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帝国内乱編
172 帝国内乱編10 アキラ
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side:クロウニ―星系 要塞艦司令室 ロレンツォ 三人称視点
「被害状況を確認しろ!」
レオナルドの要塞砲による攻撃を被弾してしまった。
レオナルドの要塞艦は次元跳躍不能で要塞砲も使用出来ないという油断があった。
要塞艦の司令室でロレンツォが檄を飛ばすと各部署から報告の声が上がる。
「要塞砲使用不能!」
「対消滅反応炉出力正常、問題ありません」
「次元跳躍機関大破しています!」
「防衛機構のレールガン、粒子ビーム砲共に使用可能です」
「搭載艦格納庫約2割が破壊されています。使用可能搭載艦は本要塞艦で2万5千艦弱です」
「次元レーダー、次元通信システム健在。敵の通信妨害継続しています」
ロレンツォは、部下の報告を受けると、覚悟を決めた顔で激を飛ばした。
「我らはこの場から逃げることも出来なくなった。
このまま滅ぶならレオナルドを道連れにする!
搭載艦は全艦発進せよ。要塞艦に向かってくる敵艦を迎撃。
けして要塞艦にニアヒュームを取り付かせるな!
攻撃は要塞艦の全武装でもって行う!
次元レーダーシステム起動、反支配化信号発信!
反攻作戦開始!」
ロレンツォは、アキラが残してくれた支配化信号への対策に全てをかけた。
ロレンツォ指揮下の要塞艦3艦も通信妨害の中、阿吽の呼吸で搭載艦を出撃させる。
正規軍の要塞艦5艦はニアヒュームに取り憑かれ侵食されたようで沈黙していた。
諸々の被害を差し引いて合計8万艦の艦隊がレオナルドに牙を剥いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
side:クロウニ―星系 ニアヒューム化要塞艦司令室 レオナルド 三人称視点
「味方無人艦、制御を受け付けません!」
ロレンツォの要塞艦から発せられた強力な信号により、帝国軍より奪い支配下に置いていた艦が支配から脱してしまった。
その数6万艦。当初より減ったとはいえ帝国側に再支配されたら脅威だった。
レオナルドが率いて来た艦隊は38万艦だった。
レオナルド配下の艦隊が11万艦+正規軍から奪った艦隊6万艦、ニアヒュームの艦隊が21万艦だ。
要塞艦5艦、ニアヒュームの要塞艦10艦に搭載できる数は通常なら25万艦だった。
数が合わないがレオナルドは予想の斜め上の行動に出た。
小母艦級により侵攻して来たニアヒューム艦は、巡洋艦型以下しかいなかった。
そのおかげでレオナルドの要塞艦はキャパシティを越えるニアヒューム艦を詰め込んで次元跳躍することが出来たのだ。
帝国に於いて要塞艦に搭載する艦数は3万艦が推奨されていた。
これはエネルギー効率や格納庫配置などの関係で余裕を持たせた数字だった。
しかし、戦艦の格納庫に小型艦を複数入れるとかデッドスペースを使うなどすれば、最大5万艦程度までは搭載可能だ。
レオナルドの要塞艦は5艦あり、その手を使えば25万艦は搭載できる。
レオナルドの搭載艦の数は17万艦。スペースは8万艦分あった。
ニアヒュームの小母艦級10に搭載可能な艦数は最大10万艦だったため、ニアヒュームの残り11万艦は空いた格納庫の隙間にすし詰め状態で連れて来たのだ。
これは小母艦級をブースターに使うことで成立した荒業だった。
その無理をしてまで連れて来た無人艦6万艦がロレンツォの工作により支配下から離脱していた。
「ロレンツォの野郎か! この死にぞこないが!
奴の要塞艦に要塞砲を集中砲撃しやがれ!」
「それが……。ニアヒュームの支配も安定せず、我が方の要塞艦も要塞砲が撃てません!」
「くそ! ロレンツォの野郎め! 奴は俺の親衛艦隊でぶっ殺せ!
