてしまう。
これが処世術というやつか。
いつか化けの皮を剥がしてやりたい。
「社長、誘拐致被害者の一部が特定出来たんだから、関係者に返還を求めるというのはどうだろうか?」
「そうだな。帝国が文明国であるならば、誘拐被害者と判った後まで地球人の所有に拘らないだろうと思えるな」
「はい。この誘拐は辺境で中央の目が届かないからこそ行われた暴挙ですので、地球人誘拐被害者をたまたま手に入れた善意の第三者であれば、返還に応じると思います。
皇位継承に品格を求めている上位皇子の関係者であれば、地球人の所有によって汚点となることこそを避けようとするでしょう」
「愛さんの見解の通りならば、アホなのは下位の皇子ってことか。なら地球人誘拐の実態調査と返還への協力を訴えたらいいのかもね」
僕達は公式なルートで地球人の返還を求めることにした。
そのメッセージと被害者名簿は帝国ネットワークに載せられ瞬く間に広がって行った。
「第1皇子、第2皇子、第3皇子は人間が出来てるね。地球人返還に協力してくれるそうだよ」
「彼らにとっても下位皇子を叩けるのはメリットがあるだろうからな」
「そりゃそうだよ社長。そこに大義名分があるんじゃ庇いようもないからね」
上位皇子が協力してくれるのは心強いけど、額面通りにいかないのが権力闘争だよね。
へたすると一連の事件の黒幕が紛れているなんてこともある。
まあ、世間に良い顔をするために協力してもらえるのは有難い。
僕と社長がそのように皇子達の対応を分析していると、愛さんから報告が入った。
「さっそく返還に応じる貴族が現れ始めました」
「愛さん、窓口業務なんて頼んじゃって悪いね」
「いいえ、かまいません。ですが事情があって返還に応じられないというメッセージも届いています」
「事情?」
「貴族家に奉公に入って見初められ、当主の子を産んで幸せに暮らしているそうです」
「そ、それは帰って来いとは言えないね……」
そうか。5年10年も経っていたら、そういった事例も発生しかねないよね。
男で入婿なんてのもあるかも。
「だが、晶羅、そういった事情を装う奴も出かねないから、しっかり検証していかないとな」
「難しいね」
それを悪用も出来るのか。これは地球人の担当官を任命すべき大仕事かも。
「姉貴の情報は無いんだよね?」
「はい。全くありません」
本物の善意の第三者は返還に応じてくれている。
だが、悪意を持って攫われた被害者は情報すら出てこない。
下手すると戦場に駆り出されて亡くなっている人もいるのかもしれない。
その人を返還しろと言っても無理だろう。
だが亡くなったという証拠が無い限りいつまでも返還事業は終わりを迎えられない。
誘拐されたと知った家族は諦めることはないからね。
「どこかに一元管理されているデータでもないかね」
ポロっと出た僕の言葉に愛さんが反応する。
「腕輪の登録データが個人特定の一元管理データになります」
「まさか、名前さえわかれば腕輪データとマッチング可能とか?」
「その閲覧許可さえ出れば現在の所在が特定可能かと思われます」
「あー。許可が無いのか」
「はい。許可さえ出れば除籍の記録も見れるはずです」
「除籍って亡くなってるということか……」
「腕輪を外し帝国の管理の外で生活していれば生きているかもしれませんが」
「それは濃い犯罪臭がするな」
「はい。非合法市民になりますから」
「それもデータ閲覧許可を得なければ絵に描いた餅か。閲覧許可は何処でとればいい?」
「帝国本星に行くしかありません」
「帝国本星か」
「そこで皇帝陛下の許可を得る必要があります」
「うわー。それは最後の手段にしたいな」
皇帝に会う? こっちが真・帝国と関係がある以上勘弁して欲しい。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
SIDE:某所 仮想空間内会議室 8 9 (三人称)
仮想空間の極秘会議室に2体のアバターが集まっていた。
4つあった席は既に2つが空席となっていた。
1つはケイン元皇子の席。もう1つは第10皇子の席だった。
第10皇子の次元通信はハブ次元跳躍門の中継器が晶羅に抑えられたため寸断され参加不能だったのだ。
第10皇子は自分の主星系に引きこもるしかない所謂蟄居状態だった。
9「ジェラルドの奴めがアキラに屈した」
8「奴は我らが助けに行くと思っているのだろうな」
