父親が呪われているので家出してガチャ屋をすることにしました

北京犬(英)

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家出編

025 カナタ、買い物をする

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 冒険者ギルドの受付嬢さんから、冒険者のしおりをもらい、熟読するように言われた。
しおりの内容は、冒険者のルールや賞罰、ギルドの歴史、冒険者特典、ランクの説明や昇格の仕組みなど冒険者として知っておくべきものだった。
一般的なラノベでは、これを口頭で説明されたりするが、1人の初心者冒険者のために受付を長時間占有するわけにもいかず、現実はしおりを渡して終了だった。
また、字が読めない者に関しては、後でまとめて説明会が開かれていた。
尤も、字の読めない連中がまともに説明会に出るわけもなく、いつも説明会は閑古鳥が鳴いていた。
カナタの場合は、申込書に自筆で書き込んでいたし、字が読み書きできるものとして説明は端折られた。

「これで街の出入りで銀貨を払わなくて済む♪」

 カナタ本人はご機嫌だったが、実際は貴族の身分証明書で代用出来たのは秘密だ。
そこらへん、病気で外に一度も出たことの無かったことによる非常識さがカナタにはある。
まあ、ニクの分を払わなくてよくなったことは事実だった。
ニクは現愛砢人形ラブラドールだが、元々は肉ゴーレムという物扱いだったので、冒険者ギルドカードが唯一の身分証となる。

 カナタはステータスを半透明にして常時目の前に表示させていた。
このまま歩き回ってステータスがプラスに変化すれば、呪いの効果が下がったとわかるはずだからだ。
カナタは、そんなことが普通は出来ないとは全く気付いていない。
出来るかなとは思ったようだが、簡単に出来たのでそれが当たり前だと思っている。
魔法はイメージが重要なため、思い込みの力はバカに出来ないものなのだ。

「ここから南に別の街があるみたいだから、そこに向かうよ」

「はい。マスター」

 カナタは、父アラタから離れるために南へ向かうことにした。
南の隣街グラスヒルまでは徒歩で4日、その間に呪いの効果が薄まれば、そこでガチャをしてグリーンバレーとグラスヒルの近い方のどちらかに行き、拠点とするつもりだった。
いや一度グラスヒルまで行った方が良いかもしれないと思っていた。
そこは街の規模や生活のし易さにより決めるつもりだった。
例えば、グラスヒルの方が冒険者が少なくて、ハズレオーブをあまり入手できないという事態もあり得るからだ。

「とりあえず、グラスヒルまで行くのに必要な食料や、野営に不足している必要なものを購入して……。
そうだハズレガチャの購入もしておこう」

「はい。マスター」

「ニク、それ以外は話せないの?」

 カナタはニクとの会話が返事だけなのを気にしていた。
そんな気持ちも知らずにニクは淡々と答える。

「現システムでは、会話に割くリソースが不足しています。
会話をお望みなら、機能拡張を要求します」

 どうやらニクは、会話をセーブして何らかの機能が作動中らしい。
会話を並列で処理するためには機能を拡張する必要があった。

「それって、オーブでドロップするの?」

「はい。マスター」

「そういや『**人形の右腕』ってアイテム持ってたな」

 カナタが何気なくアイテムを取り出すと、ニクは目を見開き、それを引っ手繰るように手にした。
するとアイテムがニクの右腕に融合し取り込まれてしまった。
どうやら『**人形』とは『愛砢人形ラブラドール』のことだったらしい。

「おお!」

 カナタはアイテムが完全にニクの右腕と同化したことに驚き、ニクと会話するために『**人形』シリーズのアイテムを手に入れることを決意した。

「もしかすると、用途がわからずに市場に出回っているかもしれないな」

 カナタは、食糧調達などで雑貨屋に向かうつもりだったので、ついでに道具屋にも寄ってみようと思ったのだった。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 大通り沿いに並ぶ商店街に着いたカナタは、雑貨屋で野営するのに不足していた鍋や食器毛布など必要な物資を買っていく。
ここでは携帯食料や水なども手に入った。
一応予算が40万DGほどあったので、それなりに良い物を購入した。
そこらへん、カナタは貴族の坊ちゃんであり、今後生活が困窮するかもしれないという危機感が薄かった。
それら買った物をカナタは【ロッカー】に仕舞った。
【ロッカー】のスキルは【亜空間倉庫】の下位の使えないスキルと言われているため、大っぴらに使用しても問題なかった。
【亜空間倉庫】のスキル持ちなら誘拐などの被害にあいかねないが、【ロッカー】程度では獣人が背負う背嚢リュックにも劣ると思われていて、むしろそんなハズレスキルを神様からギフトに授かったのかと哀れまれるぐらいだった。