それと黒騎士にニアヒュームの尻を叩かせろ! さっさと要塞砲を使えるようにさせやがれ!」
レオナルドが現在使える戦力は、正規軍から奪った無人艦が離脱したため、ニアヒューム含めて32万艦ほどに減っていた。
小母艦級により侵攻して来たニアヒューム艦は、巡洋艦型以下しかいなかったため、見た目の数よりは戦力は低いかもしれない。
そのニアヒューム艦は支配が不安定で思ったように動かない。
レオナルドは配下の艦隊11万艦を主力として攻勢に出ていた。
それに対しロレンツォ側の戦力は8万艦しかなかった。
支配が不安定とはいえニアヒュームの艦隊も21万艦もいる。
現在、ロレンツォの要塞艦はなぶり殺し状態になっていた。
「ニアヒュームに侵食されていた敵要塞艦、ニアヒュームを排除し戦線に復帰しました!」
「バカな! 何があったってんだ!」
そこには要塞艦の格納庫の扉を破り出撃した帝国軍搭載艦の数々が、要塞艦に取りついたニアヒュームのコアを破壊する様子が映っていた。
要塞艦に触手を伸ばしたのはいいが、そのコアは艦とともに外部に露出していたのだ。
その時、レオナルドに吉報が届いた。
「味方要塞艦、要塞砲発射可能です!」
「なんだと!? よし目標はロレンツォの野郎だ。野郎を仕留めろ!」
ロレンツォの要塞艦に5条の要塞砲が向かって行った。
◇ ◇ ◇ ◆ ◇
side:謎の空間 アキラ視点
「また白い部屋だ」
僕は、どうやらまたアブダクションされたらしい。
『いいえ、あなたの肉体は精神を保持する限界を越えました。
ここは精神の集積場です、このままでは集合意識に合流し個の意識は消滅します』
「このままでは?」
『はい。精神のDNAの記述に則り術式展開します。
肉体蘇生、精神を転移、再起動します』
「え?」
目が覚める。夢を見ていたようだ。
「知らない天井だ」
言ってみたかっただけだ。知らないのは天井じゃなくコクピットの方だった。
僕の専用艦のものではない。もっと高度な雰囲気を持つコクピットに僕は収まっていた。
「ここは?」
僕の問いに電脳が答える。
『あなたの専用艦の本体内CICです』
「本体?」
『次元格納庫に納められた建造中の専用艦のことです。
外部に出ていたものはその一部、外部ユニットに過ぎません』
「つまり外部ユニットが破壊されたから、こっちに転送されたということなのかな?」
『……そう思ってもらって構いません』
うーん。夢が気になるけどまあいいや。
「どちらにしろ生き残ったということに違いない。
よし、現況報告を頼む」
『はい。敵要塞艦から要塞砲で攻撃を受けました。外部ユニットは消滅。
敵要塞艦にニアヒューム反応を確認しました』
「なるほど、要塞艦をニアヒューム化して使ったのか。盲点だったが油断だったな。
ロレンツォの被害は?」
『ロレンツォ殿下指揮下の要塞艦4艦はニアヒュームによる要塞砲攻撃の直撃を受けました。
現在搭載艦の護衛のもと要塞艦による戦闘を継続しています。
帝国正規軍の要塞艦5艦はニアヒュームの侵食を受け乗っ取られました』
「レオナルドは?」
『支配化信号対策により、乗っ取られた正規軍6万艦が離脱、
ニアヒューム化要塞艦の要塞砲が使用不能状態のようです』
「要塞艦の自爆装置は?」
『ニアヒュームに侵食された際に解除されたもようです』
最悪だな。最後の手段も使えないか。
帝国の資産だからと自爆を躊躇したのは失敗だったな。
だがレオナルドも万全じゃないようだ。
「こちらは動けるのか?」
『最終調整終了まであと10分お待ちください』
「逃げられるか? いや、勝てるか?」
『お任せ下さい。
次元格納庫内で建造中のためまだ未完成ですが、現在の機能のみでも敵を殲滅してご覧に入れます』
「へえ。今は次元格納庫の中なのか」
『はい。我が艦が通常空間に出た後に次元格納庫を収納します』
「中に入っていたものが入れ物を収納するとはわけがわからないよ」
僕は新たな専用艦の仕様を電脳から教えてもらいながら最終調整終了を待った。
『準備完了ました。
ロレンツォ殿下の支配化信号対策が機器の破損により無効化されたもよう。
ニアヒューム化要塞艦の要塞砲が発射準備に入っています。
発射しました』
「緊急発進!
