【改訂版】異世界転移で宇宙戦争~僕の専用艦は艦隊旗艦とは名ばかりの単艦行動(ぼっち)だった~

北京犬(英)

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帝国内乱編

166 帝国内乱編4 逆襲

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side:ラスティ星系外縁4光年の宙域 ロレンツォ 三人称視点

「このまま攻撃を継続すれば、わが星系に向かって来るニアヒュームは星系手前で撃破可能だな」

 ロレンツォ第7皇子は正面を見据え、順調に減っていくニアヒューム艦の様子に安堵していた。
当初ニアヒュームとの戦力差は互角だった。
新型次元レーダーでニアヒュームの動きをトレースし、母艦級が次元跳躍ワープアウトする瞬間と位置を把握。
要塞艦で待ち構えては要塞砲で母艦級を撃つという、アキラが取った戦術を模倣し実行していた。
今回ラスティ星系に接近中のニアヒュームは母艦級より小さな小母艦級と呼ばれる母艦複数が同時に次元跳躍ワープを行なって来ていた。
そのため次元跳躍ワープ直後を狙える母艦級の数が限定されてしまい、要塞砲の奇襲で撃破出来る数と撃ち漏らして生き残る数を比べれば、後者の方が遥かに多くなっていた。
要塞砲を撃つと要塞艦はエネルギーが不足し、次の要塞砲発射と次元跳躍ワープをするためのクールタイムが発生する。
つまり次の小母艦級を迎撃するための要塞砲の迅速な発射が困難となるのだ。
そうなると、要塞艦の迎撃を逃れた小母艦級は、次の次元跳躍ワープまでの時間を稼ぐために搭載艦を放出して守りを固める。
それを叩こうと思えば、搭載艦同士の艦隊戦を行わざるを得なくなり、ロレンツォ第7皇子の艦隊も少なくない被害を受けていた。
だがそういった戦闘を何回も繰り返すうちに小母艦級の数が減って来たために状況が変わった。
小母艦級の数が減れば小母艦級から放出される搭載艦の総数も減り、艦隊戦でも優位に戦えるようになったのだった。
艦隊で迎撃して要塞砲にエネルギーをチャージし、更に小母艦級を撃破する。
そしてまた艦隊で迎撃しつつ次元跳躍ワープエネルギーを溜めて撤退する。
ラスティ星系までは4光年ある。つまりあと3回はこの要塞砲による襲撃が可能ということだ。
これによりニアヒューム撃退は時間の問題となっていた。

「次元レーダーに反応! 敵母艦級が次元跳躍ワープアウトして来ます!」

 オペレーターの叫びに要塞艦の司令室は騒然となった。

「ばかな! なぜ今まで発見出来なかったのだ!」

 怒号が飛び交う。

「次元レーダーは詳細探査時はレンジが狭くなるのです。今は正面のニアヒュームに指向していました。
ですが、敵の増援は3時の方向つまり真横からやって来ています!」

 皆絶句する。その方向とは所在が判明していたレオナルド星系に向かっていたニアヒュームの方角だったからだ。

「そういうことか……。敵はレオナルド星系に向かっていたニアヒュームだ!
どうやったかは解らないが、レオナルド第5皇子がニアヒュームをこちらに擦り付けたのだ!」

 ロレンツォ第7皇子の予測は正鵠を射ていた。
既にレオナルド第5皇子によるラスティ星系侵攻の報告は受けていた。
レオナルド第5皇子がニアヒュームが迫っている自星系を留守にしてまで侵攻して来た理由、それこそがニアヒュームの誘導が可能だったからに違いなかった。
その予測は配下達にも納得できるものだった。

次元跳躍ワープは可能か?」

「はい。要塞砲にチャージ中のエネルギーをまわせば可能です」

「よし、新たな敵小母艦級が搭載艦を展開する前に艦を収納し撤退する。速やかに行動せよ!」

 ロレンツォ第7皇子に対するニアヒュームの勢力は、レオナルド星系へ向かっていた勢力が合流し、戦力比はロレンツォ第7皇子1に対しニアヒューム2となっていた。
ロレンツォ第7皇子は現宙域からの撤退を開始した。

