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遠征編
161 遠征編26 対話3
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「僕が接続を切れば有機アンドロイドは元の状態に戻るよ。
つまり殺してはいないんだ」
ニアヒュームの言葉に、僕は有機アンドロイドをアバターに使うことと、ニアヒュームがイーサンの肉体を使うことの違いを説明した。
だが、ニアヒュームは僕の説明では理解が及ばないようだ。
「それは有機アンドロイドが再起動しただけだろう。
君が入っている数刻の間は有機アンドロイドの精神は死んでいる。
人は我が抜けても再起動しないという不具合があるのが問題なのであろう。
それは人の側の問題だ」
「不具合って……。
じゃあ再起動しないと知っていて殺すことに忌避感は無いのか」
「何ゆえ我が人の不具合の責任を取らねばならぬのだ」
これはダメだ。
価値観や感覚が違い過ぎる。
それが諍いを生んでいることが理解出来ていない。
「人は生きるためなら戦う。
殺そうとする相手からは身を守るのが当然だ」
「それは我らも同じ」
「だが、今回はそちらから仕掛けたことが原因ではないのか?」
カイルが諭すように言うが、イーサンには通じなかった。
「我には古い記憶がある。我らを騙し利用し殺したのは人だ」
「だから殺すと? それはお互い様じゃないのか?
僕らもイーサンを殺された。
だがその復讐の気持を抑えて貴様と対話しているのだぞ!」
カイルは兄弟を殺された恨みを抑えて対談に及んでいる。
おそらくニアヒュームには個という存在が理解出来ていない。
集合意識の中の一つが失われても全体には影響しない。
おそらく個の死に対する重さが違うから話が噛み合わないんだ。
「我らはもう騙されん。そう言って後ろから撃ってくるのが人だ」
「どうしてそう言い切る」
「我が侵食したイーサンだったか、この身体の精神はお前たちへの恨み妬みで凝り固まっていたぞ。
いつか殺してやろうと虎視眈々と狙っていた。それが人というものだ」
カイルの必死の説得もまさかのイーサンのせいで台無しだった。
イーサンめなんてやっかいなことを思っていたんだ。
せっかくニアヒュームを説得しようというのに、それの否定材料を身内が提供しているとは。
となるとそろそろあの話を出すべきかな。
僕はカイルに合図を送り話を促す。
「かつてニアヒュームと人は手を取り合い共存していたはずだ。
人はニアヒュームを新たな人類と認め、ニアヒュームは人を侵すことを止めた。
その共存関係が一部の悪人のせいだけで壊れたというのか」
「それは人が裏切ったために壊れたのだ。
我らを騙し皇位を簒奪する手助けをさせるとは……。
我らを認めた真人の王とその群を殺す手伝いを我らがさせられたことは全てのニアヒュームの共有事項だ。
人は信用がならない。それこそが我らがそこから学んだことだ」
真人? 何のことだ?
ニアヒュームは旧帝国人と現帝国人を分けて考えているのか?
「だが全ての人が信用出来ないわけではないだろう」
「問題ない。信用できる真人はもうこの帝国にはいない」
「どうしてそれがわかる?」
「我らには精神の波長が見える。
それ故その有機アンドロイドに人が憑依しているのがわかったのだ。
この帝国にはかつての人はもう居ない。
この帝国の擬人は我らを騙した末裔だ」
つまりニアヒュームは現帝国を憎んでいるのか。
となると真・帝国の血筋には敵意を持っていないかもしれない。
「帝国の中にはまだ旧帝国の末裔がいるとは思わないの?」
「それは精神の波長を見ればわかる。信用出来る末裔には手を出す気はない」
「末裔を見逃してないとは言えないのでは?」
僕はカマをかけてみた。本当に精神の波長が見えているなら、僕が真・帝国の末裔だとわかるはずだ。
「我はきちんと見えているぞ。皇子よ」
「僕が皇子だとわかるんだ。なら彼はどう見える?」
僕はカイルのを指さし問う。
イーサンはカイルを見つめると「フン」と鼻を鳴らした。
「こ奴は皇位を簒奪し皇帝を名乗った群の王の末裔、しかもそのコピーだな」
「コピー? 有機アンドロイドだったはずだか?」
僕はニアヒュームの予想外の言葉に絶句した。
「ほう。こ奴を有機アンドロイドだと思っていたのか?」
僕の訝しがる表情を見てイーサンが続ける。
「こ奴はそちらの言葉で言うクローンだな」
嘘だろカイル。クローンは帝国では忌避される存在じゃなかったのか?