次元格納庫から出ると同時に支配化信号対策始動、敵の支配を強制解除、最大速度で突っ込み敵を排除する!
ロレンツォの要塞艦を守れるか?」
『お任せ下さい。カウントダウンします。3・2・1 発進です』
次元格納庫から飛び出した専用艦は2km級の戦艦だった。諸元は以下。
『新AKIRA』
艦種 艦隊旗艦
艦体 全長2km 高速大戦艦型 2腕 次元格納庫S型 (親衛護衛艦1万8千 ダミー艦11 艦載機『すてるす』1 予備部品多数)
主機 縮退炉(200) 高速推進機S型4基 高速スラスターS型32基 (+次元跳躍機関)
補機 対消滅反応炉S型(25)×3 B型(20)×2 E型(17)×2
兵装 主砲 反物質粒子砲 4基4門
副砲 要塞砲(簡易型)1基1門
長砲身40cmレールガン単装8基8門
40cm粒子ビーム砲連装4基8門
対宙砲 10cmレーザー連装20基40門
長砲身5cmレールガン単装10基10門 通常弾 10万/∞ 特殊弾 5万/∞ 特殊弾 5万/∞ 特殊弾 5万/∞
ミサイル発射管 A型対宙20連ポッド10基200門 最大弾数50×200 ミサイル残弾 1万
対艦刀 S型1
防御 耐ビームコーティング耐実体弾多重複合特殊鋼装甲板(SS型相当)
ビームキャンセラーS型(対ビームバリヤー)
耐ビームコーティング多重特殊鋼装甲盾S型 1
停滞フィールド(対実体弾バリヤー)S型
相転移フィールド(汎用バリヤー)
電子兵装 電脳S型 次元レーダー改 対艦レーダーS型 次元通信機S型 戦術兵器統合制御システムSS型 サブ電脳S型×2
空きエネルギースロット 28
状態 良好
僕の頭の中に新たな専用艦の諸元及び使用手引が流れ込んで来る。
僕は一瞬で新専用艦の性能を把握した。
簡易型要塞砲と相転移フィールドは必要エネルギースロット数20ずつですか。
そのために対消滅反応炉B型2基を専用で使いますか……。
どう見てもチートじゃないか。
僕は次元格納庫から新たな専用艦で飛び出すと支配化信号対策を始動し無人艦へ強制停止命令を発する。
同時にレオナルド側の無人艦に強制支配をかける。
次元通信によるナーブクラックだ。
「相転移フィールド展開、縮退炉リミッター解除!
