父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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家出編

021 カナタ、商売を始める

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 街の中央通りを進んで行くと、一際大きな建物が二棟見えて来た。
片方が商業ギルドで、もう片方が冒険者ギルドだ。
どっちがどっちかは、出入りする人間の服装や体格などだいたいの雰囲気で丸わかりだった。

「商人と冒険者じゃ見た目で区別できるね」

「はい。マスター」

 カナタは冒険者ギルドの所謂スイングドアをくぐった。
建物の中からカナタに一斉に視線が集中するが、子供だとわかると興味を失ったのか視線が逸れた。
しかし、その後から絶世の美少女であるニクが入って来ると再び注目の的となった。

「あの美少女連れのガキは何者だ?」

「服装からして貴族だな」

「となるとあの美少女は護衛か」

「関わらない方がいいな」

 こうしてカナタは冒険者ギルドで絡まれるというテンプレを回避した。
まあ、中にはあの山賊冒険者のように犯罪者兼業の冒険者もいるので、違うフラグは立ったのかもしれない。

 カナタは漏れ聞こえる声に苦笑しながら、素材買取の窓口に向かった。
子供が自ら採取した薬草などを納品するという、このような光景は良く見かけるので、普通の冒険者はカナタたちから興味を失った。

「素材とアイテムを買い取って欲しいんだけど?」

 カナタは買取窓口のギルド職員に話しかけた。
ギルド職員はカナタをちらりと見ると、顎でカウンターの上に素材を出せと指示した。
どうやらカナタの見た目が7歳児程度なので冒険者ではないと判断され軽く見られたようだ。

「その上でいいの?」

「ああ」

 カナタが訊くとギルド職員は横柄な態度でそう答えた。
7歳児ぐらいなら、どうせ薬草の手間ばかりかかる安い取引だろうと高を括っていたのだ。
カナタは仕方なく、【ロッカー】を開くと素材をカウンターに出す。

ヴァルチャードッグの大牙
ヴァルチャードッグの毛皮(変異種 白)
オーク肉(バラ)
中級狗肉×2
高級狗肉
黒狼の肉(モモ)

 オーク肉(ロース)と闘鶏卵、闘鶏肉(モモ)の残りは、美味しかったのでカナタたちで食べるために残しておいたようだ。
オーク肉(バラ)は食べきれないという判断での放出だろう。

「は?」

 ギルド職員の目が点になる。
薬草でなかったことはまあ置いておいて、討伐報酬がガチャオーブ納品でないことも珍しかった。
しかも、HNからRまでレアリティの高い素材が中心だ。
ギルド職員はカナタをチラ見してガチャ運が良いからオーブを開けたのかと推測した。
しかも、ヴァルチャードッグは、Dランク魔物。しかもリーダー格の希少種ならCランク相当だ。
ドロップの数から5頭以上、ドロップ率を考慮すれば20頭はいたかもしれない。
その群ならCランクパーティーでも苦戦するだろう。
よくよくカナタを見れば貴族の子弟を思わせる良い服を着ている。
しかも後ろの美少女は持っている槍が業物で彼の護衛なのだろう。
そう判断し、ギルド職員によるカナタの重要度が1段階上がった。

「他にもアイテムがあるんだけど、買ってもらえる?」

 ギルド職員はまだ出るのかと驚きながらも平静を装って答える。

「ああ、ガチャ由来ならどんなアイテムでも買う…買います」

 何やらギルド職員の態度が変化したようだ。
その態度の変化に気付かないカナタは言葉通りに喜んでアイテムを取り出し始めた。
無駄な在庫を一掃するつもりだ。

魔石ライター
燃料石(小)
水魔石(小)
高級箪笥

タワシ×2

「以上で」

 ギルド職員の目の前は、カナタが取り出した素材やアイテムでいっぱいになってしまった。
その様子を見ていた冒険者もザワザワしている。
悪目立ちして変な連中が寄って来なければいいが……。