 カナタは雑貨屋を出ると道具屋を探した。
道具屋は雑貨屋の2軒隣にあった。
ちなみに隣は食堂で、ここは下町のアーケード街といった雰囲気だった。

 道具屋に入って直ぐに目に付いたのは各種ポーションの色とりどりの瓶だった。
そしてライターなどの生活に必要な売れ筋アイテム類が棚にならび、店の端には何に使うのかわからない道具が無造作に置かれていた。
店は、アイテムの販売と同時にアイテムの買取もしているようだ。
今も冒険者と思われる者が、買取カウンターの前にいた。

「見ろよ、このアイテムオーブ、珍しい刻印だろ?
これを手に入れるのには苦労したんだぜ」

 カナタからは良く見えないが、何やらレアな魔物からドロップした珍しいアイテムオーブらしい。
レアリティの色は銀。SRスーパーレアが確定している。
よっぽどのバッドステータス持ちでもレアは確実だ。
その自慢のオーブを道具屋の目の前で開いて売ろうということらしい。

「じゃあ、開くぜ?」

 冒険者は期待に胸を躍らせてオーブを開いた。
そして出て来たアイテムは……。

SRアイテム **人形の左腕+2

 冒険者はその場でくずおれた。
珍しいが用途不明なためハズレアイテムと言われている**人形シリーズだった。

「悪いなガスパオ。それは買い取れない。
どこかの好事家が集めて1体の人形を作ろうとしているとの噂はあるが、ここじゃ全く売れん。諦めろ」

 店の親父も苦笑いで買取を拒否していた。
しかし、カナタにとってはお宝だ。
カナタは話に割って入ることにした。

「あの~。それ売ってくれません?」

 冒険者――名はガスパオという――がカナタの方をバッと向く。

「おう、昨日ハズレオーブを買い漁った坊主じゃないか」

 どうやらガスパオは、昨日のオーブ買取でカナタを見知っていたようだ。

「こんなものも買ってくれるのか?」

 ガスパオは不思議そうにしながらも、売ることに乗り気なようだ。

「はい。1万DGぐらいで良いで「売った!」すか?」

 カナタはRアイテムの最低相場程度を提案してみた。
するとガスパオは食い気味に売ると言う。

「坊主、そりゃゴミだぞ? まあお前がいいなら俺が口出しすることじゃないか」

 店の親父が一瞬止めようとするが、カナタの顔を見てやめた。
その顔は欲しい物がついに手に入ったという満足げな笑顔だったからだ。
この何に使うかわからない【**人形】シリーズは肉ゴーレムと同じように価値のないものと認識されていた。
ここに物好きな好事家がいたかと店の親父は思ったのだった。

 カナタはガスパオに1万DG――銀貨10枚――払うと【**人形の左腕】を手に入れた。
店の親父の様子から、このアイテムは持ち込まれても買い取られず捨てられてしまうと理解したカナタは、店主に次ぎに持ち込みがあったら取っておいて欲しいと頼み込んだ。

「お前さんが良いなら俺は別にいいけどな。
どうせ持ち込むやつもゴミだと思っているからな」

 カナタは手付金5千DGを払って道具屋を後にした。
これで必ず取り置きしてくれるだろう。

 店から出ると路地裏に行き、ニクに【**人形の左腕】を渡した。
ニクは右腕の時と同じように左腕も同化した。
これでどうなるのかは知らないが、ニクが嬉しそうにしてる……いや怖い笑顔をしているのが印象的だった。

「おい、坊主。随分羽振りが良いようじゃないか?」

 路地の出口を塞ぐように3人組が立っていた。
ついにテンプレのフラグが発動した瞬間だった。
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