行け―! 最大速度!」
敵要塞砲の5つの光条が向かうロレンツォの要塞艦に向け僕は専用艦を突っ込ませる。
その光条がロレンツォの要塞艦に突き刺さる直前、僕の専用艦が要塞艦の前に割り込む。
相転移フィールドに当たった要塞砲の光条が熱エネルギーを奪われフィールドの硬度へと変換される。
光条の運動エネルギーはフィールドの硬度により熱エネルギーに変わる。
その熱エネルギーがさらにフィールドの硬度を上げる。
つまり敵の攻撃がバリヤーの硬度を高め敵の攻撃を防ぐということだ。
発射された要塞砲を防ぐと、僕は対艦刀を艦首に展開し、大戦艦が急に現れたため混乱するレオナルド側の要塞艦に向け突撃をかける。
亜光速の機動が宇宙に蒼い光のラインを描く。
狙いはレオナルド側の要塞艦に侵食したニアヒュームのコア。
亜光速で機動し接近、対艦刀で串刺しにする。浅い。レールガンを撃ち込む。
コアを撃ち抜くと、迎撃の火線を回避し、次の獲物へと向かう。
ニアヒューム化要塞艦の奥に鎮座するコアの位置は次元レーダーが把握している。
ターゲットが実画面上にグラフィックでAR表示される。
要塞艦に侵食しているニアヒュームは残り4。
それを次々に破壊していく。
正規軍の要塞艦に侵食したニアヒュームは正規軍の搭載艦が格納庫を破って始末したようだ。
この世界の宇宙艦は次元跳躍以外での移動速度は大したことがない。
せいぜい最高速度でマッハ1000程度だ。
巡航速度だともっと遅いし、艦隊行動中の戦闘では速度がありすぎると衝突の危険があり、もっと遅くなる。
光速はマッハ88万強。亜光速といえども、通常の宇宙艦の速度とは桁が違うと理解してもらえるだろう。
ニアヒューム化要塞艦のコアを全て破壊すると、次元レーダーで味方を攻撃中のニアヒュームを索敵、マルチロックオンをかける。
ニアヒューム艦に10門の長砲身5cmレールガンからGバレットを撃ち込んで行く。
敵艦もレールガンの弾体も全てが止まって見える。僕の思考にも加速がかかっているようだ。
コース上の邪魔なニアヒューム艦には専用艦を体当たりさせる。
拉げるニアヒューム艦。だが、相転移フィールドにより専用艦はノーダメージだ、
そしてついに味方の要塞艦に纏わり付くニアヒュームは居なくなった。
「さてレオナルドはどこだ?」
「被害状況を確認しろ!」
レオナルドの要塞砲による攻撃を被弾してしまった。
レオナルドの要塞艦は次元跳躍不能で要塞砲も使用出来ないという油断があった。
要塞艦の司令室でロレンツォが檄を飛ばすと各部署から報告の声が上がる。
「要塞砲使用不能!」
「対消滅反応炉出力正常、問題ありません」
「次元跳躍機関大破しています!」
「防衛機構のレールガン、粒子ビーム砲共に使用可能です」
「搭載艦格納庫約2割が破壊されています。使用可能搭載艦は本要塞艦で2万5千艦弱です」
「次元レーダー、次元通信システム健在。敵の通信妨害継続しています」
ロレンツォは、部下の報告を受けると、覚悟を決めた顔で激を飛ばした。
「我らはこの場から逃げることも出来なくなった。
このまま滅ぶならレオナルドを道連れにする!
搭載艦は全艦発進せよ。要塞艦に向かってくる敵艦を迎撃。
けして要塞艦にニアヒュームを取り付かせるな!
攻撃は要塞艦の全武装でもって行う!
次元レーダーシステム起動、反支配化信号発信!