それをカイルが使ってるなんて、帝国はどうなっているんだ。
カイルの意思? それとも影武者をあてがった者の意思?
僕は混乱した。
『残念。これは僕、第1皇子カイルに似せた有機アンドロイドで影武者だ。
僕本人から通信で指示を受けていたけどね』
「お前も騙されていたということではないかな」
突然スピーカーから流れて来たカイルの声にイーサンが反論する。
どちらが真実かは僕には調べようがない。
だが少なくとも僕が皇子、しかも真・帝国側の皇子だとニアヒュームは見分けられた。
『どちらにしろ、我々帝国の民を害するのは止めないということだな?』
「我らが滅んででも根絶やしにしてやろう」
「なら僕らも反撃しなければならないんだぞ!」
「我が滅んでも、我の属する群体全てにこの情報は共有される。
こちらも殲滅目標が判明して逆に感謝する。擬人の皇子よ」
そう言うとイーサンの頭から機械的な触手が伸びる。
目標はカイルの影武者と僕がアバターとして使っている有機アンドロイドだ。
触手はイーサンの頭蓋を貫いておりイーサンはもう再生医療も不可能だ。
この攻撃はせっかく感染したイーサンという器を捨てざるを得ないニアヒュームにとっても最後の手段なのだろう。
暴れる触手がカイルの影武者と有機アンドロイドを破壊する。
と同時に部屋のシステムに侵食をはかろうとしている。
だが、ここは特別室だ。外部とは物理的に遮断されている。
部屋の扉はロックされ外壁はニアヒュームの触手の進入を阻む硬度があった。
部屋の中に麻痺性のガスが撒かれイーサンの肉体が麻痺し倒れる。
その頭部をレーザーが撃ちぬく。すると触手は力を失い動かなくなった。
ニアヒュームのコアがレーザーにより破壊されたのだ。
対話による和平はならなかった。
僕とカイルは帝都の一室で一部始終を見ていた。
カイルは影武者からの情報を仮想空間で受け次元通信で指示を出していた。
僕は仮想空間から有機アンドロイドに接続し、アバターとして現場を体感していた。
襲われる直前、次元通信の接続を切り、2人は顔を見合わせた。
「駄目だったね」
「ああ」
カイルは言葉少なく頷くと、イーサンの葬儀を部下に指示した。
ニアヒューム殲滅のプロパガンダに利用するつもりらしい。
「あそこまで敵対的で帝国自体に恨みを持っているとは思わなかった」
「皇帝代理の立場としてはニアヒューム殲滅を命令するしかない。
今までもそうだったように……」
「全てのニアヒュームが同じ恨みを共有しているとは……。救いのない話だね」
僕は真・帝国に送ったコアを保護しようと密かに思った。
個にして全、全にして個。群れ毎に全ての意識を共有しているとなると、あのコアが一つでも残ればニアヒュームは滅ばないのだろう。
僕もニアヒュームを殺しすぎた。恨まれているのかもしれない。
だが、真・帝国の人々はニアヒュームを無害と思っていた。
ニアヒューム側が敵対しなければ平和に共存するのも夢じゃないだろうに、いったい現帝国の初代皇帝はニアヒュームに何をさせたのだろうか?
