父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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家出編

015 カナタ、肉ゴーレムを助ける

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「助けなきゃ!」

 自分を庇い倒れたニクを見て、カナタは助けなければと思った。
この世界の一般的な感覚では、肉ゴーレムは囮として捨てられる消耗品だった。
傷ついて倒れてもそのまま放置が通常の対応だった。

「どうしよう。ハイポーションは水代わりに飲んじゃったし……」

 ニクはカナタを庇うために自らの防御を捨て、上から攻撃してくるヴァルチャードッグに盾を掲げた。
そのせいで正面から攻撃して来たヴァルチャードッグを避けられなかった。
ニクは皮の鎧を着ていたが、盾を上に掲げるために腕をあげたことで、皮の鎧では防御出来ない脇をヴァルチャードッグに晒してしまった。
皮の鎧は肩と胴を防御するように作られているが、腕を稼働させるために脇の部分は覆っていないのが普通だ。
その弱点をニクはカナタを護るために躊躇せずに晒したのだ。

 この世界の魔物は倒されると煙となって消える。
一説によると魔物は魔素によって形作られており、死ぬと魔素に返るから消えるのだという。
ニクに噛みついていたヴァルチャードッグが煙となって消える。
それに伴い、ニクの脇に空いたヴァルチャードッグの牙によって開けられた穴から血が噴き出す。
よく事故で救急搬送されるときに、刺さった物体は抜かないようにするという。
これは物体が刺さっていたことで止まっていた血が噴き出したり、抜く時に組織を余計に傷つけるため、より危険だからだと言われている。
魔物が消えることでその最悪な状態になってしまった。

「このままでは出血多量で……」

 カナタの頭にまた知らないはずの知識が閃く。
出血多量が何なのかは知らなくとも、ニクが危険な状態であるということをカナタは感覚的に理解できた。

「まず止血を」

 カナタは上半身の装備を下着まで脱ぎ、上半身裸になった。
手にした下着のシャツを畳むと、ニクの脇の穴に強くあてる。
知らないはずの知識を総動員した措置だ。

 しかし、これは応急措置にしかすぎない。
助けるためにはポーションか回復魔法が必要だ。
カナタは決意した。最後のガチャを引こうと。

「仕方ない。最後の500DGでノーマルガチャを1回引こう」

 これは完全に賭けだった。
ノーマルガチャは、アイテム、スキル、スペルの何が出るかわからない。
カナタの望む結果となる確率は1/1億もないかもしれない。
しかし、カナタの所持金残高は、その1回分しかなかったのだ。

 携帯ガチャ機が空中に出現すると、500DGが課金される。
カナタは下着のシャツをニクの傷に両手で押し付けて止血をしているので、課金の手順もガチャを回すことも出来ない。
しかし、この緊急事態にスキルが空気を読んだのか、全て自動で行われる。

ガチャガチャ ガコン

 エフェクトは赤。
携帯ガチャ機の恩恵でレアリティ1UPのHNオーブが出た。
続けてオーブが自動で開放され、空中にメッセージが出る。

HN魔法 上級生活魔法【回復(微小)】

「来た! 回復魔法! 【回復(微小)】!」

 カナタはこの幸運を神様に感謝し、早速【回復(微小)】を使う。
カナタが手をあてたところに、小さな青い光の回復エフェクトが出るが何の変化も見られない。

「どうして? あ、微小だから?」

 カナタが唱えた【回復(微小)】ではニクの大怪我は治せなかった。
それもそのはず、【回復(微小)】は、掠り傷や打撲に小さな切り傷を2cm×1cmぐらい治すことが出来るだけだからだ。

「魔法図鑑オープン!」

【回復(微小)】掠り傷や打撲に小さな切り傷を2cm×1cmぐらい治すことが出来る

「そういうことか。どうしよう……。このままじゃニクが……」

 そこにまた知らないはずの知識が浮かぶ。

「傷ついた血管だけなら2cm×1cmの効果範囲内だな」

 カナタはニクの体内の血管をイメージする。
と同時に【魔力探知】と【MAP】が発動、ニクの血管地図が作成される。
そこには傷つき出血する腋窩動脈えきかどうみゃくが図示されていた。

「ここか! 【回復(微小)】」

 カナタの回復魔法がピンポイントで動脈を治療する。
その治療部位は2cm×1cmの傷に相当していた。
これにより出血は止まった。

「よし、出血は止まったぞ」

 しかし、ただ単に出血が止まっただけだ。
失った血も戻って来ないし、ニクの脇にはヴァルチャードッグの牙による穴が開いたままだ。

「どうしよう……。もうお金がないし……」

 と口にしたカナタの視線の先にDGが落ちていた。
そう、ヴァルチャードッグ20頭を倒した時にドロップしたDGだ。
ガチャオーブも落ちている。
この世界で魔物を倒すとDGが得られ、稀にガチャオーブをドロップする。
DGは硬貨としてドロップし、【お財布】スキルで収納すると電子マネーのように使える。
鉄貨1枚1DG、銅貨1枚10DG、大銅貨1枚100DG、銀貨1枚1千DG、金貨1枚10万DG、白金貨1枚1千万DGとなる。
ヴァルチャードッグ1頭につき銀貨1枚に大銅貨数枚というドロップ率だった。
リーダー的な大型の個体は銀貨5枚落ちていた。
銀貨24枚、大銅貨43枚落ちていて、合計28,300DGの収入だった。

「課金でアイテム10連ガチャを!」

 カナタはDGを【お財布】に入れると1万DG課金してアイテム10連ガチャを引いた。

ガチャガチャ ガガキンガガガキンガガガコ

 エフェクトは赤の中に銅と銀。

HNアイテム 冒険者の服(女性用)
Rアイテム 2人用テント
HNアイテム 闘鶏卵×4
HNアイテム 美味しい携帯食料×5
HNアイテム 闘鶏肉(モモ)×4
SRアイテム **人形の右腕
HNアイテム 冒険者のブーツ
HNアイテム 魔石ランプ
HNアイテム 美味しい水(10リットル樽)
HNアイテム ハイポーション×1

「あった!」

 カナタは歓喜した。
最後の最後にハイポーションが出たのだ。
カナタは、もしハイポーションが出なかったら、また1万DGを課金するつもりだった。

「ニク、これを飲むんだ!」

 カナタはニクにハイポーションを飲ます。
するとニクの身体が水のように透明な青の強い光に包まれる。
その光が消えるとニクの脇の穴は塞がっていた。

「良かった」

 カナタは残ったアイテムを【ロッカー】に仕舞うとニクの様子を見守るのだった。

「あ、これも開けて見た方が良かったかな?」

 カナタの手元には、ヴァルチャードッグからドロップしたガチャオーブが7個あった。
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