反攻作戦開始!」
ロレンツォは、アキラが残してくれた支配化信号への対策に全てをかけた。
ロレンツォ指揮下の要塞艦3艦も通信妨害の中、阿吽の呼吸で搭載艦を出撃させる。
正規軍の要塞艦5艦はニアヒュームに取り憑かれ侵食されたようで沈黙していた。
諸々の被害を差し引いて合計8万艦の艦隊がレオナルドに牙を剥いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
side:クロウニ―星系 ニアヒューム化要塞艦司令室 レオナルド 三人称視点
「味方無人艦、制御を受け付けません!」
ロレンツォの要塞艦から発せられた強力な信号により、帝国軍より奪い支配下に置いていた艦が支配から脱してしまった。
その数6万艦。当初より減ったとはいえ帝国側に再支配されたら脅威だった。
レオナルドが率いて来た艦隊は38万艦だった。
レオナルド配下の艦隊が11万艦+正規軍から奪った艦隊6万艦、ニアヒュームの艦隊が21万艦だ。
要塞艦5艦、ニアヒュームの要塞艦10艦に搭載できる数は通常なら25万艦だった。
数が合わないがレオナルドは予想の斜め上の行動に出た。
小母艦級により侵攻して来たニアヒューム艦は、巡洋艦型以下しかいなかった。
そのおかげでレオナルドの要塞艦はキャパシティを越えるニアヒューム艦を詰め込んで次元跳躍することが出来たのだ。
帝国に於いて要塞艦に搭載する艦数は3万艦が推奨されていた。
これはエネルギー効率や格納庫配置などの関係で余裕を持たせた数字だった。
しかし、戦艦の格納庫に小型艦を複数入れるとかデッドスペースを使うなどすれば、最大5万艦程度までは搭載可能だ。
レオナルドの要塞艦は5艦あり、その手を使えば25万艦は搭載できる。
レオナルドの搭載艦の数は17万艦。スペースは8万艦分あった。
ニアヒュームの小母艦級10に搭載可能な艦数は最大10万艦だったため、ニアヒュームの残り11万艦は空いた格納庫の隙間にすし詰め状態で連れて来たのだ。
これは小母艦級をブースターに使うことで成立した荒業だった。
その無理をしてまで連れて来た無人艦6万艦がロレンツォの工作により支配下から離脱していた。
「ロレンツォの野郎か! この死にぞこないが!
奴の要塞艦に要塞砲を集中砲撃しやがれ!」
「それが……。ニアヒュームの支配も安定せず、我が方の要塞艦も要塞砲が撃てません!」
「くそ! ロレンツォの野郎め! 奴は俺の親衛艦隊でぶっ殺せ!
それと黒騎士にニアヒュームの尻を叩かせろ! さっさと要塞砲を使えるようにさせやがれ!」
レオナルドが現在使える戦力は、正規軍から奪った無人艦が離脱したため、ニアヒューム含めて32万艦ほどに減っていた。
小母艦級により侵攻して来たニアヒューム艦は、巡洋艦型以下しかいなかったため、見た目の数よりは戦力は低いかもしれない。
そのニアヒューム艦は支配が不安定で思ったように動かない。
レオナルドは配下の艦隊11万艦を主力として攻勢に出ていた。
それに対しロレンツォ側の戦力は8万艦しかなかった。
支配が不安定とはいえニアヒュームの艦隊も21万艦もいる。
現在、ロレンツォの要塞艦はなぶり殺し状態になっていた。
「ニアヒュームに侵食されていた敵要塞艦、ニアヒュームを排除し戦線に復帰しました!」
「バカな! 何があったってんだ!」