「また最初から敵の母艦級を減らさなければならないな……」



 翌日、ラスティ星系外縁3光年の宙域でロレンツォ第7皇子はニアヒュームに対し長距離で要塞砲を撃っては逃げるというヒットアンドアウェイ戦法を取りしのいでいた。
だが増援到着により小母艦級の数、そこに搭載されている搭載艦の数で圧倒され始めていた。
次元跳躍ワープで逃げてしのぐにも後何回も出来なかった。
既にラスティ星系まで3光年しか離れていないのだ。
それは後3日、3回の次元跳躍ワープでニアヒュームがラスティ星系に侵入することを意味していた。

「ニアヒューム対策司令に援軍要請を。このままだと我が星系にニアヒュームの侵入を許してしまう……」

 ロレンツォ第7皇子は唇を噛んだ。
血の味が口内に広がる。

レオナルド第5皇子の奴め、どういうつもりだ! 帝国の危機だというのが理解できないのか!」 

 ロレンツォ第7皇子は歯噛みする。レオナルド第5皇子に対する怒りで身体が震えていた。


◇  ◇  ◇  ◇  ◆


side:ラスティ星系 コックス子爵先遣艦隊 三人称視点

 そのころ、コックス子爵の先遣艦隊がラスティ星系に到着した。
次元跳躍門ゲートは封鎖されておらず、そのまま全艦で星系に突入した。
コックス子爵は総数10万の艦隊を任されて慢心していた。
先遣艦隊10万とラスティ星系の要塞衛星、ラスティ星系守備艦隊5万、その戦力があれば、要塞艦の使えないレオナルド第5皇子の艦隊5万など敵ではないと思っていた。
まだ健在であろう要塞衛星とラスティ星系守備艦隊5万、星系に突入して来たコックス子爵の艦隊10万でレオナルド第5皇子を挟み撃ちに出来るはずだった。

カイル第1皇子殿下の到着など待たなくても圧倒出来るわ」

 余裕綽々でコックス子爵がそう独り言ちた口をあんぐりと開いた。
次元跳躍門ゲートを抜けた先にはレオナルド第5皇子の艦隊が要塞衛星の要塞砲の射線を確保するための筒状の空間回廊を開け展開する姿があった。

「か、回避だ!」

 それがコックス子爵の最後の言葉だった。
要塞衛星はレオナルド第5皇子の手に落ちていた。
その要塞砲が次元跳躍門ゲートを出てきたコックス子爵の艦隊に照準を合わせていたのだ。
要塞砲は次元跳躍門ゲートを避けるように斜めに発射された。
その中心はコックス子爵の綺羅びやかな装飾のされたポケット戦艦だった。
コックス子爵の艦の周囲には配下の司令部要員の艦が集結中であり、その一撃に艦隊司令部要員全員が巻き込まれた。
残されたのは先遣軍所属の騎士爵の艦と無人艦だけだった。

 指揮系統が混乱する中、キリル上級騎士は次元通信が妨害されていることに気づき、自らの支配下にある無人艦をまとめ撤退を決意した。
後ろから撃たれることを想定し無人艦を盾にし次元跳躍門ゲートの転移面に向かう。

「なんとか生き残り、この敗戦を報告しなければ……」

 キリル上級騎士は独自の判断で戦場を後にする。
だが、目の前で信じられない光景を目撃する。
先遣艦隊が連れて来た無人艦が、味方の有人艦を攻撃していた。
キリル上級騎士にも無人艦の攻撃が降り注ぐ。
幸い、自分の指揮下にある無人艦は制御が効いている。
キリル上級騎士は指揮下の無人艦を盾に窮地を切り抜ける。
だが、次元跳躍門ゲートまでがいつにも増して遠い。