その恨みがニアヒュームに人類を敵と認識させている。
現帝国が存在する限り、ニアヒュームは人類の敵となり続けるのだろう。
「ところで妹とは仲良くやってくれているかい?」
カイルの突然の一言に、僕は現実に引き戻され、冷や汗を流すことになった。
しまった。仕事が忙しくてあれから一度も話してない。
いや、通信で話して以来、一度も生身で会ってない。
顔もなんとなくしか思い出せない。
お弁当を持ってきてもらったなぁぐらいしか思い出もない。
これは拙い。なんとかしないと……。
「ごめんなさい。仕事が忙しくて全然会えてません!」
僕は華麗に土下座した。
仕事をさせていたのは自分だからカイルも苦笑いするしかなかった。
つまり殺してはいないんだ」
ニアヒュームの言葉に、僕は有機アンドロイドをアバターに使うことと、ニアヒュームがイーサンの肉体を使うことの違いを説明した。
だが、ニアヒュームは僕の説明では理解が及ばないようだ。
「それは有機アンドロイドが再起動しただけだろう。
君が入っている数刻の間は有機アンドロイドの精神は死んでいる。
人は我が抜けても再起動しないという不具合があるのが問題なのであろう。
それは人の側の問題だ」
「不具合って……。
じゃあ再起動しないと知っていて殺すことに忌避感は無いのか」
「何ゆえ我が人の不具合の責任を取らねばならぬのだ」
これはダメだ。
価値観や感覚が違い過ぎる。
それが諍いを生んでいることが理解出来ていない。
「人は生きるためなら戦う。
殺そうとする相手からは身を守るのが当然だ」
「それは我らも同じ」
「だが、今回はそちらから仕掛けたことが原因ではないのか?」
カイルが諭すように言うが、イーサンには通じなかった。
「我には古い記憶がある。我らを騙し利用し殺したのは人だ」
「だから殺すと? それはお互い様じゃないのか?
僕らもイーサンを殺された。
だがその復讐の気持を抑えて貴様と対話しているのだぞ!」
カイルは兄弟を殺された恨みを抑えて対談に及んでいる。
おそらくニアヒュームには個という存在が理解出来ていない。
集合意識の中の一つが失われても全体には影響しない。
おそらく個の死に対する重さが違うから話が噛み合わないんだ。
「我らはもう騙されん。そう言って後ろから撃ってくるのが人だ」
「どうしてそう言い切る」
「我が侵食したイーサンだったか、この身体の精神はお前たちへの恨み妬みで凝り固まっていたぞ。
いつか殺してやろうと虎視眈々と狙っていた。それが人というものだ」
カイルの必死の説得もまさかのイーサンのせいで台無しだった。
イーサンめなんてやっかいなことを思っていたんだ。
せっかくニアヒュームを説得しようというのに、それの否定材料を身内が提供しているとは。
となるとそろそろあの話を出すべきかな。
僕はカイルに合図を送り話を促す。
「かつてニアヒュームと人は手を取り合い共存していたはずだ。
人はニアヒュームを新たな人類と認め、ニアヒュームは人を侵すことを止めた。
その共存関係が一部の悪人のせいだけで壊れたというのか」
「それは人が裏切ったために壊れたのだ。
我らを騙し皇位を簒奪する手助けをさせるとは……。
我らを認めた真人の王とその群を殺す手伝いを我らがさせられたことは全てのニアヒュームの共有事項だ。
人は信用がならない。それこそが我らがそこから学んだことだ」
真人? 何のことだ?
ニアヒュームは旧帝国人と現帝国人を分けて考えているのか?
「だが全ての人が信用出来ないわけではないだろう」
「問題ない。信用できる真人はもうこの帝国にはいない」
「どうしてそれがわかる?」
「我らには精神の波長が見える。
それ故その有機アンドロイドに人が憑依しているのがわかったのだ。
この帝国にはかつての人はもう居ない。
この帝国の擬人は我らを騙した末裔だ」
つまりニアヒュームは現帝国を憎んでいるのか。
となると真・帝国の血筋には敵意を持っていないかもしれない。
「帝国の中にはまだ旧帝国の末裔がいるとは思わないの?」
「それは精神の波長を見ればわかる。信用出来る末裔には手を出す気はない」
「末裔を見逃してないとは言えないのでは?」
僕はカマをかけてみた。本当に精神の波長が見えているなら、僕が真・帝国の末裔だとわかるはずだ。
「我はきちんと見えているぞ。皇子よ」
「僕が皇子だとわかるんだ。なら彼はどう見える?」
僕はカイルのを指さし問う。
イーサンはカイルを見つめると「フン」と鼻を鳴らした。
「こ奴は皇位を簒奪し皇帝を名乗った群の王の末裔、しかもそのコピーだな」
「コピー? 有機アンドロイドだったはずだか?」
僕はニアヒュームの予想外の言葉に絶句した。
「ほう。こ奴を有機アンドロイドだと思っていたのか?」
僕の訝しがる表情を見てイーサンが続ける。
「こ奴はそちらの言葉で言うクローンだな」
嘘だろカイル。クローンは帝国では忌避される存在じゃなかったのか?