「それでは査定を開始します」


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 しばらく経って査定が終わったようだ。

「お待たせしました。
それでは査定結果をお知らせします」

 ギルド職員の態度が完全に変わっていた。
どうやらカナタを侮っていたことを反省したようだ。

「ヴァルチャードッグの大牙は、HNですが元がランクCの魔物のものなので銀貨50枚です。
ヴァルチャードッグの毛皮(変異種 白)は、希少性で金貨2枚。
オーク肉(バラ)は、グラム査定で銀貨17枚。
中級狗肉は、グラム査定で銀貨7枚+8枚。
高級狗肉は、グラム査定で銀貨30枚。
黒狼の肉(モモ)は、グラム査定で大銅貨3枚。
魔石ライターは、通常買取価格が固定なので銀貨3枚。
燃料石(小)は、在庫がだぶついているので安くて銀貨1枚と大銅貨5枚。
水魔石(小)は、通常買取価格の銀貨2枚。
高級箪笥は、トレント素材なので金貨1枚。
杖は、普通ちょい上なので銀貨10枚。
タワシは、大銅貨1枚×2です」

「つまり42万9千DGということですね?」

 ギルド職員はカナタが瞬時に暗算をしたことに驚いた。
が、貴族の子弟ならそんなものかと気にしないことにした。

「はい。
合計金貨3枚、銀貨128枚、大銅貨10枚で42万9千DGになります。
【お財布】にチャージでよろしいですか?」

 ギルド職員がギルドの【お財布】端末から線の延びた板状の器具を示す。
カナタは【お財布】を出すとその板に接触させる。
これでDGがチャージされる。
チャージされると後で貨幣として金貨だろうが銀貨だろうが取り出せる。
両替要らずというのは便利なものだ。

「ヴァルチャードッグのドロップが29万5千DGと美味しかったけど、ガチャの売り上げが13万4千DGって……」

 そう。カナタは、ガチャの課金で今まで4万9千DGしか使っていない。
初期に使った2万3千5百DGのガチャは、ほとんど売り物に入っていない。
つまり実質2万5千5百DG以下の課金で13万4千DGを手に入れたことになる。

「このお金を元手にまたガチャを引いて売れば……。
確実に儲かる!」

 これは良い商売が見つかったとカナタはほくそ笑むのだった。

「ちくしょう! ハズレ確定の100DGオーブじゃねーか!」

 悪い笑みを浮かべていたカナタの耳に冒険者の声が響いた。
どうやら手に入れた魔物ドロップのオーブを背嚢リュックから取り出したところのようだ。
オーブは拾った先からしまって、後から詳しくチェックする。
これが冒険者の常識になっていた。
オーブのまま運べばコンパクトに仕舞えて時間を有効に使え討伐数が増える。
なのでオーブは見ないで仕舞う。
それを冒険者ギルドに帰って検分したら、外観からハズレだと直ぐにわかったのだ。
オーブは討伐した魔物、オーブの色、オーブの種類の刻印でだいたい何が出るか予想が出来てしまう。
オーブの色は最低のN確定色、しかもアイテムオーブ、となればハズレで100DG程度の物しか出て来ない。
冒険者は開けるのも無駄だというようにオーブを投げ捨てようとした。

「ちょっと待った!」

 カナタの声が響く。

「それ300DGで売ってください!」

 冒険者がカナタに振り向く。
彼は真剣な表情のカナタを見て、300DGなら損はないと瞬時に判断した。

「売った!」

「ありがとうございます」

 カナタはハズレ確定オーブを手に入れた。

「おい、坊主。これも買ってくれるか?」

 その様子を見ていた冒険者たちが、我も我もとハズレ確定オーブを売りに来た。
結局カナタは、合計136個のオーブを買うことになった。

 カナタがオーブを買った理由。
それは携帯ガチャ機に装填すれば1UPの効果でHN以上が確定するからだ。
1回ガチャを引くのにノーマルガチャで500DG、アイテム限定ガチャなら1000DGかかる。
つまり300DGで買って来たハズレ確定のオーブで1000DG相当のガチャが1UPで引けるということだ。
これはカナタしか持っていないスキルによる恩恵だ。
冒険者にとっては、100DGの価値しかないオーブが3倍で売れる。
カナタにとっては、それが1000DG以上の価値のあるアイテムに化ける。
まさにWIN-WINの関係だろう。

「また売ってくださいね?」

 カナタはここにガチャオーブを取引をするガチャ屋を始めることになった。
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