「早く、早く!」

 その焦りが回避を単調にし、キリル上級騎士は専用艦の右舷に直撃弾を食らう。
ガクっと速度が落ちる。

「あと少しなのに……」

 キリル上級騎士は最後の力を振り絞って通信ポッドを射出した。


◇  ◇  ◇  ◆  ◇


side:電脳空間極秘会議室 アキラ視点

「これがラスティ星系先遣艦隊からの最後の報告だ」

 あきらカイル第1皇子からの緊急招集で電脳空間の極秘会議室にアバターを飛ばしていた。
キリルという上級騎士が放った通信ポッドからコックス子爵敗戦の報告を受けカイル第1皇子に呼ばれたのだ。

「全く。カイルの到着をコックス子爵が待てないとは……。
まさかと思ったが、危惧していたことが当たってしまったか。
所詮小物は小物だったか……」

「要塞衛星がレオナルド第5皇子に奪われ、コックス子爵が戦死。
無人艦が指揮権を奪われ味方を攻撃か……。
となると、カイル第1皇子の主力艦隊の突入も待った方がいいね」

「しかし、誰かの戦術に似ているな」

 カイル第1皇子が僕を見つめて言う。

「もしかするとレオナルド第5皇子は無人艦を再支配する手段を持っているのか?」

 まさか、浸食弾か戦術兵器統合制御システムが使える?
彼は自然発生皇子だという。
皇帝の因子が強いから僕より上の第5皇子なんだろうし有り得るかも。

「そんなはずはないが……」

「少なくとも無人艦を再支配したのは間違い無いんだよね?」

 カイル第1皇子は両手を広げて首を振りわからないというポーズをとった。
要塞砲の攻撃で先遣艦隊10万のうち5千がコックス子爵共々消滅した。
その後、無人艦の指揮権が奪われ、小隊指揮権を持つ有人艦を中心に攻撃を受けた。

「つまり、約9万弱の無人艦がレオナルド第5皇子の手に渡ったということだね。
これでレオナルド第5皇子の艦隊は24万強に拡大したということか」

 レオナルド第5皇子の艦隊は要塞艦に閉じ込められている10万の艦をどうにか出撃させれば15万になる。
コックス子爵はそれを数に入れなかったのかもしれない。
15万対10万だと思えば迂闊に攻撃に移らなかったかもしれない。
その15万にコックス子爵が奪われた9万の無人艦が加われば24万だ。
それに要塞衛星の戦力が加わるとなるとカイル第1皇子の艦隊20万では不利だ。
ラスティ星系守備艦隊5万が加わって25万だとしても難しい。
おそらく同様に無人艦を奪われているだろうからもっと戦力差はあると見た方がいい。
これは困ったことになったぞ。
母艦に収まっているといった例外を除けば、僕が単艦で緊急出撃しても対処不可能な数だな。

「どうするの?」

 僕はカイル第1皇子に向かって今後の対策を尋ねる。

「無人艦の指揮権を奪われる仕組みが判らないうちは、無人艦を向かわせるのは得策ではない。
かと言って、乗っ取られないようにと有人艦だけの艦隊で25万以上を集めるなど現状では不可能だ。
やはりニアヒュームをぶつけてみるか」

ロレンツォ第7皇子からも援軍要請が入っているし、それがいいかもしれないね……」

「ああ、君はロレンツォ第7皇子の艦隊に合流して、作戦を伝えてくれ。
作戦が上手く行ったら、ニアヒュームあるいはレオナルド第5皇子の敗残戦力殲滅を行う。漁夫の利を狙うぞ」

「わかった。向こうでも随時報告を入れる」

 僕はアバターを引き上げると専用艦をロレンツォ第7皇子艦隊に向け発進させた。
ここはロレンツォ第7皇子に速やかに合流すべく次元跳躍ワープ加速装置アクセラレータを使う。
座標は次元レーダーネットワークで把握済みだ。
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