そこには要塞艦の格納庫の扉を破り出撃した帝国軍搭載艦の数々が、要塞艦に取りついたニアヒュームのコアを破壊する様子が映っていた。
要塞艦に触手を伸ばしたのはいいが、そのコアは艦とともに外部に露出していたのだ。
その時、レオナルドに吉報が届いた。
「味方要塞艦、要塞砲発射可能です!」
「なんだと!? よし目標はロレンツォの野郎だ。野郎を仕留めろ!」
ロレンツォの要塞艦に5条の要塞砲が向かって行った。
◇ ◇ ◇ ◆ ◇
side:謎の空間 アキラ視点
「また白い部屋だ」
僕は、どうやらまたアブダクションされたらしい。
『いいえ、あなたの肉体は精神を保持する限界を越えました。
ここは精神の集積場です、このままでは集合意識に合流し個の意識は消滅します』
「このままでは?」
『はい。精神のDNAの記述に則り術式展開します。
肉体蘇生、精神を転移、再起動します』
「え?」
目が覚める。夢を見ていたようだ。
「知らない天井だ」
言ってみたかっただけだ。知らないのは天井じゃなくコクピットの方だった。
僕の専用艦のものではない。もっと高度な雰囲気を持つコクピットに僕は収まっていた。
「ここは?」
僕の問いに電脳が答える。
『あなたの専用艦の本体内CICです』
「本体?」
『次元格納庫に納められた建造中の専用艦のことです。
外部に出ていたものはその一部、外部ユニットに過ぎません』
「つまり外部ユニットが破壊されたから、こっちに転送されたということなのかな?」
『……そう思ってもらって構いません』
うーん。夢が気になるけどまあいいや。
「どちらにしろ生き残ったということに違いない。
よし、現況報告を頼む」
『はい。敵要塞艦から要塞砲で攻撃を受けました。外部ユニットは消滅。
敵要塞艦にニアヒューム反応を確認しました』
「なるほど、要塞艦をニアヒューム化して使ったのか。盲点だったが油断だったな。
ロレンツォの被害は?」
『ロレンツォ殿下指揮下の要塞艦4艦はニアヒュームによる要塞砲攻撃の直撃を受けました。
現在搭載艦の護衛のもと要塞艦による戦闘を継続しています。
帝国正規軍の要塞艦5艦はニアヒュームの侵食を受け乗っ取られました』
「レオナルドは?」
『支配化信号対策により、乗っ取られた正規軍6万艦が離脱、
ニアヒューム化要塞艦の要塞砲が使用不能状態のようです』
「要塞艦の自爆装置は?」
『ニアヒュームに侵食された際に解除されたもようです』
最悪だな。最後の手段も使えないか。
帝国の資産だからと自爆を躊躇したのは失敗だったな。
だがレオナルドも万全じゃないようだ。
「こちらは動けるのか?」
『最終調整終了まであと10分お待ちください』
「逃げられるか? いや、勝てるか?」
『お任せ下さい。
次元格納庫内で建造中のためまだ未完成ですが、現在の機能のみでも敵を殲滅してご覧に入れます』
「へえ。今は次元格納庫の中なのか」
『はい。我が艦が通常空間に出た後に次元格納庫を収納します』
「中に入っていたものが入れ物を収納するとはわけがわからないよ」
僕は新たな専用艦の仕様を電脳から教えてもらいながら最終調整終了を待った。
『準備完了ました。
ロレンツォ殿下の支配化信号対策が機器の破損により無効化されたもよう。
ニアヒューム化要塞艦の要塞砲が発射準備に入っています。
発射しました』
「緊急発進!
次元格納庫から出ると同時に支配化信号対策始動、敵の支配を強制解除、最大速度で突っ込み敵を排除する!
