父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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家出編

014 カナタ、ヴァルチャードッグと戦う

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 カナタは戦い方など何も知らなかった。
だが、頭には知らないはずの知識・・・・・・・・・が浮かんで来る。
それは勇者として転生するはずだった多田野信の知識だった。
彼の現世でのゲーム体験がカナタの戦うための知識となった。

「肉ゴーレム……。名前が無いと不便だな……。
えーと、名前は戦闘中に呼ぶためにも短い方がいいな……。
そうだ。ニクにしよう」

 その瞬間、カナタとニクの間に精神的なパスのようなものが繋がり、ニクに大量の魔力が流れ込んだことにカナタは気付かなかった。
カナタの勇者としての肉体が持つMPは、呪いを受けていながらなお膨大だったので、流れた魔力の量は一般的には大量だったのだが、カナタ自身は気に掛けるような量ではなかったのだ。

 そして、ニクという名前が世間では肉奴隷=性奴隷を指す隠語だなどとは知らないカナタだった。

「僕はこの大木を背にするので、ニクは僕の前で盾役をやって欲しい。
ヴァルチャードッグ、ああ長い。犬でいいか。
ニクは正面から来る犬を盾で食い止めて欲しい。
その犬に僕が魔法を当てたり剣で倒す。
ニクも隙を見て槍で犬を倒して欲しい。
横からの犬はファイアーウォールで防ぐつもりだ」

 多田野信のゲーム知識を使って一応作戦というものが出来た。
盾役などという専門用語をカナタは知りもしないのに口にしていた。
この知らないはずの知識・・・・・・・・・が浮かんでくることをカナタは不思議に思ったが、現状は命の危機なので気にしないことにした。

「よし! 戦闘開始だ!」

 森の奥にヴァルチャードッグの赤い目が光って見えた。
とうとうヴァルチャードッグの群がやって来たのだ。
ヴァルチャードッグは、元の世界で言うハイエナに形状は似ているかもしれない。
それが体長2mを超える大きさになった感じだ。
大きな犬歯に頑丈な顎、爪は発達しておらず、攻撃手段は主に口によるものと思っていいだろう。


 カナタはファイアウォールを無詠唱で2つ出現させた。
カナタとニクの左右側面を守る形だ。
そちらから襲おうとしていたヴァルチャードッグは、その炎の勢いに二の足を踏んだ。
その火勢はどう見ても初級魔法のものではなかった。
しかし、カナタはそんなことは気付いていない。
初めて放った火魔法、しかも他人の火魔法も見たことがないので比較のしようがない。
なので、これで当たり前だと思っているのだ。

 ヴァルチャードッグは、残った隙間である正面から攻撃するしかなくなった。
正面から攻撃出来るのはせいぜい2頭まで。
カナタたちは戦力の分散に成功したのだ。

 ニクの盾にヴァルチャードッグが体当たりする。
その隙にもう1頭がニクの横をすり抜けようとする。
その1頭にカナタがファイアボールを当てる。
ファイアボールを受けたヴァルチャードッグは、一瞬で消し炭になった。
どう見てもファイアボールの威力ではない。
その間にニクも盾の向こうのヴァルチャードッグを槍で仕留めていた。

「いけるぞ!」

 その後は同じパターンの繰り返しだった。
ファイアウォールの勢いは衰えず、カナタたちは正面の敵に専念すれば良いという簡単なお仕事と化していた。
カナタの魔法も強力だし、ニクの槍使いもまるで上級者のようだった。
そもそも肉ゴーレムの動きとは思えないほど動きが俊敏だ。

 ついにヴァルチャードッグの残りは4頭となっていた。
2頭が正面から突っ込んで来る。
また戦力を分散して同じ作業で仕留められる。
そう思った時、一際大きな身体のヴァルチャードッグが、もう一つの侵攻ルートである上から襲って来た。

 その個体は三角飛びのよう木の幹を蹴り、カナタたちの上を取ったのだ。

「拙い!」

 カナタが叫ぶと同時にニクは盾を上に持ちあげ、カナタの身を庇った。
正面には2頭のヴァルチャードッグがいる。
その攻撃を防ぐべき盾をカナタの護りに使ったのだ。
ヴァルチャードッグに噛みつかれるニク。

「ニク!」

 カナタはファイアボールを同時発動してヴァルチャードッグを消し飛ばす。
カナタは自分がファイアボールを複数同時に発動できるとは気付いていなかったのだ。
咄嗟のことでやってみたら出来てしまった。
それなら最初からやっていれば、もっと簡単にヴァルチャードッグを倒せていただろう。
ニクも傷つかずに済んだはず。後の祭りだった。

 ヴァルチャードッグとの闘いは、カナタたちの勝利に終わった。
だが、ニクは倒れ、身体の下に血の池が広がっていた。
ニクは傷つき瀕死となっていたのだ。
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