9「あのような失態を帝国中に晒されては、奴を助けに行けば我らとてダメージを追う」
2人は大きく溜息をついた。
9「それにアキラの戦力だ。5万もの艦隊を擁し反物質粒子砲を使うとは……」
8「あれは我らの新兵器であったものを」
9「ケインめ、我らにまで隠して量産化を図ろうとは、どこまで権力欲が強いのか」
8「おかげで我らにはあの新兵器は造れぬ」
9「我らが獲得したDNAのせっかくの成果だったというのに」
不快感を露わにして話す2人のターゲットがケインから別の人物に移る。
8「そのDNAの持ち主も行方不明か」
9「ケインを助けに行かせたことが仇となったな」
8「まさかあのまま出奔するとはな」
9「駆け落ちか……」
2人は苦笑いするしかなかった。
8「ケインとジェラルドから我らに辿り着くのは時間の問題だろう」
9「困った兄達だ」
そう彼らはケインとジェラルドの腹違いの弟である皇子だ。
だが、彼らの方が継承順位が上だった。
そのため兄として敬うことはなく呼び捨てだった。
8「善意の第三者を装うにも、返せない地球人の存在がネックになるだろう。戦いは不可避だ」
9「何らかの不手際をあげつらってアキラに決闘を申し込むとして、ジェラルドの戦力をあてにしてもこちらの方が分が悪い」
8「やはり我らの総帥に出張ってもらうしかないな」
9「我らはもう皇帝の座を諦めた皇子とは名ばかりの総帥の手下でしかないのだからな」
8「このような時に出てもらうための主従関係なのだから嫌とは言わんだろう」
彼らは解ってなかった。
総帥の敵は晶羅だけではないと。
晶羅と戦うことで戦力を低下させれば他の敵を利することになると。
そうまでして助ける価値が自分達に無いのだと。
8「こちらも切り札を切るべき時が来たようだな」
9「あれを出すのか!」
8「直接戦闘の前の嫌がらせには最適であろう?」
2人は嫌らしい笑みを浮かべるのだった。
9「さて、奴を呼ぶか。新たな四天王11よ歓迎する!」
その言葉で極秘会議室の入室許可が発生したのか、仮想空間内に新たなアバターが表示される。
11「ご紹介にあずかりました11です。今後ともよろしく」
9「11はケインの紹介で配下がアキラとトラブルになっている」
8「なるほど、我らと力を合わせる必要があるのだな。11よ歓迎する」
11「ありがとうございます」
新たな四天王が誕生した。
お知らせ
121でSFO発足から5年、合計2万人が誘拐されたと書いていましたが誤りです。
その前の記述では年間2千人ぐらいの帰還者が出て、それに相当する人数が誘拐されていたとしていて、これと矛盾していました。
この時、なぜか初年度から3年度のプレイヤー総数+再契約人数と年間契約数を勘違いし、年間8千人が契約していると思い込み計算してしまっていました。
発足10年、誘拐人数1万人に変更いたします。申し訳ありません。
発足5年なら3年契約のプレイヤーの帰還が始まって2年。年間2千人が帰ったとして、まだ4千人しか該当しない。
その帰還者の数に相当する人数が誘拐されていたということなのに誘拐人数が2万人っておかしいですよね?
この人数の帰還者を出すには10年分の帰還者が必要で、つまり最低でも発足13年になる。
再契約で残る人数を入れたら、もっと年数が経っていなければおかしい。
しかも、eスポーツが発足して13年は無理がある。
名前がeスポーツになる前からやっているとしてもせいぜいが10年。
発足して10年。帰還者が2千×7で1万4千人。うち4千が契約延長――同じ人が延長している場合もあるので延べ人数になります――していれば1万人。
もっと誘拐人数が少ない設定でも良かったのですが、アブダクションが騒がれた年代を考えるともっと昔から誘拐はされていて、SFOが関わりだしたのが近年だとしてもそのぐらいかなと。
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これは、組織の鎖を断ち切った一人の事務屋が、人間と魔物の間に「新しい契約」を紡ぎ、世界を再起動させるまでの物語。
「――さて。予約外の終焉(ラグナロク)ですか? 承知しました。まずは、スケジュールの調整から始めましょう」
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