それをカイルが使ってるなんて、帝国はどうなっているんだ。
カイルの意思? それとも影武者をあてがった者の意思?
僕は混乱した。
『残念。これは僕、第1皇子カイルに似せた有機アンドロイドで影武者だ。
僕本人から通信で指示を受けていたけどね』
「お前も騙されていたということではないかな」
突然スピーカーから流れて来たカイルの声にイーサンが反論する。
どちらが真実かは僕には調べようがない。
だが少なくとも僕が皇子、しかも真・帝国側の皇子だとニアヒュームは見分けられた。
『どちらにしろ、我々帝国の民を害するのは止めないということだな?』
「我らが滅んででも根絶やしにしてやろう」
「なら僕らも反撃しなければならないんだぞ!」
「我が滅んでも、我の属する群体全てにこの情報は共有される。
こちらも殲滅目標が判明して逆に感謝する。擬人の皇子よ」
そう言うとイーサンの頭から機械的な触手が伸びる。
目標はカイルの影武者と僕がアバターとして使っている有機アンドロイドだ。
触手はイーサンの頭蓋を貫いておりイーサンはもう再生医療も不可能だ。
この攻撃はせっかく感染したイーサンという器を捨てざるを得ないニアヒュームにとっても最後の手段なのだろう。
暴れる触手がカイルの影武者と有機アンドロイドを破壊する。
と同時に部屋のシステムに侵食をはかろうとしている。
だが、ここは特別室だ。外部とは物理的に遮断されている。
部屋の扉はロックされ外壁はニアヒュームの触手の進入を阻む硬度があった。
部屋の中に麻痺性のガスが撒かれイーサンの肉体が麻痺し倒れる。
その頭部をレーザーが撃ちぬく。すると触手は力を失い動かなくなった。
ニアヒュームのコアがレーザーにより破壊されたのだ。
対話による和平はならなかった。
僕とカイルは帝都の一室で一部始終を見ていた。
カイルは影武者からの情報を仮想空間で受け次元通信で指示を出していた。
僕は仮想空間から有機アンドロイドに接続し、アバターとして現場を体感していた。
襲われる直前、次元通信の接続を切り、2人は顔を見合わせた。
「駄目だったね」
「ああ」
カイルは言葉少なく頷くと、イーサンの葬儀を部下に指示した。
ニアヒューム殲滅のプロパガンダに利用するつもりらしい。
「あそこまで敵対的で帝国自体に恨みを持っているとは思わなかった」
「皇帝代理の立場としてはニアヒューム殲滅を命令するしかない。
今までもそうだったように……」
「全てのニアヒュームが同じ恨みを共有しているとは……。救いのない話だね」
僕は真・帝国に送ったコアを保護しようと密かに思った。
個にして全、全にして個。群れ毎に全ての意識を共有しているとなると、あのコアが一つでも残ればニアヒュームは滅ばないのだろう。
僕もニアヒュームを殺しすぎた。恨まれているのかもしれない。
だが、真・帝国の人々はニアヒュームを無害と思っていた。
ニアヒューム側が敵対しなければ平和に共存するのも夢じゃないだろうに、いったい現帝国の初代皇帝はニアヒュームに何をさせたのだろうか?
その恨みがニアヒュームに人類を敵と認識させている。
現帝国が存在する限り、ニアヒュームは人類の敵となり続けるのだろう。
「ところで妹とは仲良くやってくれているかい?」
カイルの突然の一言に、僕は現実に引き戻され、冷や汗を流すことになった。
しまった。仕事が忙しくてあれから一度も話してない。
いや、通信で話して以来、一度も生身で会ってない。
顔もなんとなくしか思い出せない。
お弁当を持ってきてもらったなぁぐらいしか思い出もない。
これは拙い。なんとかしないと……。
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