ロレンツォの要塞艦を守れるか?」
『お任せ下さい。カウントダウンします。3・2・1 発進です』
次元格納庫から飛び出した専用艦は2km級の戦艦だった。諸元は以下。
『新AKIRA』
艦種 艦隊旗艦
艦体 全長2km 高速大戦艦型 2腕 次元格納庫S型 (親衛護衛艦1万8千 ダミー艦11 艦載機『すてるす』1 予備部品多数)
主機 縮退炉(200) 高速推進機S型4基 高速スラスターS型32基 (+次元跳躍機関)
補機 対消滅反応炉S型(25)×3 B型(20)×2 E型(17)×2
兵装 主砲 反物質粒子砲 4基4門
副砲 要塞砲(簡易型)1基1門
長砲身40cmレールガン単装8基8門
40cm粒子ビーム砲連装4基8門
対宙砲 10cmレーザー連装20基40門
長砲身5cmレールガン単装10基10門 通常弾 10万/∞ 特殊弾 5万/∞ 特殊弾 5万/∞ 特殊弾 5万/∞
ミサイル発射管 A型対宙20連ポッド10基200門 最大弾数50×200 ミサイル残弾 1万
対艦刀 S型1
防御 耐ビームコーティング耐実体弾多重複合特殊鋼装甲板(SS型相当)
ビームキャンセラーS型(対ビームバリヤー)
耐ビームコーティング多重特殊鋼装甲盾S型 1
停滞フィールド(対実体弾バリヤー)S型
相転移フィールド(汎用バリヤー)
電子兵装 電脳S型 次元レーダー改 対艦レーダーS型 次元通信機S型 戦術兵器統合制御システムSS型 サブ電脳S型×2
空きエネルギースロット 28
状態 良好
僕の頭の中に新たな専用艦の諸元及び使用手引が流れ込んで来る。
僕は一瞬で新専用艦の性能を把握した。
簡易型要塞砲と相転移フィールドは必要エネルギースロット数20ずつですか。
そのために対消滅反応炉B型2基を専用で使いますか……。
どう見てもチートじゃないか。
僕は次元格納庫から新たな専用艦で飛び出すと支配化信号対策を始動し無人艦へ強制停止命令を発する。
同時にレオナルド側の無人艦に強制支配をかける。
次元通信によるナーブクラックだ。
「相転移フィールド展開、縮退炉リミッター解除!
行け―! 最大速度!」
敵要塞砲の5つの光条が向かうロレンツォの要塞艦に向け僕は専用艦を突っ込ませる。
その光条がロレンツォの要塞艦に突き刺さる直前、僕の専用艦が要塞艦の前に割り込む。
相転移フィールドに当たった要塞砲の光条が熱エネルギーを奪われフィールドの硬度へと変換される。
光条の運動エネルギーはフィールドの硬度により熱エネルギーに変わる。
その熱エネルギーがさらにフィールドの硬度を上げる。
つまり敵の攻撃がバリヤーの硬度を高め敵の攻撃を防ぐということだ。
発射された要塞砲を防ぐと、僕は対艦刀を艦首に展開し、大戦艦が急に現れたため混乱するレオナルド側の要塞艦に向け突撃をかける。
亜光速の機動が宇宙に蒼い光のラインを描く。
狙いはレオナルド側の要塞艦に侵食したニアヒュームのコア。
亜光速で機動し接近、対艦刀で串刺しにする。浅い。レールガンを撃ち込む。
コアを撃ち抜くと、迎撃の火線を回避し、次の獲物へと向かう。
ニアヒューム化要塞艦の奥に鎮座するコアの位置は次元レーダーが把握している。
ターゲットが実画面上にグラフィックでAR表示される。
要塞艦に侵食しているニアヒュームは残り4。
それを次々に破壊していく。
正規軍の要塞艦に侵食したニアヒュームは正規軍の搭載艦が格納庫を破って始末したようだ。
この世界の宇宙艦は次元跳躍以外での移動速度は大したことがない。
せいぜい最高速度でマッハ1000程度だ。
巡航速度だともっと遅いし、艦隊行動中の戦闘では速度がありすぎると衝突の危険があり、もっと遅くなる。
光速はマッハ88万強。亜光速といえども、通常の宇宙艦の速度とは桁が違うと理解してもらえるだろう。
ニアヒューム化要塞艦のコアを全て破壊すると、次元レーダーで味方を攻撃中のニアヒュームを索敵、マルチロックオンをかける。
ニアヒューム艦に10門の長砲身5cmレールガンからGバレットを撃ち込んで行く。
敵艦もレールガンの弾体も全てが止まって見える。僕の思考にも加速がかかっているようだ。
コース上の邪魔なニアヒューム艦には専用艦を体当たりさせる。
拉げるニアヒューム艦。だが、相転移フィールドにより専用艦はノーダメージだ、
そしてついに味方の要塞艦に纏わり付くニアヒュームは居なくなった。
「さてレオナルドはどこだ?」
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